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花と太陽  遂に完結!!長らくお世話になりました。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 33ページ)
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10~ 20~ 30~

*7*

Episode6

 女子はよく分からない。
おはよー、おはよう。と学校に来たみんなが朝の挨拶をする声が聞こえる。
その時___。

  風になびくつややかな長い黒髪が目を通った。

高嶺だ___。
「あ、高嶺さんだ。おはよう!」
隣で部活のジョギングをしていた藍が言う。
高嶺は俺たちに気づくと振り向いてにこっと笑い会釈する。
「返してくれた。」
……藍にじゃねーよ。
いや、今のは本当に藍にかもしれない。ってか“今のは”ってなんだよ。
という事はいつもは俺ってことか?
俺……すごく勘違いしてないか?
 恥!!
んなの、俺らしくない。集中しろ俺!!
「綾瀬 対 城田。」
 「「よろしくお願いします。」」
とお互いに向かい合い礼をする。
「やっぱすげぇよ。綾瀬は、先輩相手に。」
ヒソヒソと周りが話す声が聞こえる。
 そうだ、考えててもしょうがない。
「はじめ。」
俺は素早く相手をかわし相手の頭を竹刀で叩く。
 面!!
バン!と体育館に鳴り響く。
「止め。赤、綾瀬」
審判の声がバン!という音に続いて響く。
 うっし。終~了、すっきりした~!!!
やっぱ、防具をきて試合練習すると悩みがぱっと消えるなぁ……。
そう考えながら防具を脱ぎ、制服を着る。
俺は自分が幼い頃から着ていた防具を見つめ撫でた。


 教室に入ったら高嶺と苺香が話しているのを見かけた。
「おはよう。」
と俺が言うと高嶺は気づいて俺の顔を見ないで言う。
「お、おはよっう……。」
苺香がニマニマと高嶺をじぃっと見つめて、高嶺を連れていく。
 高嶺……どうしたんだろう?

 そのあとも、何度も話しかけようとしたけどそそくさと話さないでどこかに行ってしまう。
……俺、もしかして!高嶺に避けられてるっ!?
俺は頭を抱えて心の中で叫ぶ。
すげぇ、ショック……。俺なんかしたっけ?
ぼうっと高嶺を見つめていると、誰かに呼ばれ廊下に出ていく。
 誰に呼ばれたんだろう……。あんな、嬉しそうな顔して。
気になって教室のドアからそっと顔を出して見ると、俺は目を見張った。
だって、だってさ!!
藍と高嶺が親密そうに頬を赤く染めて話してるから!?
「藍君、ありがとうございます。」
 藍君!!?
いや、なんで名前呼びっ!!?
「お礼になんて言わなくていいよ、千雪。」
はぁ?!今朝まで苗字呼びだったのにっ!!?
いや、なんで?なんで、藍とっ?
頭の中が真っ白になってなんで、なんでと二人に問いかける言葉しか浮かばない。
 くそっなんでだよ……!
俺はそんな二人を睨みつけながら、見ていると……。
「じゃあ、またね。藍君……。」
恥ずかしそうに名前を呼ぶ。あんなに赤らめやがって……。
俺は無意識に唇を噛み締める。
「うん、LINEで連絡してね。千雪。」
にこっと笑いかけて自分の教室に帰って行く。
 ら、LINEっ!?
藍、高嶺。お前たちLINE交換してたのっ!?俺だってLINE、知らないのに……。
 無性に怒りが込みあがってきた、藍に、高嶺に……。
“悔しさ”と怒りで俺の心は包まれた。
 ん?KUYASISA?くやしさっ?
ってか俺、高嶺と藍が恋人関係になったり、LINE交換してたりしてもどうでもよくねぇか?
俺が高嶺の事、“好き”でも何でもないんだし……。
 好き?好き、すき……。
その時、俺がババロアみたいに真っ赤になって赤面したのが分かった。
「~~っ!!?」
お、俺、もしかして……た、高嶺の事が好きなのか。
だから……。
こんなにも、こんなにも高嶺の事が気になって他の奴と話してんのが気に入らねぇのか……。
高嶺が苺香と楽しそうに話しているのをもう一度見てみると、幸せな気持ちになるのが分かった。
一方、胸がきゅ~っと締め付けられる痛みがはしった。
これが、恋か?俺は高嶺に恋してる。
それだけで胸が弾むような、苦しいような簡単には説明ができない気持ちになった。
空を見ると俺と同じで、雨にも晴れにもならない曖昧な曇りだった……。

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