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*32*
ツバキside
私の隣では、ミカンがすました顔で歩く。
「あの……ミカンさん」
「なんだ?」
かつてのことを思い出しながら再びお礼を言った。
「私とセイシュンのこと……ありがとうございました」
「ああ、そんなことか。」
すました顔を崩さず、
「私は昔大切な人に去られていてね。君と重なったんだよ」
「そ、そうだったのですか……思い出させてしまってすみません」
「気にすることじゃないよ、私が勝手にやったことだからね」
そのあとはしばらく無言で、長い道を歩く。
「あれ?壁が崩れて……」
ミカンは壁からパッと離れる。
その瞬間、ガラガラと側壁が崩れ、その中からレイドと大量の食人植物が現れた。
「レ、レイドさん!?これは……!?」
「あれ?思ってたのと違うとこに出ちまった……とりあえず手伝ってくれ!結局他人を巻き込むことになったなぁ……」
ミカンは素早く魔方陣を展開させた。
「しかたないな、手伝おう」
「せんきゅミカン!」
「わわ、私もやりますよぉ」
弓を構え、桜吹雪の中で矢を射る。
レイドも鎌をいつも通り解放して、次々と食人植物を打ち上げている。
大量の食人植物は、一瞬で消え去った。
「呆気なかったな……やっぱり二人のお陰だぜ!ヒャハハッありがとな!」
「やれやれ……一人でも充分やれたはずだろうに」
食人植物の残骸を見て、ミカンはボソリと呟く。
「ここの食人植物は別に普通なんだなぁ」
はっとした。ここに現れた食人植物は緑色だった。
下級の食人植物ということだ。
「でも……施設の護衛とも言える食人植物がこの程度なわけ……」
「ああ。他のところに主力は向いている筈だ。」
「他の皆さんは大丈夫でしょうか」
「……きっと大丈夫だよ。」
「俺を置いていくなよー!」
「招いた覚えはないよ」
レイドとミカン、私は、急ぎ足で廊下を歩き始めた。
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