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花と太陽  遂に完結!!長らくお世話になりました。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 33ページ)
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10~ 20~ 30~

*4*

Episode 3

「千雪、帰りどっか寄ろうよ?」
「!!うんっ!」
これが現実なのか?時より、そう思う時がある。
 でも今はそばに苺香ちゃんがいる。
苺香ちゃん、慣れない呼び方で呼ぶ名前がくすぐったく感じる。
「え~今日、僕と帰りましょうって約束しましたよね?苺香ちゃん」
奏桜太くん。
「うるさいなぁ、今日は千雪と帰るの!」
太田苺香ちゃん。
自分勝手すぎますよぉとヘロヘロとしゃがみ込む奏君を掴む男の子。
「じゃあ、俺ん家に寄ってゲームしよう」
と優しく笑いかける綾瀬泰陽君。
「1年に超好きな子いるんだけどっ!」
「あの子達でしょっ」
上級生は私達を指差して頬を赤く染めながら話している。
 すごい、みんな話題になるんだ。
私は、そんな人達と仲が良くなったんだ。
「高嶺っじゃあな。また明日」
毎日笑ってもう、昔の私じゃないんだ。


「千雪って好きな人いる?」
喫茶店の片隅でショートケーキを食べながら苺香ちゃんは私に問いかける。
「えっ」
好きな人……。今までにできたことのない特別に呼べる人の名前。
「いたらいいと思ってるけど……」
……明るくて私を照らしてくれる人がいいなぁ。
 ぼやぁ。
っ!!ど、どうして綾瀬君が頭に浮かぶの?
私は、ブンブンと首を振る。
「どうしたの、千雪?私はね、実はいるんだぁ」
こんな苺香ちゃんのかわいい顔見たこともない。誰が、苺香ちゃんにこんな顔させれるんだろう?
 もしかして……。
「奏君?」
びっくりした顔でみるみる真っ赤になる。
「そうだよ、でも完全に私の片思いだから言わないでね?」
内緒ねっと恥ずかしそうに人差し指を口に当て、上目づかいに私の顔を覗き込む。
 か、かわいいっ!!
でも、いつも一緒だから付き合ってると思ったというと悲しそうに首を振る。
二人が付き合えたらいいなぁ。
私もこんな顔してみたい、だなんておこがましい。いまだに男の子に謙遜されてる気がするし……。
 はぁ…。
「ねぇ聞いてる?」
えっというと、も~仕方ないなぁと頬を膨らませる。
「B組の笠寺藍(かさでらあい)の事っ」
″笠寺君〟学校でいつもやるテストで私の次のNo,2を守り続けている。あの笠寺君かなぁ。
苗字も名前も珍しいしきっとそうだよね。
顔は見たことないけどその男の子がどうしたんだろう?


 苺香ちゃんから聞いたことによると、その笠寺君は。
色素の薄い髪で目がきりっとしているとてもかっこいい男の子だそうだ。
家は神社育ちのおぼっちゃんで私達の家の近くに住んでいるという。
そして本が好きな文武両道ができる男の子らしい。
 それが私と何の関係があるんだろう…?まぁいっか。
ブーっブーっ
私が乗らなきゃならない電車が発車音を出す。
 あぁやばいっ
と走ると同時にドアが閉まる。
 その時ーーーー。

グイっ!!
わっ、誰かに引っ張られた。
色素の薄い風になびく短い髪、繊細なきめの細かい白く私の腕を掴んだ大きな手――。
目がきりっとしていてモデルみたいな高身長。片手には読みかけの本。うちの制服――。
 もしかして……。
「高嶺千雪?」
「笠寺藍さん?」
私ったら口に出して、もし違ったら……!
考える前にお礼言わなきゃ。
「あの、引っ張ってくれてありがとうございました。」
なんで?私のこと――。
「堂々1位の高嶺さんの噂は聞いてたから。特徴はストレートロングの長い髪に前髪をヘアピンでとめてること。」
私と同じ?
「よろしく、高嶺さん」
にこっと笑いかけられる。
 ま、眩しいっ!!
私もよろしくお願いします……と笑う。今、顔がひきつったのは気のせいかな?
でも、綾瀬君以外に初めて笑いかけられた。うれしいなぁ。

「えっ、あの笠寺君に助けられたのっ?!しかも笑いかけられたっ!!?」
いいな~と苺香ちゃんが目をキラキラさせる。
 そんなに?でも引っ張って助けられたときはドキッとしたなぁ。
「ていうかそんな出会いかた少女漫画みたい」
キャ~と頬を赤く染める。少女漫画かぁ……。
「どうしたの?高嶺、苺香ずっとここにいて」
 この声、まさか……。
「おはよっ」
あ、綾瀬君!!すごい、いつも以上に眩しく見える。どうして?
「おはようございます。苺香ちゃん、高嶺さん」
後ろからひょこっと奏君が顔を出す。
苺香ちゃんはいつも通りだと思ったけど足元を見るとガタガタ震えていた。
いつもこんな感じで奏君と喋っているんだ。頑張ってるなぁ、苺香ちゃん。私は、微笑ましくなった。
キャ~、キャ~と女の子たちの嬉しそうな歓声が聞こえてくる。
 何だろう?とみんなで見ると……。
背の高い男の子が見えた。後ろには女の子達の大群。
色素の薄い風になびく短い髪、目がきりっとしていてモデルみたいな高身長。
本を読みながらこっちに来る。
 間違いない!笠寺君だっ!!
笠寺君も私達に気づいたようでにこっと笑いかけてきた。
相変わらず、眩しいっ!!
「高嶺さん、おはよう」
と私達を見る。そこで綾瀬君の目の前に目線を止める。
「泰陽、おはよう」
当の綾瀬君は、ものすごく嫌そうな顔で、目をキラキラさせ、子犬みたいな表情をしている笠寺君を見る。
桜太もおはよう。というとにこっと笑いこちらこそと言っている。
 どうして、綾瀬君はそんな顔をするの?
はぁ~と深いため息をついて奏君を連れて行ってしまう。その後を苺香ちゃんが急いでついていった。
戸惑っている私と目が合い、笠寺君は思い出すように言う。
「泰陽と俺は小さい頃からののライバル同士だからいつもあんな感じ、大丈夫だよ」
でもいいんだ、喋らなくても。勝負するときお互いの気持ちがわかるから。と笠寺君は満足そうな顔で言う。
  へぇ、ライバルでもあり心の通じ合える戦友みたいな関係なんだ。
なんかいいなぁ、かっこいい。

 なんで、藍が高嶺の事知ってんだ?あんな親しそうに。
俺なんか高嶺に挨拶したってびっくりされるだけなのに……。
 悔しいなぁ。俺の方があいつよりも一緒にいる時間は長いのに。なんで俺には?
………嫉妬?
な、なわけないか。そうだよなぁ、高嶺に俺が嫉妬?おこがましい。
他校にも高嶺のことが好きな男子がいて帰りには出待ちまでしている奴もいる。
そんな高嶺の花なのに俺なんかが高嶺に嫉妬しているなんて言ったらブチ殺される。
 男として、みんな高嶺の事を大切に想っている。
「まったく、今朝からどうしたんですか?顔がこわばっていますけども」
笠寺君に会ったからですかと俺の顔を覗き込むように見て心配そうに桜太が言う。
 たぶんそれもある、けど違う何かモヤモヤしたものが心を渦巻いていた。
俺の心とは違い、空は雲一つない快晴だった。




 





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