完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*48*
ライデンside
「俺が作り出した幻影って……どういうことだよ……」
「そのままだよ。」
あっさりと告げたネオンの言葉が理解できない。
「俺が……お前を作ったってのか?じゃあお前は実在しない人間ってことなのか……!?」
「うん、そうだよ」
あまりにも淡々と語るネオン。
「……そ、そんなの信じられるかよ!!」
「でもそれが真実なんだよ」
「ふざけんな!!俺は、俺は……!!」
ネオンは悲しそうな顔をする。
「あのね。君が無意識にフレアの魔力と君のもうひとつの属性である炎。それを使って作られたのが私。多分施設にいたときから作られてたんじゃないかな。」
「……イタルータのときは、お前があのサーベルに宿ってたって言うのか……!?」
「うん。あのサーベルを動かしたのは私だよ。そのせいで普段は使えない炎が宿っちゃったんだけどね」
いつものようなテンションはない。
「……だから、俺の精神世界に現れたってことなのか……!?」
「うん。そこでね、ライデン」
ネオンは目を閉じて、覚悟を決めたような表情をする。
「私の中にあるフレアの魔力、そして炎の属性を君に返す。その力で、アヤを倒して。」
「返すって……それは……」
「君は神様本来の力を取り戻して、ルーンの力も手に入れて、ヒートを抑えこみ、アヤを討つだけの魔力を宿せる。そしたら、もう敵無しなの。私を産み出してもまだ魔武器が使えたことがそれを物語ってるよね。」
「ちょっと待てよ……返すってことはさ……」
「お前はどうなるんだよ」
「消えるよ」
黒い空間に沈黙が流れる
「……な、なんだよそれ……そんなの……」
「初めからいなかったこととかにはならないんだけどね。でも消えるよ。」
「そんなの……できるわけないだろ……!?」
「ライデン。」
ネオンはまた目を開ける。強い目だった。
「私は君なの。でも、君は君だよね?ライデンは私なんていなくても生きていけるよ。それにね……私がいたら、きっとダメなんだ」
「……え?」
「私がこの世に存在しているから、君は自分のことを信じられてない。すっごい力を持っているのに、私がいるから君の本当の力を知らない。君は自分を信じなきゃ」
「……そんなこと言われたって、俺は、お前がいない世界なんて考えられねーよ……」
「それが当たり前の世界になるだけだよ。」
「違う!そんなことを言いたいんじゃない!!」
目がどんどん熱くなる。
泣いたのなんていつ以来だろうか。
「俺は、お前がいたからこれまでやってこれたんだ……それなのに…………俺が作ったとか、お前が消えるとか、意味わかんねーよ!!」
どんどん言葉が震えていったと思う。
信じられないくらい目が熱くて、頭も痛くて、胸が痛くて……
「……ライデン」
ネオンは俺に数歩近付く。
「君には、もうたくさん仲間ができたよね。姫にリーナ、セイシュン、ヤジータ、イタルータやツバキちゃんも、アイリ君達もそうだよね。だから、私がいなくても大丈夫。」
「嫌だ……消えんなよネオン……!!」
「ライデンは、仲間も世界も大好きだよね。そんな君だから、たくさんの人が信頼して、協力してきた。セイシュンに襲われたときも、イタルータに襲われたときも、君は逃げずに立ち向かったよね。そんな君だから……私が消えることも嫌がってくれてるんだよね」
「頼む……消えないでくれ……!」
「世界も仲間も信じた君なら……強い勇気を持った君なら……どんな悲しみも乗り越えていけるよ」
「ネオン……!!」
「最後に……自分を信じて……ライデン」
ネオンの足元の光が強くなって、ネオンの身体が少しずつ薄くなる。
それと同時に、黒い空間がどんどん崩れて、白い光が見える。
「待ってよ……置いてかないでくれよ……!!」
「さよなら、ライデン。Never give upだよっ!!」
いつもの高い声を残して、青い光と共にネオンは消えた。
「……ネオンッ……!」
涙が止まってくれない。白い床に涙が溢れていく。
そのとき、身体に重くのしかかっていたものが消えた。消えたというより、俺の中へ戻った。
熱い、大きな力が宿った気がした。
これが、フレアの……ネオンの魔力……
気付いていなかったが、サーベルも落ちていた。
俺は、このまま産まれながら背負ってしまった全てと生きていく。
消すことはできなくても、それを制御することならできる。
俺は……自分を信じる。
サーベルを手に取った瞬間足場が崩れ、赤い床に倒れこんでいる俺の身体の元へ落ちていった。