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*8*
不動は、朝から身体の調子がおかしいので、野口の診療所に向かった。
「で? 落ちてた木の実を食べたら下痢になった?」
「ちっ。いいから早く薬をよこせよ」
「お前さん馬鹿だなぁ」
野口は上機嫌に笑う。不動は大きくため息をついた。
「そんな拾い食いするようなやつが、治療費は出せんわな。だが助っ人を警察に突き出すわけにもいかん。そうだな、次のイリュージョンとの試合勝てたらチャラにしてやる」
「わりぃな。ところで、センセーはどうして医者になろうとしたんだ? 俺の目はごまかせねえ、あんたのサッカーのセンスは抜群だぜ。学生時代にもやってたんだろ」
「ご明察。そうだな」野口は背もたれに深くかけた。「俺には歳の離れた妹がいた。病気がちでな。なんとか医者になって助けようと思ったんだ」
不動は、聞いた割には退屈そうに、
「涙が出るねぇご立派だよ」と言った。
「そんなことはない。結局私はただの町医者だからな。さ、それより早く帰って身体を休めろ。助っ人に身体を壊されちゃたまらんぜ」
「へいへいっと。じゃあまた来るぜ」
背を見せながらひらひらと不動は手を振る。
「何を言ってるんだ。もう来るんじゃない」
やれやれ、と野口は肩をすくめた。
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