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【完結】「秘密」〜奔走注意報!となりの生徒会!〜
作者: すずの  (総ページ数: 39ページ)
関連タグ: 推理 恋愛 生徒会 
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10~ 20~ 30~

*8*

「なんだ、勘かよーっちぇ」
 舌打ちをして、惣志郎からさっさと離れるサッカー部キャプテン。なかなかキャラが濃くなってきたぞ。これから私達で対処しきれるのかどうか不安だ。その不安は惣志郎も感じとったのか、額に冷や汗が流れたのを私は見逃さない。
「一体何の用なんだよ? 確か、予選結果の報告書、とかなんとか?」
 彼は、自分の関心が一気になくなると途端に雑になるらしい。
「そうなんです。サッカー部だけ、大会日程の都合で結果がわかるのが今日だったので、愛華ちゃんを連れ戻すついでに結果報告書を貰いに、ということですね」
 連れ戻す、のところだけ声が大きくなるのは嫌がらせか、ちくしょう。
「あーその書類か。確か……」
 その時、部室棟の影からぬうと一人の女子生徒が現れた。その女子生徒は、私達のすぐ横にある冷水機で喉を潤している。押田さんはその人に向かって「丁度いいところに来た、おい!」と話しかけた。
 彼女は、冷水機の水を飲み終わると、首に掛かっているタオルで顔を拭いた。
「どうかしたの? 俊」
 彼女が顔をこちらに向けた瞬間、拳銃か雷かでうたれたような衝撃が走った。
 うーむ……この世には神様から完璧な容姿を与えられた人もいるんだなあ、となんだかセンチメンタルな気持ちになる。
「あら、確か生徒会の猫又惣志郎くんと来部愛華ちゃんよね? あなた達のお話は友美から聞いてるわよ。いつも大活躍ね」
「こいつは、三年生、うちのマネージャーの瀬戸美桜だ」
 うちの会長を「友美」と呼び捨てに出来る人物は数少ない。その内の一人なのだから、相当彼女も会長のように「よく出来た人間」なのだろう。
「初めまして。瀬戸美桜です。友美がいつも怒鳴り散らしてるらしいけど、いつもあなた達のこと、裏ではちゃんと褒めてくれてるから安心して?」
 にしても、なかなかの美人だ。
 もし天女様が現世におりてくる時、彼女の容姿になりかわるかもしれないと思う程である。
「なあ、予選結果の報告書、お前が持ってないのか?」
 押田さんが彼女に聞き、少し考えた後思いついたように手を打つ。
「それなら涼が持ってるわよ。ちょっと貸してって言われたの。ほら、あそこのベンチに座っている人」
 彼女の長い指がこちらに背中を向けてベンチに座っている人物を指さした。同じようにサッカー部のジャージを着ている。
「あいつはまた選手記録をとっているのか? よくやるよ」
「涼は努力家だからね。あの人が同じ三年生の橘涼。涼に聞いてみたらいいわ」
 瀬戸さんは私達に早々と告げると、目の前にあるサッカー部の部室の扉を開け、中に消えていった。
 すると押田さんが、何かを思い出したように「そうだ! 美桜!」と瀬戸さんの名前を大声で呼ぶ。
「お前のスマホ、倉庫に落ちてたぞ。会ったら返そうと思っていたんだ」
 中から悲鳴に近い声が私達の耳に飛び込んできた。
「ええええええ!? 本当!? いくら鳴らしてみても見つからなかったのよー 俊が見つけてくれたの!? ありがとう!」
「画面に、お前が応募したライブの当落結果がメールで来てるぞ」
 彼はそう言いながら靴を脱ぎ、サッカー部の部室に入ろうと数段の石段に足を掛ける。
「えええええ!? 見て! 早く結果を知らせてよ!」
「パスコードがかかってるだろ」
「もう! 煩わしいわねえ! 早く貸して!」
 押田さんが後ろ手で扉を閉めるのと同時に声が消えた。嵐が過ぎ去った後のような静寂が訪れる。
 この場に残された私達は、お互いに顔を見合わせた後、静かに息を吐いた。


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