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*6*
次の日。本来なら勝手にテントを貼るのは違反だが、丸井が警察なのでなんとか許可がもらえた。
毎週水曜はチームが集まって練習するため不動も参加した。ランニングをしていると、商店街で医者をやっている野口が話しかけてきた。
「おまえさん。テント暮らしじゃ栄養不足とか下痢とかでろくに試合に集中できんだろ。なんとか住めるところを探したらどうなんだ」
「ま、倒れたときは野口センセーの病院で世話になろうかね。腕が立つそうだからな」
「何を言ってるんだか。悪いが治療費はちゃんと取るぞ。俺も安く住めるとことか、バイトがないか知り合いにあたってやるから、お前も人に任せてないで探せよ?」
「ああ、そうさせてもらうぜ」
遅くまで練習は続いた。監督の米田が、集合をかける。
「おう。みんな集まったな。お疲れさん。実は「イリュージョンカップ」への参加を決めることにした。先月にもちょろっと話したから、みんな知っていると思うが、不動は知らないか」
「聞いたこともねえな。草サッカーの大会か?」
「そうだ。あの日本最大の財閥『鬼道(きどう)イリュージョン』が開催してるアマチュアの日本大会のことだ」
鬼道、と不動は目を見開いてつぶやく。
「で、続けるぞ」
米田は目線を不動からチーム全体にうつした。
「優勝賞金は5000万。アマチュアとしては破格の額だ。予選がはじまるのは八月からだが、それに向けてうちは猛特訓を開始する! みんな、優勝を目指すぞ!」
「ま、待ってくださいよ監督。優勝って、ウチは商店街のチームで人数もぎりぎりなんですよ?」
キャプテンの権田が、米田に異を唱えた。
「ああ。だがみんなで話した結果、これから商店街はサッカーの強さをうりにしてアピールしなきゃいけない。人数がぎりぎりなら助っ人を探せばいいんだからな」
「権田の言うとおりウチに優勝は難しいかもしれんが、イリュージョンの大会でイリュージョンのチームに勝てれば気持ちが良いと思わないか?」野口は権田の肩に手を置いた。
権田は首を振り、
「いや、イリュージョンは何個もアマチュアチームを持ってる。スーパーのチームだけじゃない。もっと強いイリュージョンチームはいくつもあるだろう」
「おい権田さんよお。俺を忘れてねえか?」
米田の隣に不動が笑って立つ。
「この俺をよ。任せとけ、俺がいる限りビクトリーズは負けねえよ」
「し、しかしだな……」
「しかしもカカシもねえ。キャプテンがそんな弱気でどうすんだ。勝つんだよ! 助っ人なら俺が探してきてやる」
「僕もやる気ですよ」玄武が権田の前に出た。「試合で目立てば、女の子にモテるかもしれませんからね!」
権田はため息を吐き、チームを見渡してから口を歪めて言った。
「わかった、わかった。優勝目指してがんばろう。100%無理だがな……」