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*52*
エピローグ、記憶の片隅
あれから数ヶ月…。私は高校2年生になった。だけど、今でも鮮明に覚えている。綺麗な水色の白鳥のような翼を持つ少女が、私を見て泣いていた時を…。
あの不思議な少女と私は、どこかで会ったような気がする。直人に聞いたけど、
「それはきっと、楓様の見た幸せな夢ですよ。」
と言われた。
私は…何か大切な事を、忘れている気がする…。
部屋で長い事私は、あの不思議な少女の姿を頭に浮かべていた。
コンコン。ノックの音が聞こえた。
「楓様、入ってもよろしいでしょうか?」
「いいわよ、入っても。」
直人が部屋に入ってきた。手には小さな鍵を持っている。
「何なの?その鍵。」
「僕の部屋を整理していたら、これが出てきたんです。この鍵、楓様の物ではありませんか?」
「そう?私の所の鍵は全部…いや違うわ!」
私は直人から鍵を取り、机の1段目の引き出しの鍵穴に差し込んだ。今まで、この鍵だけが開けられていなかった。
カチャリと音を立て、鍵が開いた。私は引き出しを開ける。そこには、3つの日記帳が入っていた。どれも手書きで、1つは別の人が書いたのか字体が違う。その中には…私と直人が書いたような字もあった。
「これは…。」
そして、引き出しの底にはメモ紙が貼ってあって、こう書いてあった。
「貴方の『SOUL COLOR』が、いつまでも輝き続けますように…。
水神グレイス」
「楓様…これは…。」
直人が面食らった顔をしている。
「私、決めたわ。これを物語にして、出版するのよ!」
「…?」
「ほら直人も手伝って!まずは…そうね…。原稿用紙を持ってきて。」
「はい、分かりました。」
混乱しながらも直人は、私の部屋を出て行った。
どうして急にこんな事を考えたのか、私にはよく分からない。でも、なんだかそれをする事が、あの不思議な少女の願いに感じられたから…。
それが、今貴方が読んでいるこの小説だ。
もしも、この小説で出てきた者が貴方のいる現実にいたなら。もしも、あの詩が存在するなら…。
私に伝えてほしい。
「真実だった。」
と。