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cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~

*18*

4ー2
・・・・・・・・・・・・・・・

貸切営業の次の日。
それは、湊の母親の命日だった。

あの日から、4年。
敵を討てないまま、過ぎ去って行った。手がかりが見つけ出せないまま、過ぎ去っていった。あの死を無駄にしてはいけない。したくない。

母が最後に書いたメモを、彼は握りしめていた。何もできない自分が悔しい。意志だけが強くて何もできない人間なんて、価値がないじゃないか。
彼の拳は、強く握られていた。関節が白くなっている。その拳が、静かに、でも確実に部屋の壁にめり込んでいく。
湊は物に当たり始めた。生前の母が、そうしていたように。

「くそっ…なんでっ!」

湊は、伯父の物にまで当たってしまった。伯父の花瓶が虚しい音を立てて、割れる。
命日の日は毎年、我を忘れるように暴れていた。
何もできないから、物に当たり散らして。
こんな事をやるのも、今年で4回目だ。

「ただいま」

伯父が帰ってきた。部屋は言葉では表せきれないくらいに散乱していた。花や、本や、リモコン等々。

「また、当たり散らしたのか」

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