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*7*
終わると、不動は久々の本格的な練習だったため疲れ果てていた。バイト募集のチラシがないか商店街を歩いていると、なにかが靴の先に当たった。
「財布? いくら入ってるのかな」
拾って中を確認すると、免許証なども入っていた。金に困っていた不動の脳裏を、ふと良くない考えがよぎる。
「どうすっかな……」
「や、お兄さんいけないんだ!」
「うわっ。急になんだよ!?」
驚いて振り返ると、少女が制服姿で立っていた。おそらく高校生だろう。
「いきなり話しかけるんじゃねえよ!」
「だって、拾ったお金いま自分のものにしようとしたでしょ」
「は、はあ!? んなことするわけねね、ね、ねーだろ。近くの交番に知り合いの警察がいっから、そいつにだなぁ……。って、もしかしておめーのか?」
「違うよ。でも、ちゃんと届けるか怪しいから、一緒に交番まで行こうよ」
「は、はあ……!? 勝手にしろ」
舌打ちをし、不動はさっさと交番に向かった。少女は本当に後ろからついてきていた。
「ご苦労であります!」
届け終わり、丸井の敬礼を見てから、不動は早く帰った。朝釣った魚を食べようと、帰路を急ぎたかった。
「ごくろうさま。あなた、見かけによらずいい人だね。これ、あげるよ!」
少女が不動に手渡したのは、紙袋に包まれたコロッケだった。
「いや、もらう理由がねーよ。じゃあな。ガキはさっさと帰れよ」
「ガキじゃないよ! それにあなただってそんなに歳変わらないでしょ」
その時、不動の腹がぐうと鳴った。練習の後でエネルギーを使い果たし、胃は空っぽだった。
「遠慮せずに食べて」
「しゃーねーな。あンがとよ」
「じゃ、あたし帰るね。気をつけてねお兄さん!」
「おめーが気をつけろバーカ。……ったく、遅くに出歩いてんじゃねーよ」
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