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【完結】「秘密」〜奔走注意報!となりの生徒会!〜
作者: すずの  (総ページ数: 39ページ)
関連タグ: 推理 恋愛 生徒会 
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10~ 20~ 30~

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 紗綾香ちゃんが、目を爛爛と輝かせている。
「とりあえず、学校を辞めさせるという話はなくなった。しかし、推薦の権利が一切なくなった。つまり、受験が三月だけに限定されてしまったということだな。推薦で受けようと思っていたあいつにとってみれば、これはかなりの痛手だ」
 反面教師にしよう、と誰かに聞えるでもなくぽつりと呟く惣志郎。
 副会長が淡々と成績表を読み上げる。
「かなり学校の成績はよかったそうです。特に、現代文と数学、英語の評定平均が四・五以上もありますね。確実に推薦で狙えたでしょうに」
 しかしなあ! と会長が大声を張り上げ、話の流れを変えた。
「お前達が行く先々、どうしてこんな事件が起きるんだ。若井武の件にしても、今も尚現在進行形で起こっていることも――なあ、猫又」
 会長の舐めるような視線と試すような口調に、惣志郎は臆することなくへらへらと笑いながら頭を掻く。
「ああ、あのサッカー部員のことですか? 僕、そのこと全くわからないんですよね! もうさっぱり!」

 私達の事件吸引体質は一向に衰える気配がなく運命だと認めてしまえば楽なのだが、認めたくない。なぜか。認めてしまえば本当にそういう「体質」になってしまいそうな気がするからだ。
 私達がサッカー部を訪れ、総体予選の報告書(なぜかマンゴスチン)を生徒会に持って帰ったその翌日、その場に居た関係者の瀬戸美桜、押田俊、橘涼は生徒指導部による事情聴取を受けることとなった。
若井は瀬戸美桜のストーカー、というのはなんとなく読者の皆様もお気づきかと思われる。新聞部を乗っ取ってやろうとしていることは、自分の横恋慕を叶えるためだったのだ。
 若井の供述によると、情報が比較的集めやすい新聞部を乗っ取り、なんとかして仲違いさせる方法はないかと、考えあぐねていたところ、瀬戸美桜の荒くれた過去についての情報を入手し、悪い噂を押田に吹き込もうと思ったらしい。
 若井が喋った「荒くれた過去」と、瀬戸美桜が告白した「荒くれた過去」の内容が一致しているところから、かなり瀬戸美桜のことを調べたようだ。しかし、その内容までは生徒会には教えてくれないらしい。そして、当事者たちの事情聴取が終わり、後は総務部と生徒指導部の厳正な判断が下されるだけとなった次の日、サッカー部の三年生、橘涼が無断欠席をした。
 これから進路を決めるための大事な時期に入ろうとしている三年生にとって、無断欠席というのは、ある意味勇気がいることだ。もし、橘涼という三年生が一日だけ無断欠席をし、その後はちゃんと学校に出席している、ということなのであれば、生徒会の方に話なんて回って来ない。問題はその後だ。
 橘涼は、家にも帰っておらず完全に行方をくらました。しかも、その次の日にはサッカー部の三年生全員が同様に行方をくらましてしまうという事件も起きる。そして、それは橘涼が行方をくらましたその日から、一週間経った今もなお続いている。
 彼らの両親は最悪の事態を想定し始め、慌てふためき、警察に被害届を出した。

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