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憑きもん!~こんな日常疲れます~【更新停止】
作者: むう  (総ページ数: 78ページ)
関連タグ: コメディ ラブコメ 妖怪幽霊 学園 未完結作品 現代ファンタジー 
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 閲覧数200突破ありがとうございます!
 そして第1章は、こちらで終了となります。第2章は4月から連載します~お楽しみに!
 
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 〈再びコマリside〉

 ………ホント、びっくりしたなあ。

 私はまだドクンドクンと高鳴る胸を服の上から抑えながら、家へと続く坂道を歩いている。
 右手には、スーパーのレジ袋。中にはたこ焼きで使う具材やらソースやらが一緒くたになって入れられている。

 あのあと、トキ兄の迫真の演技(?)のおかげで、私は余計な検索をされることなく大福と別れることが出来た。
 大福はすっかりトキ兄に憧れてしまったみたいで、別れ際「いやあ、ほんと、美祢さんってかっこいいな!」と手をブンブン振っていた。
「あの人に憧れて、次から髪染めてきたりしないだろうな」と苦笑いする反面、「確かにかっこ、良かったな」と納得する自分もいて。

「んじゃ、ボクもおいとまするわ。ほんとごめんな。ミネ、なんかあったら連絡しろよ。ボクが言えた話やないけどな」

 ご存知スーパー腹グロ霊能者の宇月さんとも挨拶をし、騒がしい買い物は幕を閉じた。
 思えば今日は、こいとちゃんとの出会い、宇月さんの騒動、大福との再会と、イベントが目白押しだったなぁ。
 これも全部体質が原因なら、私は〈動く死亡フラグ〉ってことか。嫌だな、こんな二つ名。

「……あのう、お二人さんソーシャルディスタンス取りすぎじゃないですか」

 と、沈黙に耐えかねて、後ろを歩いているこいとちゃんが口火を切った。
 彼女の眼の前……の人影―すなわち私とトキ兄は、一メートルほどの距離をとっている。
 お互い近くに行こうと歩幅を合わせても、無意識に体が離れてしまうのだ。

「まあ、勝手に介在してしまったうちも悪いんですけどね。いいですよ、お二人が邪魔だっていうなら出て行きますよ」
「そ、そんな!」
 ぷうっと頬を膨らませるこいとちゃんに、私は慌てて言った。

「そんなと言わないでよ。私、こいとちゃんのこと好きだよ」
 兄妹がいない私にとって、彼女の存在は本当の妹のようだった。コマリさん、コマリさんと呼ばれるたび、胸の中に温かい気持ちが溜まって行って。
 だからそんな悲しいこと、言わないでほしかった。

「そ、そうですか。あ、ありがとう……ございます」
 こいとちゃんは照れたようにうつむく。
 自分からはグイグイ行くくせに、言われるのは慣れてないらしい。ほんと、そういうところが無垢でかわいいんだよな。

 「…………トキ兄も、もう、大丈夫だよ」
 「は?」

 スーパーを出てから今までずっとだんまりを決め込んでいたトキ兄は、私の言葉で久しぶりに顔を上げた。
 相変わらず目つきの悪い相貌で、こちらを一瞥する。

 「何の話?」
 「もー、とぼけないでよ。宇月さんのときも、大福のときも。私のこと守ってくれたでしょ」

 トキ兄は一瞬なにか言いたそうに口を開いたけど、それは息となって空気に混ざる。
 彼はそっと目を伏せた。本音を隠そうとするときの、いつものクセだった。

「別に、あれは守ってない。宇月の話はどれも正論で間違いじゃなかった。コマリの同級生のときは、ああするしか方法がなかった。ただ、それだけだ」

 誤解されやすい見た目や発言をしているけど、私は知ってる。
 この時常美祢という男は、『ただ、それだけ』のことを、勇気を振り絞って実行できる人だ。
 本人にとっては些細なことかもしれない。でも私はあの時、彼に手を握ってもらったおかげで、気持ちが落ち着いたんだ。


「迫真の演技でしたね! どっかで習ってたんですか?」
「いや、あれはカン。あの数分間の思考でできることなんて限られてるしな。宇月にヘルプするのは、その、自分のプライドが許さなかったんで」

 
「あぁ……。でも、あの頬を赤らめる仕草とか、クオリティ高かったですよ。経験ある私でもドキドキしちゃいましたもん。って何そっぽ向いてんですか美祢さん??」
「うるせえ」

 見ると、トキ兄はさらにさらに私とのスペースをとり、塀と歩道ギリギリの所をわざわざ通っている。
 え、私、ついに嫌われちゃったんだろうか……? 
 っていうか、あんな塀に密着してたら服汚れるよ!


「言っときますけど、このラブリーキュートのこいとちゃんに隠しごとなんて出来ませんからね! どこに居てもあなたの運気は筒抜けなんですから。……あれ? お二人とも運気が上がってる。ふんふん……はあはあ、そういうことかあ。しめしめ」

 え、待ってこいとちゃん、ひとりでブツブツ呟かないで。しかもニンマリ笑ってるし。
 そういうことってどういうことなの??
 そしてなぜトキ兄は、あんな隅っこにいるの? か、顔も合わせてくれないし!
 
「色々と疲れたんでしょう。波乱の一日でしたし」
 こいとちゃんは淡々と答える。
 流石幽霊、私たちとはちがって、息が切れたり足取りが重いなんてことにならないのが羨ましい。

「そっか。そうだね。よしこいとちゃん! 今日は早く帰って、たこ焼き作りまくろう! ひとつだけワサビ入れて、トキ兄に食べさせたりするのもいいね、うふふ」
「おーい聞こえてんぞー」

 わいわいがやがやとお喋りをしながら帰路を辿る私たちの頭上には、満天の星空が広がっていた。



 ――第1章 END―――


 コマリ「第2章は4月1日から連載するよ!」
 美祢「第1章以上にドタバタドキドキした日常をお届けするので、楽しみにしててくれよな」
 こいと「ラブラブイチャイチャのシーンも増量予定♪」
 宇月「キャラの過去に迫るストーリーや、バトルシーンなんかも登場するで!」

 作者「それでは、次回もよろしくお願いいたします~」
 全員「ばいばーい」

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