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*11*
Ⅹ、目覚めない!?
悪夢の中にて―神前美波―
此処は、何処?
私は、闇の中にいた。いくら見渡しても光が見えない。こんな事は、前にもあった。あれは…まだ小さい時だ。
魔界に迷い込んだ時に、こんな闇の世界があった。自分でもがく事は出来なかった。何故なら、もがけばもがくほど闇に沈む事を知っていたたから。沈んだその後、どうなるか…それは、誰にも分からない。ある者はそのまま黄泉という霊界の底に堕ちると言うし、ある者は悪魔の餌食になるとも言う。だから私は早く出たかった。あの時は通り掛かった悪魔(名前は何だっただろう?…確か、魔遊っていう悪魔だと思うう。) が助けてくれたけど、今は…。
私は、目を閉じて助けを待った。どんなに時間が過ぎてしまっても。
ふと、一筋の光が見えた気がした。私は目を開けてその光を捜す。もう光は発して無かったけど、そこに誰かがいるのに気付いた。それはどんどん闇に沈んでいく…。
まさか、あれは…!?直人君、楓ちゃん…お願い、気付いて…!!
工藤家の自室にて―工藤直人―
僕は、何故か妙に早く目が覚めた。時間はまだ朝の5時。
とても不思議な夢を見た。美波さんが闇の中で助けを呼んでいる夢だった。最近会っていないせいかもしれないけれど、妙に気になる。時間はまだ早いが、美波さんの所に行ってみよう。
僕は制服に着替え、一応楓様にメールを送り、学園へ向かった。
霧隠にて―工藤直人―
数分後、旧校舎の教室を開けて中を覗く。その教室は、普段美波さんが霧を立ち込めさせている。だから僕らは、霧隠と呼んでいる。
美波さんはいつものようにいた。ほっと胸を撫で下ろす。美波さんは机に突っ伏して眠っていた。もう5月だが、明け方は冷え込みやすい。こんな寒い所で普通に寝ていて、美波さんは風邪をひかないのだろうか…?そんな事を考えていたその時、突然美波さんが僕の腕を掴んだ。寝た姿勢のまま…。ふと、美波さんが途切れ途切れだがうめくように言った。
「助け…や…から…抜け…ない…。はや…夢…精…を…呼ん…。」
そこまで言うと、美波さんは力尽きたように、掴んでいた僕の腕から手を離した。
今のは、ただの寝言なのだろうか…。それとも…?
僕は暫くの間、呆然と立ち尽くしていた。不安になって何度も起こしたけれど、美波さんは全く目覚めなかった…。
通学路にて―吉永楓―
私は、旧校舎に向かって走っていた。起きたのは6時くらいかな。直人のメールを見た瞬間、私もそれに気付いていた。美波に何かあった事…。私も見たんだもの、同じ夢を。
でも…1人で行っちゃうなんて、明らかに無謀過ぎる。
確かに、美波は苦しそうな表情だった。闇の中でもがく事をしないのが謎だけれど…。
もし魔族とかいうのに関係していたら、直人はまた危機にさらされるかもしれない。あの時、私は守る事が出来なかった。嫌な予感がどんどん膨らんでいく。
私は全力で走った。だって、直人がいなかったら、私は…。