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*8*
〈コマリside〉
家に帰ると、知らない人が私の部屋でポテチを食べていた。
おかげで、散らかった自室はさらに汚部屋に……。
「あ、お邪魔してまーす」
期間限定・ポテトチップス明太子味の袋をビリビリッとやぶきながら、不法侵入者はふわふわと浮いている。
セーラー服の上に白いパーカーを羽織っている。
その身体はうっすらと透けており、まわりには白い靄のようなものが発生していた。
「え、誰?」
「ももねでーす。この味まじやばー。ぱなーい」
なにこの人。めちゃくちゃハイテンションなんですけど。
え、人って言っていいのかな? ゆ、幽霊?
でも、霊感がない自分にも見えてるってことは、やっぱり人間? どういうこと?
難しいことを考えるのは苦手。
面食らってしまった私に、同じくお菓子を食べていたトキ兄が説明してくれる。
「こいつ、浮遊霊の桃根こいと。おまえの逆憑のオーラに惹かれて、この家を特定したらしい」
「と、特定って。ストーカーじゃん!」
目に見えないから余計にこわいよ!
陽じゃなくて陰属性の方でしたか。失礼しました……ってなるかい!
置かれた状況について行けなくて、心の中のツッコミコマリとボケコマリが漫才を始めちゃったよ。
「ちなみに、恋愛の神様らしい」
「へっ?ど、どういうこと?」
「よーするに、二つのソウル持ってんだと。ウルトラソウルッ! ってやつよ」
ロ●ンスの神様……? そ、それにウルトラソウルって。
たとえがマイナー過ぎるよトキ兄。元ネタしってる私ですら、一瞬動揺しちゃったし。
「言い方ひどいですよぉ」
と、こいとは唇を尖らす。
「特定したのはリア友だって説明したじゃん~」
「リア友?」
「あ、幽霊友達でーす」
ノリが軽すぎる。あなたほんとに神様?
ここまで明朗快活な幽霊は初めて見るよ。
近寄ってくるのは、血相の悪いどんよりとした悪霊ばっかりだったし(悪い霊は霊気が強いから、たまに目に視えたりする)。
「コマリさん、悪霊に狙われてて困ってるんですよね? コマリが困る! あは、マジ卍~」
「……そう、だけども……」
最悪だ。一番いじられたくなかったのに。体質が判明してから、この名前が正に『名は体を表す』でさ。個人的に、コンプレックスになっちゃったんだよね。
こいとちゃんのテンションに乗れず、わたしは小さな声で返事をした。
「うちならその悪霊、倒せるよ」
「はあ? お前が?」
トキ兄が肩眉を上げる。
家に上がらせたはいいものの、まだ彼女のことを信用しきってはいないみたい。確かに第一印象がアレじゃ判断はむずかしいよね。
「なにその反応。塩対応かなしいなあ。んじゃあ見せたげるよ、うちのチカラ」
こいとちゃんは自信満々に宣言すると、くるりと体制を整え床に降り立つ。
そして、右手を頭上に突き出す。指先から、薄紅色の光の球が現れた。
それは徐々に大きくなっていく。静電気も鳴ってるし。
「な、なになになになに!? かめ●め波?」
「必殺★恋魂球(ラブコンボール)ですっ! あ、打たないから安心して~。指パッチンで出し入れ可能。便利っしょ? 敵に打つと数メートルぶっ飛ばせて、こっちの運気はUPしまあす」
わかりやすく説明してくれてありがとう。そしてごめん。
必殺技の名前のインパクトが強すぎて、内容が全然頭に入ってこないです(泣)!
ラブコンボールて。