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Ghost-Soldier【完結】
作者: レンクル01  (総ページ数: 58ページ)
関連タグ: ファンタジー シリアス 血描写 
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*13*

  ツバキ回想 6年前

あれは、私がまだ10歳の頃でした。
私、イタルータ、セイシュンの3人は、どこの国にも属さない小さな集落で暮らしていたんです。
同じ年頃の友達は他にいなかったので、3人共いつも一緒にいました。
セイシュンは、生まれつき歩けませんでした。いつもベッドの上で、移動するときはイタルータが車イスを押していました。
食人植物の被害はありましたが、3人で協力して耐えてきました。

でも、それが崩れた日があったんです。

私達はいつものように集まって遊ぶつもりでしたが、セイシュンが体調を崩したので、イタルータと私の二人で遊んでいました。
そこに、白衣と顔隠しのためのガスマスクを付けた数人の男達がやって来て、イタルータと私を連れていこうとしました。
私達は必死に抵抗しましたが、所詮は10、11の子どもです。敵うはずもなく引きずられていきました。

しかししばらく進んだ先で、後ろから「待て!」声がとびました。
セイシュンが、異変に気付いたのか追いかけてきていました。
「二人を離せ」とセイシュンは男達に向かっていきました。
何故でしょうか、男達はセイシュンを追い返そうとはせず、1つの話を持ちかけたのです。

セイシュンが男達についていけば、私とイタルータ、どちらかを見逃してやろう、と。

セイシュンは、その条件をすぐに呑みました。悩んだ顔も一切せずに、「分かった。僕が行く」と。
「そんなのダメだよ」と叫びましたが、セイシュンの心は全く変わる気配がありませんでした。
男達は満足そうに頷き、どちらと交換するか決めるよう促しました。

イタルータは、「俺じゃなくて、ツバキを離してくれ」と言いました。私も「私じゃなくて、イタルータと入れ替わって」と言いました。
ですがセイシュンは、迷わず私を選んだのです。

そのとき私は知らなかったのです。イタルータとセイシュンは、「何があってもツバキを守ろう」と、ある日約束をしていたのです。
それは胆試しにいって、私が大泣きした日かもしれません。
地震が起きて、二人のもとへ抱きついた時かもしれません。
私が食人植物に襲われて、大怪我をした日かもしれません。
微笑んだイタルータはそのまま連れていかれてしまいました。

男達は私を突き放して、セイシュンの手をとりました。
必死に心の中で叫びました。ごめんなさい、本当にごめんなさいと。

セイシュンは手をひかれていきました。
そのとき、私はセイシュンに駆け寄ってマフラーを手渡し、叫んでしまったのです。

「いつかこの人たち全員やっつけて……またみんなで遊ぼうね!絶対に!」と。



イタルータとセイシュンはそのまま連れていかれてしまいました。
私は一晩中泣きました。男達への怒りより、二人がいなくなった悲しみより、何もできなかった自分が許せませんでした。

しかし、その半年後。すっかり窶れてはいましたが、イタルータは自分の足で帰ってきました。
イタルータは、「何故か建物が爆発した。中の人間は俺以外全員死んでいた」と言いました。

私はセイシュンの安否を尋ねましたが、イタルータとセイシュンは別々の施設に送られたと答えました。
イタルータにも、セイシュンの安否はわからなかったのです。

それから二人で集落を出て、ジルマーズの……ルナティックソルジャーに入団しました。
セイシュンを、探しながら。

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