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東方刃暁録-sword morn record -
作者: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ  (総ページ数: 38ページ)
関連タグ: 東方 
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10~ 20~ 30~

*32*

膨れ上がる妖力が辺りを包む。

空気が刺すように痛い、そういうレベルのプレッシャーだ。

暁「俺を斬ると言ったんだ、それなりに覚悟はしろ」


――人符「現世斬」


妖夢は強さを感じ、言葉を聞かず、攻撃を仕掛けた。

高速移動から仕掛ける胴への一撃。

だが、

暁 「初手で胴を選択したことはいいだろう。だが、その程度では足りん」

鐔に刃先を差し込み、楼観剣を止める。

思い切り振られた右足が左肩を捕え、勢いのベクトルを曲げられた妖夢は制御を失い、自ら飛んでいった。

妖夢 「くっ!」

途中、漸く制御を取り戻した妖夢は体を捻り、木に着地する。

暁 「期待外れだな」

その言葉を振り払うように、続けてスペルカードを使う。


――桜花剣「閃々散華」


短い距離を連続で高速移動することによって姿を消し、数ある急所を狙っていく。

暁 「速さは中々だ。だが、」

軽く差し出すように刀を出す暁。

妖夢は危うくそれに突っ込みそうになり、ギリギリでなんとか体を止めた。

暁 「機動力がまだまだだ。先読みできれば、然したる問題はない」

しかし、それは今一度だけの回避。

次には繋がらない。

「喪符『鬼神哀愁歌』」

黒い大玉が妖夢に向かう。

既に、回避手段を失った妖夢は被弾する以外に無かった。

(強い!)

見えないはずの高速剣もなぜか見切られてしまう。

だけど、

(負けられない!)

咲夜の刀を取り戻す。

そのために戦意を取り戻し、足掻きとして暁に向け半霊を飛ばした。


「ッ!!」


それにお互いが驚いた。

暁は予想だにしていなかった攻撃を受けたことに、妖夢は苦し紛れの攻撃に暁が驚愕を示したことに、だ。

軽く暁が飛び、宙返りをするような形で着地した。

暁 「今のは面白い!ただの剣士では無いということか!」

至極楽しそうに笑う。

縮地法により、五歩の間合いを一瞬で無くす。

妖夢の高速移動の起点を潰し、加速する時間を与えない。

だが、それ以上に起点が多く拮抗する。

それを嫌がるように、互いに一歩ずつ間合いを広げ、スペルカードが発動したのは、ほぼ同時。

「人鬼『未来永劫斬』」

「奥義『鬼皮削』」

鍔迫り合いになり、両方が弾かれて終わる。

しかし、先に体勢を立て直したのは妖夢。

その隙に、トドメとなるスペルカードが発動した。



――「待宵反射衛星斬」


だんだんと時が遅れ、妖夢だけは高速で動く。

逃げる範囲を限定するように、振るった太刀筋が現れ、夕霧を追い込む。

暁はキレていた。

自分は刀であるという自負がある。

自らは切り裂くものであると。

ありとあらゆる侮蔑の言葉は、夕霧を揺さ振らない。

だが、妖夢が言った『斬る』。

もはやそれは存在に関わることである。

だから、妖夢のことは全力で潰す。


暁を弾が擦っていく。

擦って、擦って、ただそれだけだ。

グレイズするだけで、一向に当たる様子はない。



このスペルを使ったのが、霊夢であったら決まっていただろう。

あるいは、魔理沙でも、咲夜でも。

妖夢でなかったならば、被弾していたはずだ。

わかるのだ。

五百年以上剣士を見てきた存在として。

純粋な剣士であればあるほどに、暁はわかってしまう。

こう避ければこうくる、こう隙を見せれば突いてくる。

剣士の思考が見えるのだ。

そうして、スペルを攻略した暁のトドメの一撃。



――憑符「鬼神千手観音」



「は?」

思わず間抜けた声を出してしまう妖夢。

今までは剣士同士の戦いだったはずだ。

半霊は使えど概ねそうだった。

それがどうだ、突然太陽が遮られるほどの影ができている。

完全に思考が止まってしまった妖夢は抵抗できず、

「みょん!」

背中に無数の鋼の手が生え、手には武器が握られており禍々しい妖力がにじみ出ている。

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