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花と太陽  遂に完結!!長らくお世話になりました。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 33ページ)
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10~ 20~ 30~

*5*

Episode4
 朝起きて、まず最初に思い出す顔ーーーー。
みんなの事。今日はどんな楽しい事があるのかなって考える。
昔と違う今の私の行動、変わったって思えるからうれしくてつい顔がにやけてしまうーーーー。
 プルプル~
電話?誰だろうこんな朝早くから?
ベッドから私は、起き上がって電話を取る。

『あ、千雪ちゃん。おはよう、元気かな。』
声を聞いた瞬間――
「!」
頭が真っ白になった、だってその声の主はお父さんだったんだもの。
いつもは無口なお父さんが私と話しているから。
待ち望んでいた声が聞こえる。目から涙がポタポタとこぼれる。
止まらない、でも泣いているのに心はポカポカしている。
 どっちかにしてよ、私。
『千雪ちゃん聞いてるかな?実はな父さんと母さん。』
嫌な予感がした、寒気が立った。
『離婚することになったんだ。』
大丈夫だよ、知らせたかっただけだからと言い残したまま電話を切った。
 え、り離婚!?


 俺は教室を入るといつも目の前で楽しそうに話している高嶺と苺香に挨拶する。
けども今日は違った。苺香しかいない、毎日休まず学校にまじめに来ている高嶺がいなかった。
苺香に声を掛けると、
「た、泰陽。どうしよう、朝千雪の家に行ったら誰もいなくて。」
電話もつながらなくてぇと顔を真っ赤にして目に涙を溜めて話す苺香を見る。

 そのあとの授業の内容も頭に入らなかった。
ただ頭に浮かぶのは高嶺の寂しそうな顔だけだった。
今もあの顔をしているのだろうか。

「あの、千雪の家行ってみない?」
心配だしと苺香が言っている。
そうですね。と桜太が言う。

 「ここだよ」
ここが高嶺の家。俺は見上げる
 ……デ、デカッ!!!
苺香は何にも戸惑いもなくインターホンを押す。
慣れているんだな、幼馴染すげえ。
 何回鳴らしても応答はない。
すると苺香がドアノブを掴むと力強く引く。
 ぐいっ
中は綺麗だった。高嶺の気配もしない。
電話がオレンジ色に光っていた。
今朝……?再生してみるか。
 ピ―。
『あ、千雪ちゃん。おはよう、元気かな。』
高嶺のお父さん?
苺香は寂しそうに唇をかみしめていた。桜太はただ、ずっと静かに聞いていた。
『千雪ちゃん聞いてるかな?実はな父さんと母さん』
嫌な予感がした。寒気が立った。
『離婚することになったんだ』
大丈夫だよ、知らせたかっただけだからと言い残したまま電話を切った。
 なんだよそれ。勝手すぎないか?
これを高嶺はたった一人で――。
テーブルから箱が落ちてきた。中身はメモだった。
兄からのメモ。兄のメモに対する返事の書かれたメモもあった。
高嶺はこのメモをずっと心待ちにして。

「離婚をするとか言って知らせたかっただけとか勝手すぎだと思う!!」
苺香は、怒鳴る。それもそうだ。
「どうしますか?未だに高嶺さんから連絡はありませんし」 
桜太は苺香を慰めながら、どうしたらいいか俺達に呼び掛ける。
「絶対、千雪を見つける!だって一人で泣いてそうだもん」
泣きそうな顔して苺香が言う。
「失礼します。はい、オレンジジュースとショートケーキ」
苺香のお母さんが運んでくる。
そうだ、ここ。苺香の部屋だった。
「どうしたの?真剣な顔して」
苺香がひらめいた顔で問い掛ける。
「ねぇ、お母さんって千雪のお母さんと仲良いんだよね?」
「えぇ、千早ちゃん(ちはや)と私は幼馴染だからね。二人が出会ったところも知ってるわ」
と得意げそうに言う。
 それって……。
「教えてそこっ!」
苺香のお母さんが加わり話し始めた。
「千早ちゃんと夏樹君は、ビルで出会ったの。千早ちゃんが仕事で失敗したとき夏樹君が優しく励ましてくれたって言ってたわ」
よく千雪ちゃんを連れてあのビルに行ってたわと懐かしそうに言った。
 それだ!!
俺は急いで家を出た。
「ぼ、僕達も一緒に行きましょうよっ!」
待ってと私は、桜太を呼び止める。
「きっと、泰陽は連れて帰ってくる。待とう――?」
お母さんに私は言う。
「タオルケットと温かい飲み物を出して」
大丈夫、今までも千雪を笑顔にできた泰陽だから。笑顔で戻ってくるよね――。

何時間、走ったんだろう?
ふと気が付くとビルの前に着いていた。
このビルの屋上に高嶺が――。
待ってろ、高嶺!
 ガチャっ!
ドアを開ける音が響く。
「高嶺っ!!!」
私はドアの方を見る。 
……綾瀬君?
どうして、ここに?
綾瀬君は真っ赤な顔して息を切らしながら近づいてくる。
「どうして、一人で抱え込むんだよ」
一人で、抱え込む……?
 そっか、聞いたんだ。
「聞いたの?」
お父さんとお母さんの離婚の事そう言おうとしたら、口元が震えてきた。
言葉の代わりに涙が溢れてきた。
 恥ずかしい、こんな所で泣くなんて。嫌だ。
唇を噛み締めて、抑えようとしたけど無理だった。
 不意に誰かの腕が私を抱きしめた。
「見てないから、泣いていいよ」
大丈夫だからと私の頭を撫でながら言う。
 優しいな、綾瀬君は。全部受け止めてくれる。
「約束して。一で抱え込まないこと、俺に助けてって言う。」
はい、約束と綾瀬君は小指を向ける。
 ゆびきりげんまん、嘘ついたら針千本のますっゆびきった。
綾瀬君。ありがとう、ここに来てくれて。

家に帰ると苺香ちゃんと奏君が待っていた。
「千雪~っ心配したんだからねっ」
泣きながら微笑んで苺香ちゃんは私を抱きしめられる。
2、2回目だ!そういえば、私。
 綾瀬君に抱きしめられ……あ。 
「体を暖かくして下さいね」
と赤くなって固まっている私に奏君がタオルケットを掛けてくる。  
「高嶺、早く。みんな待ってる」
そんなことも知らずに綾瀬君は笑いかけてくる。
 綾瀬君。君と出会ってから、太陽のような毎日だね。
 ありがとう、綾瀬君。



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