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Ⅸ、不思議な夢占い
図書室にて―吉永楓―
図書室に着くとフクロウは床に飛び降りて、お辞儀みたいな仕草をして言った。
「案内してくれてありがとう。私は夢の精霊でドリーズっていうの。貴方は?」
「私は吉永楓。精霊だったのね。
…今思ったけれど、精霊ってみんな動物の姿なの?」
「そうだよ。一部は小さな人間みたいな姿だけど、ほとんど動物かな。あ、そうだ。お礼に君の事を占ってあげるよ。」
「占い?」
「うん。こっちに来て。」
ドリーズは羽ばたきながら進んで行く。私はその後を追った。やがて、ドリーズは大きなテーブルの上に留まった。
「楓さん、そこの椅子に座って。」
私は言われるまま椅子に座った。
「私が得意な占いは夢占いなの。」
「夢占い?見た夢から運命を占う、あれの事?」
「似ているけど、これは予知とかとは違うよ。だからそこは理解しておいてね。」
「分かったわ。」
「じゃあ、楓さんが最近見た夢を少し覗かせてね。」
「え…?」
するとドリーズはふと消えて、私は何故かとても眠くなって、そのまま眠りに落ちていった…。
ドリーズは、楓の夢の中にいた。すると、宇宙空間の中を漂っている楓がいる。周りは皆星だらけで、月も太陽も惑星も見当たらない星だけの世界。楓はその星をとても大切そうに見ながら、穏やかな表情をしていた。たまに星を追いかけるが、その星はすぐに消えてしまう…。
ドリーズは小さく頷くと、夢の世界から抜けた。
あれ…?私、寝ていたみたい。目の前を見るといつの間にかドリーズがいた。
「私の夢を覗いたってどういう事なの?」
「楓さんの夢に飛んだの。それが私の能力、『夢飛(ユメトビ)』。そうだ、結果を言っても良いかな?」
「うん!」
「『この夢は、心の奥に潜む欲求や望み・目標を意味する。日常に満たされない思いや不満がある事を表している。貴方の求めるものは、例えばもっと美しくなりたい、もっと成果を上げたいといったような【もっともっと】という強い感情。何かを求める思いが強ければ強いほど、それだけ満たされない事への不満や苛立ちが積もって、心のバランスを著しく乱す恐れがある。でも、求めるばかりで努力不足という事もある。貴方が全力で取り組んでいるなら、求め過ぎかもしれない。【あれもこれも】とあらゆる事に満足を求めているかもしれない。そしてそれは、貴方にとって本当に必要な物?』」
「どうだろう…?」
「『貴方の欲求を満たす近道は、自分が何を一番に望むかと問いただす事。まずは、その一番の欲求だけを見つめて、他の思いがあるなら後回しにするなり一旦捨てるなり、気持ちの整理と選択をすると良い。自分に足りない物を見極めて、もう一度適切な手段や手順を踏む事。そうして導き出された事を、目標に向かってがむしゃらに実行する。貴方の求める思いが強いほど、それは逆に高い向上心や意欲がある徴!心を満たして、欲しいものを手に入れる絶好のチャンスともいえる。』」
「なんだか難しいわね…。でも、ドリーズは凄いわね!覗いただけでこんなにも分かるなんて。」
「そんな事ないよ。夢にはその人の感情や思いが、そのまま出てくるもの。」
「今までに覗いた夢で一番良かったのってある?」
「どれも良かったよ。だけど…。」
「…どうしたの?」
「あ、何でもないよ。そういえばもう楓さんは家に戻らないと大変じゃない?」
「あ!そうね。早く戻らないとお父さんとお母さんが心配しちゃうわ。
ドリーズ、夢占いありがとう!」
私は家に向かって駆け出した。
吉永家にて―吉永楓―
「夢占いですか?それは良いですね。僕も占ってもらいたいなぁ。」
家で直人が呟いた。直人は私の幼馴染み。直人は両親が共働きでなかなか家に帰らない。だからよく私の家に泊まりに来る。しかも、将来の夢が私の執事らしい…。
そして私は今日の夢占いの話をしていた。
「じゃあ明日にでも私の教室においでよ。頼めばやってくれるかもよ。」
「でも僕は精霊の声を多分聞けませんよ?またあの時みたいに通訳して下さい。」
「分かったわ。じゃあ明日も早いし、おやすみ。」
「おやすみなさい。楓様。」
直人が一礼して部屋を出るのを確認すると、私はベッドに入った。
もし私達が今からでもドリーズと会っていたなら、あんな事にならなかったかもしれない。でもあの時の私達に、それを知る事はできなかった。