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*33*
「会話イベント 源義経、ミラ・マクスウェル」
静かな夜、夜風の吹く草原で義経は笛を吹いていた。
「義経」
ミラが髪をまくってやって来た。
「ミラ、何しに来た?」
「私としたことが、寝付けなくてな。そしたら素敵な音色が聞こえてきてな。君の笛だったことが解った」
「ああ、久方ぶりに笛を吹きたくなってな」
ミラが興味津々に笛を見ている。
「何だ?」
「君の持っている笛、フルートみたいだな」
「ふるうと?何なのだそれは」
「私がかつて旅をしていた時にこういう形をした笛があってな」
「ほう・・・」
「その笛、私にも吹かせてくれないか」
「お前に?まあ、少しくらいならいいか」
ミラが笛を持った。持ち方は縦だ。
「待て、そう持つものじゃない」
「え、縦ではないのか。笛はこう吹くものだと思っていたが?」
「お前の世界ではな、だが、俺の世界では横に吹くんだ」
「横に?」
「ああ、横笛と言うやつでな、まず・・・」
義経はミラに笛の吹き方を教えた。ミラは笛を横向きにして静かに目を閉じて笛の音色を奏でた。精霊の奏でる美しい音。義経は見とれてしまっていた。
「うん、変だったか?」
「いや、違う。笛を吹くお前が綺麗に見えてな。その衣装も慣れてしまえばより美しく見えるものだな」
「どうした、お世辞を言うなんて君らしくないな。ふふ、しかし旅はどんな時でも楽しいものだな。かつて、彼等と旅したあの頃を思い出す・・・」
「あの頃・・・?」
「ああ、私が人型となって初めて人の世界を見て回ったあの時、多くの仲間と旅をし、辛くもあったが、楽しくもあった。君を見ていると彼を思い出すよ・・・」
「彼?」
「私が最初に出会った人間だ。お人好しながらも芯の通った少年だった。だが、もうあの世界には戻れない。そして、彼とも会えなくなってしまった・・・」
「ミラ・・・」
「いや、よそう。過去のことをいつまでも気にしては。それに、君には関係ないことであったな」
「ああ、お前がいた世界のことは俺も知らない。でも、そいつと会ったことは後悔していないんだろう?」
「え?」
「今も思い出としてお前の心の中で生き続けている。それだけでも彼と一緒にいる、そうは思わないか?」
「そうだったな、そう言われてみれば、私の心の中では今も彼との思い出が生き続けている。あの世界で得たことは無駄ではなかった。それに今は義経、君達がいる。そしてこの世界を救うために戦っている。こうして君と出会ったのは何かの運かもしれないな」
「な、まさかそんなことは・・・!」
「義経、これからもよろしく頼む。共に、頑張っていこう」
「ああ、共に戦っていこう」
義経とミラは固く握手をした・・・。