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*16*
二合、幣と刀を打ち合い、三合目に袈裟切りを放つ。
霊夢は、それを素直に避け、封魔針を投げる。
二人の演舞のような戦闘が続いていた。
魔理沙「あれは強いのか」
咲夜 「知らないわ。戦っていたところ見たことないし」
魔理沙 「霊夢は強いぜ。大丈夫なのか?」
咲夜 「知らないわ。本人は勝つつもりでやるとは言ってたけど」
魔理沙 「それにしては、弱そうだぜ。プレッシャーを感じない」
俗に強妖と呼ばれるもの(紅魔館の姉妹のような)は、対峙するだけで肌が粟立つような、一種の恐慌に囚われるような強烈な存在感を持っている。
だが、暁には一端の妖精程度の力しか感じない。
暁 「先ほど魔理沙とやらと戦っていたようだが、言い訳になる程度には消費してるか?」
霊夢 「いいえ。問題ないわ。このぐらいのほうが調子出るもの」
暁 「それは幸い。互いに準備運動はこの程度でいいだろう」
霊夢 「ええ、そうね」
――「鬼切丸」
暁は一度に全ての呪を解放した。
魔理沙 「おい、あれは何なんだよ」
咲夜 「本人は刀の付喪神って言ってたけど」
妖精?それどころの話じゃない。
肌が粟立つような存在感。
間違いなく、全力で向かうべき強さだ。
咲夜 「お嬢様と知り合いで、確か銘が鬼切丸っていう」
魔理沙 「鬼切丸!これはまた御大層な」
ともに平安時代、源頼光の四天王が振るった退魔の刀で、童子切安綱の兄弟分にあたる。
鬼切丸は渡辺綱が一条戻橋で鬼(茨木童子)の腕を斬ったことから名が付いた。当初は。試し斬りに罪人の死体を用いたところ、首を斬った際に髭まですっぱりと削ぎ落したことから髭切と呼ばれていた。
蜘蛛切丸は、頼光を悪夢を見せていた土蜘蛛を仕留めたことからその名を付けられる。
また鬼切丸同様、試し斬りに罪人の死体を用いて両膝を一気に斬り落とすほどの切れ味を見せたことから膝丸の名を付けられていた。
源氏を勝利に導く刀であったが、名を何度も変えられたことで力を失った。
後に名を戻すことで力を取り戻したが、後に行方がわからなくなっていたのだが。
咲夜「そうだったんだ……」
自ら拾った物が業物だと言われたときには驚いたが、そこまでいくと逆に通り越して呆れてしまった。
霊夢 「夢符『封魔陣』」
弾速の遅い赤いお札の群れを順々に避けていく。
避けやすいほうへ、避けやすいほうへ。
気付いたときには、
暁 「ッ!!」
檻の中だ。
霊夢 「霊符『夢想妙珠』」
五つの色とりどりの球が、暁へ殺到する。
この身では避けようの無いそれを、暁はこの身でなくなることで避けた。
球と球の間五センチほどの隙間を、刀に宿ることで避けたのだ。
暁 「憑符『鬼切斬』」
刀から飛び出す勢いそのまま、霊夢には遥か届かない位置で縦に刀を振る。
霊夢は、直感的に避けることを選んだ。
正解だ。
突如巨大化した刃が石畳を砕く。
返す刀で再度ねらうが、風に舞う木の葉のように宙に舞い、するりと避けられてしまう。
畳み掛けるようにもう一枚発動させる。
「奥義『鬼皮削』」
長さはその巨大さを保ちつつ、赤く色付いた刀を居合いの構えで持つ。
一度で引き抜き、八つの斬撃が赤い光条を残しながら、霊夢に襲い掛かる。
八つの斬撃のどれもが必殺の威力。
霊夢「夢符『二重結界』」
――ピシッ
一枚目に罅が入り、
――カシャン
あっさりとした音と共に壊れた。
――ピシッ
二枚目にも同様の罅が入り
だが、そこまでだ。
そこからの動き出しは同時。
暁は無い足場を駆け上がり、霊夢は止まった斬撃の間を抜ける。
射程に入り、互いに右手を突き出す形。
「宝具『陰陽鬼神玉』!!」
「喪符『鬼神哀愁歌』!!」
二人の中央にて、全てを照らすような白い光を放つ大玉と、全てを覆い隠すような黒い光を放つ大玉がぶつかり合う。
互いに姿は見えない。
いや、間違いか。
暁は既に、霊夢の背後に。
暁は真一文字に振るった。
――来ると思ったわ
それは持ち前の勘の良さ。
もはや、予知とも呼ぶべきそれによって、霊夢は既に迎撃準備ができていた。
反転し、スペルカードを取り出している霊夢。
トドメとして振られた刀は、最早止められる勢いではなく、霊夢の動きを目で追うことしかできない。
――神技『八方鬼縛陣』
叩きつけるように、地面に貼られた一枚のお札。
そこから放たれた光の束によって、暁の視界は白く染まった……。