完結小説図書館
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*45*
>>47 りゅさん
うわ! りゅさん! こちらこそ。いつも作品読ませてもらっています。ありがとうございます(泣)。これからも頑張ります。
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お久しぶりです。むうです。テスト勉強その他もろもろに追われていて
更新が止まってしまいました。残り試験科目があと一教科だけになり余裕が出来たので更新します!(相変わらずの不定期更新ですがお許しください! そして内容を作者がほぼ忘れています←おい)
余談。他サイトの小説コンテストの中間選考を突破しましたっ。
向こうもこっちもマイペースに頑張りますっ。よろ!(軽い)
それでは、約一カ月ぶりの本編。どうぞ。
都合により戦闘はまだはじまりません(始めろよ)
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〈バンside〉
やっほー。皆さんこんにちは。霊能力者のバンこと番正鷹(つがいまさたか)っす。いきなり登場して、読者さんも「え?」ってなっていると思うから、まずは簡単に俺の生い立ちについて説明していこうと思う。
あ、いちおうこれだけ言っておく。自分、マジ難しい話苦手なんで、言葉の使い方とか間違ってたらごめん。
まずは番正鷹が何者なのかって話。平べったく説明するならば、『ちょっとイカれた中学3年生』だ。こう言うと、一部の読者さんからは厨二病を疑われそうだなあ。
え、訂正しないのって? ……厨二なところも多少あるから否定は出来ねえな。
さらに単語を付け加えるのなら、うーん。
『ヤンキーぶっているイカレれた霊能力者兼中学3年生』かな。
俺の生まれた家—番家は霊能力者の家系の筆頭……。いわゆる御三家と呼ばれる立ち位置だ。
昔に比べると多少の数は減ったものの、『除霊』という職業はまだこの世に実在している。最近は変わった術式を持つ物も増えており、戦い方の多様化がところどころ見える。
実際3年前、カースト下位の家系に生まれたチビッ子術者がオリジナルの戦法を編み出し、これまで誰も到達できなかった【一カ月間の駆除数:1万】を達成した、というニュースが界隈の中で一時期話題になっていた。
これには、年々・【歴代最強の術師】を生み出してきた番家も唖然とし、そして。
『まあこっちにはマサ様がいるからな』
『霊能力者の中でも希少な〈憑依系〉。しかも、高位の霊—果てには神をも従える強力な霊力を持っておられる』
『ぽっと出がいくら威張ろうが、我々には関係のないことだ』
『ですよねマサ様!』
なぜか俺の存在を必要以上に称えた。
褒められることには慣れている。名家の長男であること、数少ない術式の使い手だということ。生まれ・能力・実績・人脈。全てが他の奴より勝っていた。
通り過ぎるものは皆自分に頭を下げたし、三つ下の妹と弟も、兄に対しては常に敬語を用いた。だから、一度として『おにいちゃん』と呼ばれたことはない。
幼少期は、特に違和感を感じなかった。称賛されるのが素直に嬉しかった。
ただ、今は違う。期待、羨望、憧れ。あんなに好きだったものが、全部鬱陶しく感じる。その理由は、彼らが自分に向けている感情の根幹に少なからず『番家の人間だから』という不毛な動機があるからだ。
もっと自由に生きたい。
誰とも比べられたくない。
決めつけられたくない。
ありのままに動きたい。
でも、言えない。
与えられたものの価値が大きすぎて、体から剥がせない。
そんな自分を救ってくれたのは、ある一人の神様だった。
決まりの多い家での生活が嫌で、俺は中学2年生の後半から下校時刻を過ぎても学校に残ることが増えた。
クラスメートにも先生にも、能力の事は秘密にしていた。とにかく、現実から逃げられる居場所が欲しかったんだ。
傍から見れば、声だけ無駄に大きいお喋りな奴に思われたかもしれないけど、こっちはその状態をずっと望んでいたわけで。
『バン! 今日帰ったら《スメブラ》しね? 俺今日塾休みなんだわ』
「だから、バンって言うなっつーの。音読みやめろよ」
アイツに出会う数時間前も、大声で叫びながら友達と帰ってたっけ。
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〈回想 3か月前〉
「えー、いいじゃん。BANGって感じでかっこよくね? いや、音読みじゃなくても普通にかっこよくね? お前の名前」
「だよなあ。ハンネでも使えるし」
クラスメートは、少し離れた場所を歩く俺に言う。
「お前も珍しいだろ。あいる」
ハンネの話題を持ち掛けたのは、クラスで隣の席の斎藤だ。斎藤藍琉(さいとうあいる)。俗に言う、キラキラネームをつけられた、チャラい性格の男子だった。
「オレはやだよ。なんか女子みたいでダッセー」
藍琉は名前にそぐわない、苛立った口調で返す。
「うちの親は、外国っぽい名前にしたら将来留学した時にいろいろと役に立つって言ってたけどさ。留学とかしたくねえし、普通に迷惑なんですけど」
「まあまあ、まあまあ」
右手を振り上げて憤慨する藍琉をたしなめたのは、前髪をセンター分けにした、黒縁メガネの少年。彼は榛原(はいばら)。学級委員長をしている、頼れる真面目くんだ。
席が近いことから、俺は二人とよくつるむようになった。血液型も性格もバラバラだが、なぜか波長が合う。不思議だ。
「そんなことでケンカすんなよ」
「「そんなことってなんだよ」」
俺と藍琉の声がハモった。
藍琉は不満げな表情になって、ムッと下唇を突き出す。
「いーよな榛原は。榛原和樹。ふつーの、ありきたりーな感じで」
ふつう。ありきたり。
………胸が、チクリと痛む。
「まあまあ、まあまあ」
「お前ずっと『まあまあ』しか言ってねえじゃんっ」
「はいはーい、いったん落ち着きましょうね斎藤くん」
「名前で呼べよ!」
「……えっ」
A型の榛原とB型の藍琉のテンポのいい漫才を後ろで聞きながら、俺はゆっくりと足を進めた。
歩道の白線だけを通る遊び。変だな、いつもはテンションが上がるのに、今日はマジでつまんねえ。
まあ、中3で『白いとこだけ通る遊びー!』と喜々として喋っていた俺にも問題はある、少しは成長したってこ――。
《おい》
ふいに、声がした。声変わり前の子供のような、高くも低くもない絶妙な音域。
バッと後ろを振り返る。がしかし、そこには何もない。道路の傍らに、木造の二階建てアパートがひっそりと建っているだけだ。
「あっれ……?」
おかしいな。変な声がした気がするんだけど。
立ち止まって首を傾げた俺を、榛原が不思議そうに見つめる。
「どしたー?」
「いやなんか、声がした気がするんだけど……」
戸惑いながら答えると、榛原は途端に「げえ」と顔をしかめた。
「おっまえ、マジでそういうのいいから。いい加減やめろよ廚三病」
「誰がうまいこと言えと。じゃなくて、本当に声がするんだって」
《おい、そこ》
また来た。脳に直接響く、謎の音声がまた。
「いや、マジで聞こえるって!」
「いい。いい! マジでこわいからやめて。殴るよ?」
「いやいやいや、ホントだってホントだって俺嘘言ってねえって」
「お前がベラベラ喋る時ってのは嘘ついてる時なんだよぉ!」
斎藤は俺の肩を両手で強くつかむ。はあはあと息を切らし、必死の形相で、こちらを睨んでくる。
「マジでやめろ」
《おーい。おーい、聞こえてんだろ人間。おーい》
彼の心からの訴えにかぶせて、甲高い声が再び鼓膜を震わせた。
(次回に続く!)