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ⅡⅧ、璃蘭と美波
霧隠にて―神前美波―
その日の夜、私は霧隠に璃蘭を呼んだ。どうしても聞きたい事があるから…。
「それで、聞きたい事は?」
「璃蘭さんは、霊界の人と接しているって噂で聞いて…本当かなって…。」
「本当だよ。もしかして、誰か話したい人がいるの?」
「うん…。スピィクっていうんだけど…。」
「スピィク…あぁ、雷神の子ね?」
「うん。」
「私、よく話をしているよ。それでよくグレイスの話をされるから、それでグレイスの事を知ったの。それで、何を伝えたい?」
「私が雷がスピィクの上にあるのをもっと早く気づいていれば、死なずに済んだのに…。なのに…。」
駄目だ。いざとなると言えなくなる。
「…スピィクは今も、貴方の傍にいる。そして、こう言っている。『あれはいくらグレイスが早く気付いても、いや誰が気付いても防げない雷だよ。だから君のせいじゃない。それよりしっかり生きて【掛橋】を、世界の絆を取り戻してくれ。』ってね。」
「スピィク…。」
「スピィクは、いつもグレイスの事を気にかけている。だからよくこの現世にも来て見守っているの。」
「そうだったんだ…。私…。」
その先を言う前に、涙が止まらなくて何も言えなくなった。
「私は普段から璃蘭って名乗っていて旅をしている。だからもしまたスピィクと話したくなったなら…私を心の中で念じてみて。すぐに来て伝えるから。」
「ありがとう…。そういえば、私とスピィクは神族。でも璃蘭さんは?」
「私?何に見える?」
「う〜ん…。赤い瞳だから魔族っぽいけど…。」
「おしい!正解は、地族だよ。」
「え!?あ、そっか!霊界と関わるのは確かに地族しかいない。」
「昔から、神族と地族の仲が悪いって言われているのは知ってるでしょ?」
「うん。」
「だけど今こうして話したりできるんだから、それも噂じゃないかなって思ってる。」
「確かに…私なんて魔族の者とも普通に話してる。だけど精族は見た事も話した事もあまりないなぁ…。」
「そっか…。
そういえば私がグレイスと会った時に、スガルトっていたんだけど覚えてる?」
「うん。」
勿論。むしろ覚えていなかったら神の子の名が廃る。
「人間のふりしているけど、本当は天使なんだよ。よく私と言い合いになるんだけどね…。」
「大天使でしょ?それは知っているよ。でも言い合いになるって、どうして?」
「スガルトは生死の予言ができる。それでよく霊界に来るべき人が狂う。だからだよ。」
「へぇ…でもなんで大天使なのにスガルトはこの学園に?」
「違うよ。貴方みたいに、勝手に入ってる。でもこっちでは星川鈴って名乗ってるよ。人間界の観光じゃないかな。」
「そうなんだ。みんな仮名があるんだね。私はこっちでは神前美波って名乗っているよ。」
「美波ね?いつかまた会ったらよろしくね。」
「こちらこそ、よろしく!」
「後さ…私の事、璃蘭って呼び捨てにして大丈夫だからね?」
「うん、分かったよ。璃蘭。」
そして、帰り際に璃蘭はこう言った。
「そういえば、繋がったみたいだね。天界と地界の『掛橋』。」
という事は、また私、何か出来たのかな…?
そう思い顔を上げると、もうそこに璃蘭はいなかった…。