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イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー
作者: 南師しろお  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: イナズマイレブン 不動明王 パワプロクンポケット イナイレ しろお 
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10~ 20~ 30~ 40~

*30*



 テントを片付けるため河原に行くと、スーツ姿の女性がテントの前で腕を組んで立っていた。不動に気づくなり、駆け寄ってくる。
「こんにちは。あなた、ここで住む許可はもらっているの?」
 不動はこの女をどこかで見た覚えがあった。が、すぐには思い出せない。
 顔は知っているが、名前が出てこないのでそれほど親しいわけではなかった。が、試合をしたことがある気がした。女性と? と不動は疑問に思いながら無いと答えた。
「警察はなにやってんのかな。あ、あたしこう見えて竜巻町の議会に関わる仕事やってます。財前塔子って言います。いま、警察の人呼ぶからちょっとまってて。ま、悪いようにはなんないよ。ちゃんとしたことに行けるから安心してよ」
 そうしゃべりたてると、女は携帯電話を取り出した。不動は、はっとその女を思い出した。
「おまえ、財前か。あの雷門中にいた」
「え? どこかで会ったっけ」
「忘れられてるとは悲しいねェ。このジョーカー様をよ」
 塔子はまじまじと不動の顔を見つめる。
「ジョーカー……。もしかして、おまえ不動か!? 髪が長くて全然気づかなかった! でかくなったなー!」
 不動は無視して、テントの撤去をはじめた。
「ひさしぶりだなーどうしてたんだよ不動! っていうか、なんでこんなとこにいるんだ? サッカーはどうしたんだよ」
 塔子は不動だと気づくなり、少女のように無邪気な笑顔になった。さらに、女性には似つかわしくない男のようなしゃべり方に変わった。
「うっせえなあ。んなことどうでもいいだろ」
「相変わらず無愛想なやつだなぁ。理由を教えてくんなきゃ、助けてあげようにもできないぜ」
「誰が助けろって言ったよ。俺は今から人の家借りて住むことになってんだ。世話はいらねえよ」
「なんだ、そうなのか。でもお前、いまどうしてるんだよ。それくらい教えてくれよ」
「いまは」と言いかけたところで不動は口をつぐんだ。
 いま、彼はどうしているのか。これからどうするのか。生きることに必死で、プロのことを忘れていた。
「いまは?」
「ちょっと前に怪我してプロ試験受けられなくてな。今は、仕事しながらビクトリーズって商店街のチームでやってる」
「サッカー続けてたのか! お前くらいのやつなら試験なんか受けなくても声がかかる思うけどな。高校じゃ活躍できなかったのか?」
「タバコ吸ってたのがバレたのかもな」
「はあ!? 何やってんだ」
「ま、それは半分冗談で。欧米にこの不動様の技を見せ付けてやろうと思ってな。今は怪我のリハビリ期間ってとこだ。しっかり復調したら行くつもりだ」
「へえ。海外とは大きく出たな! でもお前らしいな」
「町議会のなんとかは、暇なのか? 仕事はいいのかよ俺と話しててよ」
「あ! そうだった。やばいやばい」
 塔子は腕時計を見て慌てる。顔をあげて、
「不動、お前変わったな。前は、あたしとは口もきいてくれないようなやつだったのに」
 と言うと小さいメモ用紙になにか書き始めた。それを不動の服のポケットに突っ込むなり、
「困ったことがあったら言ってくれよ。竜巻町の人を助けるのが私の仕事だからさ。じゃね!」
 と言って歩き去った。不動がポケットから紙を取り出すと、電話番号が書かれていた。
 助っ人でも頼むか、と考えながら引越しの作業を再開する。
 不動はその日のうちにテントと荷物を撤収し、京香の家に移り住んだ。

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