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貴女と言う名の花を
作者: 彼方  (総ページ数: 34ページ)
関連タグ: 恋愛 
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10~ 20~ 30~

*4*

こんな空虚な「寂しい」という意味が込められた「シラー」という花は、紫色をしている花だった。
私の髪の色も紫色だ。__まるで私みたい。ふふっと意味もなく笑いが込み上げる。
ふと、あることを思い付いた。

アイビーを呼ぶべく、ベッドの傍にある呼び鈴を鳴らす。案の定、アイビーは音を立てずに素早く現れ、跪いた。
「何の御用でしょうか、お嬢様」
「アイビー、シラーの花を大至急用意してきて頂戴」
するとアイビーは首を傾げた。
「シラー、でございますか?」
「ええ。……知らない?」
アイビーは首を横に振り、しかし怪訝な顔で尋ねた。
「いいえ、シラーの花なら存じ上げております。……しかし、何にお使いになられるのですか?」
「飾るのよ。綺麗な花でしょう?」
得心したようにアイビーは頷いた。
「左様でございますか。では、旦那様に依頼して、取り寄せていただきましょう。では、失礼いたします」
笑みを浮かべ、アイビーは一礼して去って行った。

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