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*24*
しばらく歩くと妹紅の住んでいる家が見える辺り、小さく開けた場所がある。
三人は各々椅子のように配置された石の上に陣取り、各自用意したものを出した。
妹紅「せっかく酒を飲むんだ、余興でも見せようか」
人差し指を伸ばすとポッと火が灯る。
それによって熱燗を温めると、ちょうどいい温度に仕上げた。
おお〜、と暁が拍手する。
暁 「では、いただこう。乾杯」
暁が音頭を取り、盃を合わせた。
妹紅 「もう、あまり殺したいとも思わないね。今も殺し合うのは惰性もあるんだと思う」
妹紅 「千年の時を生きて、常人並の性格保っているのは、憎しみのお陰もあるだろうさ。その部分だけは輝夜への借りだな」
そう言って酒を煽り、もう一言。
暁 「それとも、あれか? 憎さ余ってなんとやらって」
妹紅 「なっ! ち、違うわ!」
暁 「焦るな、冗談だ」
くっと笑いを堪えながら言う。
酒の所為でほんのり頬が色付いていたが、それでも誤魔化せないほどには赤くなってしまった。
慧音 「それを言うなら、可愛さ余ってだろう、暁」
寺子屋の先生である慧音が、嗜める。
暁 「おっと、これは失言だ」
堪え切れず笑い声をあげた。
慧音「史実にある、茨木童子の腕を切ったのは本当か?」
暁「本当と言ったところだ。確かに切った覚えはある。元主達は気付いてなかったが。」
慧音「成る程。因みにたまに博麗神社に出没するぞ」
暁「おや。会ってみたい気もするが、気まずい感じもするな。しかし、輝夜といい妹紅といい茨木といい、俺は幻想卿に強い縁が有るのかもしれないな」
そう思わずにはいられない程に、昔見知ったものと会ってしまった。
暁 「普段二人は何してるんだ?」
慧音 「人里の寺子屋で、子供たちに勉強を教えている」
妹紅 「筍掘ったり、散歩したりだな」
対照的な二人。
妹紅「あとは、たまに輝夜と殺し合いか」
是非とも、日常には組み込まないでほしかった項目である。
妹紅 「暁は何をしてるんだ?」
暁 「今は居候の身故、家事手伝いだ。午前中に全て終わらせて午後は自由だ」
洗濯以外は何でもやるぞ、と洗濯をさせてもらえないことに遺憾の意を表しながら続けた。
暁 「む、そろそろ時間か。今日はこれにて失礼しよう」
妹紅 「泊まっていかないのか?」
暁 「おいおい、これでも人間体的には男に分類されるほうだぞ?」
慧音 「たまにはそういう夜も良いじゃないか」
暁 「やめておこう。割と一途なんだ俺は」
冗談混じりに言葉を交わす二人。
その様子は、まるで生来の友の様で、周りからは少し羨ましく思えるものだった。
暁 「ではな。今度はそちらが紅魔館の方に来るといい。主たちにはばれないようぐらいの配慮はしよう。いや、ばれた方が面白いか?」
妹紅 「ばれない方で頼むよ。そちらもいい酒が入ったら来るといい。いつでも待っていよう」
暁 「応」
妹紅 「応」
二人に背を向け、軽く手を挙げ挨拶をすると、懐手して、来た道を戻っていった。
朝食の準備の待つ紅魔館へ。