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*76*
「光田さーん!お電話でーす。」
「えっ…私じゃなきゃダメ?」
「先方がそうおっしゃられていて……お願いします。」
「じゃあ、今日はこれで。お疲れさまでした。」
「はい。今日も1日ありがとうございました。」
あれから何年たったかな?
ふとした瞬間、学生時代を思い出す。
今ならわかる。
好きな相手を目で追ってしまうもどかしさ。
気持ちを伝えるときも不安も緊張も、全部。
今の私の職業はOLだ。
沢山面接を受けて、唯一受かった一社。
仕事は楽しいし、充実してる。
奇跡的に同じ会社に入った恋は、ドイツ支社に行ってしまった。
まあ、つまり大きい会社ってことだ。
あと、さらと立花…今でも仲良くしている親友は、さらの猛アタックに立花が応え、付き合っていて、今月結婚式を挙げるそうだ。
幸せそうな2人をみて、安心したし、うれしかった。
披露宴のスピーチの原稿も考えなきゃ。
思いっきり伸びをしたら、美術館の広告が目に入った。
…あいつ、また展示会してるんだ。
美術とは部活以来だけど、今度行ってみようかな…あの人と。
あいつの顔を浮かべて、思わずにやけてしまった。
私たちのその後はそんな感じ。
思ったより普通かもしれないけど、それぞれが幸せな道を選んでると思う。
それが1番!
秋のおっとりした空気の中、家路を急ぐ。
ちょっと洒落たアパートのドアを開けて、いつも通り、私はこう言うんだ。
「ただいまー!」
そして、愛しい声が「おかえり!」って返ってくるのを待つ。
この一時は、ほんとに幸せなんだよ。
―終―
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