完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~

*19*


4ー3
湊は、俯くだけだった。面差しが翳って行く。

「4年もこんな事やってて、何になるんだ。俺の花瓶にまで手出しやがって。そんな事してばかりじゃ、お母さんが泣くぞ」

湊は声を荒げた。

「そんなの分かってる!分かってるんだって!でも手がかりを見つけ出せなくて、ただ、ただ…。俺が俺を赦せていないんだよ…。もう、教えてくれたっていいじゃないか…。知ってるんだろ?すべて、分かってるんだろ?」

「…甘えるな!」

伯父が怒鳴った。伯父の元で暮らしてから、はじめてのことだった。

「自分で探さなきゃ、意味がない。…大事な時には、誰だって一人なんだ。その前の段階から人の手を借りるようじゃ、駄目だろうが。4年前にも言っただろ、覚えてないのか?」

はっとした。
そう、大事な時には皆孤独なんだ。
敵を見つけ出して、手にかける時もそう。復讐を果たす時は、俺一人なんだ。他には誰もいない。当然、伯父だっていない。
握った拳のやりどころが分からなくなって、また壁を殴る。

「……なんで、なんでまだ見つけられないんだ、探せないんだ…敵をっ!」

壁に向かおうとしていた拳が、伯父の脇腹に向かっていった。少し、伯父は呻いた。
…伯父にまで、手が出てしまった。これも、4回目。

「……なんで自分で解決できないんだ、お前…………っ!」

伯父の拳が、湊の腹めがけて飛んで来る。
長い、殴り合いが続いた。果てるまで、続いた。お互い、身体中から血が滲み出ていた。紅いけど、それはどんどんどす黒くなっていった。
また右腕に、大きな痣が出来た。これも毎年の事。痛過ぎて動かせない。

湊は、左手で母のメモを握っていた。
メモに、滲んでいた血が染み付いて行った。

18 < 19 > 20