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*8*
Ⅶ、予知夢
工藤家の自室にて―工藤直人―
美波さんと出会ってから、勉強や(自称)執事の務めが忙しくなり、会う回数がかなり減っていた。そんなある5月の日の事…。
僕は深い闇にいた。見渡す限りの闇…。それに、だんだん沈んでいくような感覚がした。出ようとして激しくもがくと、一層沈みが速くなった。このまま安静にしないと駄目そうだ。
諦めて小さく溜息をついたその時、視界の端に何か見えた。あそこにいるのは…美波さん!?
「美波さん、しっかりしてください!」
美波さんは薄く目を開け、何かを呟いた。でも遠くて聞こえない。僕はもう一度声をかけた。今度は途切れ途切れだが、聞く事が出来た。
「ごめんね…私は、もう…。『掛橋』を繋げるって…言ったのに…。」
そのまま美波さんは目を閉じ、動かなくなった…。
「!?」
僕は一気に目が覚めた。今でも鮮明にあの夢を思い出す。
美波さんに最近会っていないけれど、何か嫌な予感がする。でも、美波さんはああ見えても水神の子。何が起きても大丈夫なはずだ。この時はそう思い、あまり気にはしなかった。
しかし、まさかその夢が本当になるなんて、この時は知るはずもなかった。
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