完結小説図書館
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*3*
六月中旬、これからどんどん気温が上がってうだるような暑さになるであろう未来を怨みたくなる。
朝、玄関から一歩外に出ると、まだちょっと肌寒くて長袖のシャツが丁度いいのだが、昼になり、太陽が地面を照りつけると、予想に反してグンと気温が上がってしまう。体温調節が難しく、朝のお天気ニュースの最高気温と毎日睨めっこしなくてはいけなくなる。
総合体育大会、略して総体が行われ始めはや一週間。
今のところ報告として上がっているのは、男子バスケットボール部、女子バスケットボール部、地区予選敗退。
サッカー部は惜しくも県大会を逃したが、今までの弱小天宮とは違うと総務部でも話題になっている。確かスポーツジムのインストラクターが臨時コーチに就いたとかなんとかで、選手改革を行っているようだ。
陸上部、男子は棒高跳び、女子は走り幅跳びでそれぞれ県大会を迎えることとなった。
そろそろ一年間の努力の成果が現れ始めるこの頃、県大会まで駒を進めた部活はまだまだ活気があるが、予選敗退してしまった部活は、三年生が後輩達に涙ながらの引退の言葉を伝えていた。もう高校生活最後のひと夏が終わってしまったという後悔と、まだまだやり続けていたかったという気持ちが綯い交ぜになっているに違いない。三年生はこれで受験へと気持ちが切り替わり、二年生はこれから一年生を従えて主権を握るようになる。活気がなくなったというより、総合体育大会という大仕事を終えて安堵感のほうが強いような気がした。
だが、私達生徒会は総体とは全く縁のない文化部の頂点故、その後に行われる文化祭の方で慌ただしく動いていた。
山野上会長と一染副会長は、これが最後の文化祭ということもあってか気合いは前年度と比べて十分だ。十分過ぎて、時々テンションについていけなくなる時があるが、うまく副会長が会長をコントロールし、なんとか暴走までには至っていない。
山野上会長と一染副会長は、我が生徒会ツートップのお二方である。正直、私は山野上会長以上に、これほど会長職にお似合いの方は見たことがないが、一染副会長によると、何代か前のOBやOGの先輩方の方がもっとすごかったらしい。山野上会長以上だなんて――私は全く想像がつかない。というか、想像したくない。
そんな山野上会長の従順な部下としてずっと側にいるのが一染副会長である。彼は影武者ように山野上会長から離れることはない。どうやら幼いころからずっとこのような関係だったらしく、今更変える必要もないのだとか。全て「幼いころから――」で言いかえされてしまうので、私は彼らのあり方はあれでいいのだ、と毎回無理矢理にでも呑みこむことにしている。
そして、そのお二人の下にいるのが、私、来部愛華と猫又惣志郎である。
とりあえず先に我が生徒会会計長の方から紹介しよう。
第二学年、生徒会、会計長。
彼はあの有名な猫又旅館、総本家のお坊ちゃんである。きっと、読者の皆様も一度は彼らのおもてなしを受けたことがあるだろう。
いつも何を考えているのかわからない不思議キャラのため、クラスで浮くことが多かったのだが、最近はない。きっと学校で警察組織から表彰されることが多くなったためであろう(つまりふわふわとした不思議キャラのイメージがなくなりつつある)。
実を言うと、彼は学校にまつわる様々な難問奇問の事件を解決しているのだが、その話はまだ改めて紹介することにしよう。