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SOUL COLOR(消えない罪)
作者: 璃蘭  (総ページ数: 53ページ)
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ⅩⅠ、夢喰

霧隠にて―吉永楓―

「直人っ!!」
 私は叫びながら、霧隠のドアを開けた。
「あ…楓様…。」
 直人は机から顔を上げた。突っ伏して寝ていたみたい。
「どうしてそんな所で寝ているのよ。」
 心配の言葉の代わりに、文句が飛び出してしまう。直人の前だと、どうしても素直になれない時がある。なんでだろう…?
「いつの間にか寝てしまっていたようです。すみません…迷惑をかけて…。」
「別に大丈夫だけど…あれ!?美波!?」
 私は美波の元に駆け寄る。ただ寝ているだけに見える。突然、美波が私の腕を掴んだ。え?何!?
 美波は途切れ途切れにこう言った。
「助け…や…から…抜け…ない…。早…夢…精の…を…呼ん…。…願い…。」
 言い終わると、力が抜けたように私の腕から手を離した。
「僕もさっきそのような事を言われました。夢の精霊って、もしかして昨日楓様が言ったドリーズの事ですか?」
「多分違うと思う。夢の精霊の何か、だと思うわ。」
「夢の精霊の何か…?」
「例えば、ドリーズは夢に飛ばすから、その反対もあるんじゃない?連れ戻すとか。」
「俺の妹…ドリーズを知っている人間なのか?」
 何処からか声が聞こえた。私達は辺りを見回す。ふと見ると、青紫色の瞳をした黒いバクがいた。
「貴方は…?」
「俺の名はドリーブ。『夢喰(ユメクイ)』の力を持っている。ドリーズは俺の妹だ。種族は違うが…。」(※勿論聞く事が出来ない直人に、私は通訳をしている。)
「『夢喰』…?」
「悪い夢を喰らう能力だ。でも、良い夢もたまに間違って喰らってしまう。その時はドリーズの力が必要になる。だから俺は種族上では中級魔族にされている。」
「なるほど…それで、ドリーズの事を何か知っているの?」
「それが、最近ドリーズの姿が見当たらなくてずっと捜しているんだ。此処を密かに監視しているから、此処にいるのは間違いない。」
「それなら、一体何処に…。」
「あ!!」
 今まで何か考えていた直人がいきなり大声を上げた。
「直人、どうしたの?」
「ドリーズには夢に飛ぶ力があるという事は、悪夢にも飛べるのではないですか?」
「あ、そうか!悪夢に飛んだら…でもそうだとしたら普通に出られるんじゃないの?」
「いや、無理だ。ドリーズは精霊だから、魔の力である悪夢には弱い。そういう時は俺がその夢を喰らわなければ、ドリーズは出られない。」
「じゃあまさか、美波に…?」
 私は美波の方に視線を向ける。直人も同じ事をした。美波は相変わらず寝ている。
 ドリーブは美波に近付くと、じっと顔を見つめていた。やがて、溜息混じりに言った。
「彼女は夢の中で こう言っている。『助けて、闇から抜け出せない。早く夢の精霊の反対の存在を呼んで。』と…。何て事だ。まさかドリーズが悪夢に遭遇してしまうとは…。」
「戻る方法はあるの?」
「ある…しかし、時間がない。」

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