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しりとりシリーズ
作者: 彩都  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: しりとり 
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*8*

 『菊』

 私の名前は『菊』、絡繰で御座います。
 全ては、今のご主人様が与えてくれました……家……衣類……何もかも……
 もう……何もかも……ザァザァと、雨が降っている、『菊』は、墓標の前で悲しんだ。
 「だっ旦那様ぁ……何で!何で!……」
 木偶の坊の様に立っていた『菊』は、膝を曲げて、泣いた、絡繰に涙など、出せないのに……
 ニコニコと、笑う男性が『菊』の前に現れる、『菊』は不思議がる、何と、『菊』の次の主人だという。
「うむ……君が絡繰家政婦の『菊』かい?」
「い……今は、ただの絡繰です……」
 すぐさま言う、素早く言うのも、家政婦の掟の一つだった。
「ただ、今から私の家政婦になるがね、さぁ、今から私の家に来なさい、そして、服を着替えないと……」
 と、新しいご主人様は言い、私はその人の家に行きました、前のご主人様と同じ位の豪邸でした。
 ただ、前の服装より……今の服装がちょっと……前の服装は、足先迄、丈が有ったのですが……靴下が、下着と太股の間位にあり、丈も気を付けなければ、下着が見えてしまいします……何とか、丈を伸ばして、見えない様にしてますが……階段など、上ると……その……見えたり……そして、見える下着がまさかの『白』だけなんです!!
 凄く意味が分かりませんが……支給品なので、反論は出来ません……仕方なく着用するですよ……何か気苦労が耐えません……どうしてでしょう……?
 うーん……絡繰である、膝や腕の駆動領域が隠せてるのは良いのですが……若いから、性欲に飢えてるんでしょうか……?
 関係無いですけど、私が着替えてる間に、たまたま、入ってきて、私の下着姿や、裸を見たり……まぁ、見たからには制裁をしたくなりますが、私は絡繰、これ以上変な事をして、絡繰の世界を崩壊させてはいけません……なので、我慢我慢なのです……
「駿河ー、皆呼んで来てー、出掛けるからー」
「ラジャー、駿河、皆の者を呼びまする……まずは戦場ヶ原、貴方です」
 駿河は、絡繰の戦場ヶ原を捕まえる、戦場ヶ原は反抗する、次に、絡繰の千石を捕まえる、千石も反抗する、そして、『菊』は、ご主人様の隣に居た。
「ただいま、駿河帰還いたしました、あら、『菊』さん、居たんですか、ご主人様から、話は聞いていますか?」
「かなり、話は聞いていますが……良いんですか?絡繰が海と言う場所に行って?」
 テントを運びながら、『菊』は言う。
 後ろからご主人様の声がする、ご主人様も何か運んでいる様だった。
「ただ単に、皆を置き去りには、出来ないからね……さぁ、車に乗って、急がないと……」
 とりあえず、一人と、四体の絡繰は車に乗り、海に向かった。

「たっ……高ーい!!」
 いきなり、『菊』は叫んだ、それもその筈、今迄に見た事が無い位の金額だったからだ。
「大丈夫ですか?我が屋敷はこれ位普通なので、気を失わない様に……」
 ニコニコせず、本当に無表情の駿河が言う、『菊』ははっはい!と頷く、早く慣れないと……
 とか思いながら、ご主人様は先に進み、旅館に金を払う、ここは海が見渡せる旅館だった。
「たっけーな!地面が遠く見えるぜ!!だろっ!?戦場ヶ原!?」
 爛々と輝く太陽を背に、千石が戦場ヶ原に言う、戦場ヶ原は言い返す。
「凄い凄い……てか、煩い……」
 厭々ながら、言う戦場ヶ原……それに対して、ご主人様が言う。
「うーん……仕方無いよ……千石は人間型の絡繰なんだから……記憶が繰り返せないからなぁ……」
「あの……記憶が繰り返せないってどういう意味です……?」
 すかさず、『菊』は駿河に聞く。
「詳しく説明すると、そもそも、千石は人間です、昔、事故により、半身以上が失いました……何とか、絡繰化して、生きていますが……やはり、いじめがありまして……数年前に今のご主人様が拾いました……」
 淡々と言う、駿河に感動出来ない『菊』、すると、ご主人様は水着を用意した。
 ただ、『菊』の水着は、全身タイツだった、『菊』は仕方なく頷く。
「苦しいかもしれないけど……ゴメンね……君は防水対応ではないから、こんな可愛くない物になったけど……着るかい?……」
 厭々言う、ご主人様に、少し、感動した……此処迄、私の事を気遣ってくれるなんて……私は勘違いしていました……

「高い所からーーージャーーーーンプッ!!!」
「ッ!?……私も……」
 もう、皆が見ている……そう、『菊』が思いながら、崖から、飛び降りる、千石と、戦場ヶ原、それを見るご主人様と絡繰二体。
「いやー、今日は来て良かったなー……あっ、そういや、最近、手に入れた物が有るんだ……『カメラ』って言って、絵みたいな物を取れるんだって!皆で撮ろうよ!!なっ!?」
「つまらないぜー、なぁー戦場ヶ原ー?だろう?」
 うーむ……と悩む、戦場ヶ原、ご主人様の案をゴリ押しして、皆で写真を撮る事に……

「ニコニコして!ハイ、笑おう!!」
「うー、私は難しいのですが……」
 我慢出来ない笑顔に、顔がプルプル震える、駿河、でも、何とか、写真は撮れた様だった……

 ただ……時が経つのは早い様で……
「でっでも、私は……」
「ハハッ……もしも自分が死んだら、その写真を見て、今迄を思い出してよ……僕も先は長くないんだし……ゴホッゴホッ!!血が……」

 頑張った……医者が言う……私が存在している間に二人もご主人様が死んだ……
 弾丸に打ち抜かれたかのように『菊』は動かなくなった……

 単純に動かなくなった、絡繰は廃棄される事になっている、手には、海で撮った写真が有る……意識が途切れる……あぁ……私は死ぬんだな……そう思いながら、写真を見た……
私は思う……ご主人様……私は役に立ちましたか……?

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