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*9*
Ⅷ、白いフクロウ
教室にて―吉永楓―
「可愛い、この鳥!」
クラスメイトに囲まれながら、私と同じクラスの藤原雄太君が何かを手に乗せて来た。
乗っているのは真っ白なフクロウだった。赤紫色の綺麗な瞳をしている。このフクロウ、確か北の方に住んでいる種類のはず。どうしてこんな5月に…?
「何処で見つけたの?」
「学園の図書室辺りだよ。開いた本の上で寝ていたんだ。」
「え!?フクロウって本読めるんだ。」
「凄〜い。」
クラスの皆がフクロウを撫でたりしている。ふと、そのフクロウが言葉を発した。奥底から柔らかく響くような、不思議な声で…。
「人間多いんじゃない?此処…。来た時は誰もいなかったのに。」
喋るフクロウ…?でも声が聞こえているのは私だけで、皆は鳴き声にしか聞こえていないみたい。もしかしてあのフクロウ、精霊とかかな…?
フクロウは私達のクラスで飼われる事になって、餌とかは当番制になっている。ケージに入れると可哀相という意見から、ケージには入れていない。そうしたら逃げるんじゃないかって言われたけれど、意外とおとなしくて逃げ出すような事はしなかった。
私は気になって、放課後まで生徒がいなくなるのを待った。誰もいなくなると、フクロウは辺りをきょろきょろ見回していた。
「誰か図書室に連れて行ってくれないかな…。」
「私で良ければ、案内するわよ?」
私の声に、フクロウは驚いたみたい。
「え!?私の声が聞こえるの?」
「うん。私、『真視』の能力があるから…。」
「なるほど、驚いた。まさかそんな能力を持つ人間がいるとは思わなかった。案内してくれるならありがたいよ。」
「じゃあ、案内するわね。」
私はフクロウを手に乗せて図書室へ向かった。
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