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*30*
ⅡⅨ、病魔
霧隠にて―神前美波―
だんだん夏になって外も暑くなってきた8月。私は霧隠で、冷ましたコーヒーを飲みながら午後を過ごしていた。
どうでも良い話だけど、このコーヒーの豆は最初から此処にあった。人間界の物だし最初はあまり美味しくはないだろうと思っていたけれど、コーヒーにして飲んでみると中々美味だった。でも…今この場所は旧校舎。しかも、私が来た時は誰もいなかった。誰かの落とし物だとも思った。でもそれなら、何故取りに来ない?忘れた?可能性はある。一体、誰が…?
コンコンコン。
ふとノックの音が聞こえて、私は現実に引き戻された。時計を見るともう17時。時が経つのは本当に早い。外がまだ明るいせいかもしれないけど。
ドアを開けると、直人君・楓ちゃん・祐樹君が入ってきた。
「何か飲む?」
私は問い掛けた。すぐに返事が返ってくる。
「じゃあコーヒーをお願いします。」
「私は紅茶をお願い。」
「僕は…赤ワイン…。」
「了解っ!」
私は棚から瓶を取り出して(これも何故か来た時からあった。) 、グラスに注いだ。
皆でいつものようにティータイム。たわいもない話で盛り上がる。と、その時…。
「悪業を為す者に、生きる資格などない。」
どこからか、そんな悪意に満ちた声が聞こえた。それと同時に、私の意識は飛んだ…。
霧隠にて―工藤直人―
あれは…病魔だと思う。父さんもよく言っていた。
病魔というのは、誰かの心に侵食して心の病を起こす厄介な奴だ。ネガティブな考えが多くなって、負の感情があらわになる。防ぐには…なんだっただろう?肝心な方法を僕は知らない…。
美波は病魔の影響を受けたせいか、憂鬱そうな表情をしている。どうにかできないだろうか…?
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