完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*10*
昼ごろ、不動が晩飯のために釣りをしていると、遠くの浅瀬で男がおぼれていた。
「マンマ・ミーア! アイウート!」
男のウェーブがかった金色の長髪が、水になびいている。
「おいおい、浅瀬だぞ? 自分で立てるだろ」
「水が怖いのだヨ! 助けて!」
「よくわからねえが手を貸せばいいんだよな。ほら、これで立てるだろ」
しばらくすると男は落ち着いたのか、グラッツェと何度も繰り返して不動の手を握った。
「助かりましタ。わたしディノ・マルディーニといいます」
「不動だ。おまえ、この辺に住んでるのか?」
「いえ、さいきんきましタ。日本の女の子が好きで、日本に来ましタ。でもみんなかわいくて選べないでス」
ディノは照れ笑いをする。不動は興味なさげに「そうかい」とだけ言って釣りを再開した。
「不動サンはここに住んでるですカ。お、これはサッカーボール! 懐かしいですネ」
「サッカーやってたのか」
「えェ。サッカーがうまいと女の子にモテるので、必死に努力たヨ。プロやってたこともあるヨ」
「は!? 本当か!?」
「えェ。といっても半年くらいだけどネ。色々あってやめちゃっタの。今ハ日本の女の子にモテるためアニメの勉強してるヨ〜! この間アニメ好きの外国人特集ってテレビの番組にも、呼ばれたヨ!」
「サッカーにアニメに、大した行動力だな。お前俺のチームに来いよ。人が足りてねえんだ」
「おー……日本の女の子いまス?」
「来る来る。活躍したらすげーぜ? 俺たちはいま全国大会に挑んでるからな」
「なんと! 日本の一番大きな大会のことですネ!? それはすごい。行きます、行きますヨ! サッカーやらせてください!」
前期OP「メリッサ」
鳥を夕闇に見送った 地を這うばかりの俺を風がなぜる
羽がほしいとは言わないさ せめて宙に舞う
メリッサの葉になりたい