完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*18*
咲夜「いいの、あれで?」
暁 「何がだ?」
咲夜 「お賽銭。あの神社御利益無さそうじゃない」
暁 「無いだろうな。まぁ霊夢が、殺そうにも殺せない存在であることはわかった。その授業料だと思えば、高い買い物ではないだろう」
くくっ、と笑いを堪え切れずに漏らす暁。
咲夜 「何が可笑しいのよ」
暁 「いや、俺が払った一万円と、俺が今日スペルで打ち壊したものの修理代。どちらのほうが高いのかと思ってな」
思い出せば、階段からお賽銭箱まで敷いてある石畳を縦に叩き切ったのだ。
修理代が一万円を下回ることはおそらく無いだろう。
これこそ夕霧が、邪悪な笑みを浮かべながら考えていたこと。
勝てば良し、負けてもそれはそれで面白い展開であると。
咲夜「まるで、永遠亭の兎みたいね」
呆れたように肩をすくめる。
これではまるで永遠亭のイタズラ兎だ。
咲夜 「そういえば、霊夢の後ろにまわったあれ、どうやったの?」
イタズラ兎が永遠亭に一羽いる想像をして寒気がした咲夜は、それを振り払うために別の質問をした。
咲夜 「霊夢と同じ無時間移動?」
一瞬消えたと思ったら、いつの間にか霊夢の後ろに現れたのだ。
現象が霊夢のそれと酷似しているのは言うまでもないだろう。
暁 「いや、違うぞ」
だが、暁はそれを否定する。
暁 「縮地法って知っているか?」
咲夜 「仙人が使うやつ?」
咲夜が言っているのは、瞬間移動(テレポート)の事である。
暁 「そっちじゃなくてな。日本武術の方法論の一つでな、五歩の間合いを三歩で詰める、そういう歩法の名だ」
つまり、
暁 「霊夢の背後までの約六歩の距離を一歩で済ませたんだ」
咲夜「え?」
確かに今聞いた話では、五歩を三歩に縮める技術だったはずだ。
距離としては五分の三。
だが、暁が今言ったのは、六歩を一歩に縮めた。
距離としては六分の一。
咲夜 「おかしくない?」
暁 「おかしくないぞ。突き詰めれば、その程度はできる技術ということだ。やっていたのは剣術の合間、趣味程度だがな。その程度でも長い年月続ければ、形になるもんだ。塵も積もれば、というやつだな」
軽い調子で話す暁。
変人を見るような目をしている咲夜。
咲夜 「よく、長い年月同じ趣味が続くわ」
暁 「深遠はまだまだ先だからな」
どうやらまだ満足する域ではないらしい。
長く生きてる人はよくわからない、と永琳と輝夜の顔が思い浮かんだ咲夜あった。