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*14*
ライデンside
「……そんなことあったのか。」
彼等の辛い過去を知って、俺はうつむいた。
ツバキは話を進める。
「……セイシュンは、心が壊れてしまったのかもしれない。私の、『この人たちやっつけて』だけが心に残ってるのかもしれない。だから……」
そこまで言って言葉を切った。
「……正直俺は、セイシュンはもう死んでるのかと思ったんだ。でも……ツバキに話を聞いて驚いたよ。」
イタルータは目を閉じる。彼なりにも思うところがあるのだろう。
「みんな大変だったんだねー。そのセイシュンって人、ちゃんと見つかるといいんだけど……」
ここまで無言だったネオンが口を開いた。
俺はそれに答える。
「……見つかるさ。組織LBSを追っていれば、きっとまた会える。あいつだってその組織を追ってるんだろ?」
「私、今度また彼に会えたらちゃんと言わなきゃ……ごめんなさいって。また会えて嬉しいって。」
ツバキは何かを決意したような顔をしていた。
「……あいつとは話したいこといっぱいあるからな。あいつは元から喋らないやつだったけど……」
イタルータも優しく微笑んだ。
「ち ょ っ と 待 っ た !」
突然響いた大声量。
「その任務、私達も手伝おうじゃないか!」
現れたのは、
「……え、ミカさん!?ミクロさんにフィギールさんまで!」
「アイリじゃないか!」
「ヤジータ!それに鎌のお前も……」
「名乗ってなかったか?レイドだぜ」
鎌の少女は不機嫌そうに答えた。
「……ライデン、みんな。俺達、これまで相手を蹴落として、ただ机に向かって勉強してって感じだったんだ。超つまんなかったよ。でも、仲間と協力して戦うお前らといる間は楽しかったんだ。だから、俺達はお前らに協力しようと思う。」
ヤジータはまっすぐ俺の目を見て語る。
「それに、そちらのツバキちゃんが悩んでると聞きましたからね?私が黙ってるわけがないのですよ!」
ミカンは誇らしげに話す。
「研究の材料にはなるかもしれないなー。」
「……フィギール、お前らはアイリ達を助けたから、味方だと認識することにする。」
「ヒャハッただダラダラしてるだけじゃあつまらないぜ!」
「ぼっ、僕も頑張る!みんなの力になりたいんだ……」
他の四人も、次々と名乗り出る。
「……ありがとう、いいよな、3人共?」
「……はい!とっても嬉しいです!」
「わーい!みんなでいた方が楽しいもんね!」
「……じゃ、王女様に報告してきますね」
3人共了承したようだ。
「……それじゃあ、明日任務に向かうぞ。よろしくな!」
『おー!』
明日の任務は、10人体制だ。
???改め、セイシュンside
吐き気がする。
昨日から体調がすぐれない。
幼い頃から病弱ではあったが、突然目眩がすることなどなかった。
ぐらりと視界が揺れ、その場に倒れそうになった。
膝をついて意識は保ったが、気を抜けば意識がとぶレベルだ。
……おかしい。
どうやら体調なんて関係ないようだ。
昨日の施設は汚染でもされていたんだろうか。明らかに薬品か何かの影響を受けている。
立ち上がろうとしても、脚に力が入らない。
今日はそこまで暑くないのに、身体中びっしょりと汗をかいている。
……呼吸が苦しい。
息はどんどん荒くなっていく。
落ち着かせようと深呼吸を繰り返すが、肺にうまく空気が入ってこない。
遂には耳鳴りまで鳴り始めた。
それは昔耳に張り付いた彼女の叫び声のような気がする。
……いや、それの呪いのようなものかもしれない。
視界がぼやけ、少しずつ暗くなる。意識が遠のいている気がする。
「(……まずい、早く戻らないと……)」
周りに人はいないが、今襲われればひとたまりもない。
なんとか立ち上がって1歩を踏み出した瞬間、僕はその場に倒れこんだ。
瞼が重くて開けない。まだ耳だけは辛うじて聞こえた。
「……見つけたぞ、セイシュン・グリオニオ」
「最上階に充満していた遅効性の毒ガスが効いたようだな。」
「……んで、こいつどうするんだ?」
「決まってるだろ、新種の食人植物の実験に使うんだよ」
首元に圧迫感を感じた。
「とにかく施設に向かうぞ。」
それを最後に、何も聞こえなくなった。