コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 金色の絆
- 日時: 2011/02/27 23:50
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: Fn07flnU)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
初めまして(?)!
ルシフェルです。
はてさて……
何度目でしょうか?
消えてしまいました……
まぁ、仕方ないですよね〜
てなわけで、立て直します!
では
ようこそ、僕の世界へ________
〜CAST〜
○内ノ宮 苺 Utsunomiya Ichigo
○内ノ宮 実 Utsunomiya Minoru
○ 笹川 葵 Sasagawa Aoi
○ 笹川 純 Sasagawa Jyun
○ 五木 功輔 Itsuki Kousuke
○ 寿 由梨 Kotobuki Yuri
○ 天堂 鏡介 Tenndou Kyousuke
○ 中城 知念 Nakagusuku Tinenn
〜御客様〜
☆花香様 ☆明衣様 ☆蒼空様 ☆柚葉(歩癒)様 ☆魅音様 ☆Christ様
〜目次〜
〜プロローグ〜>>1
〜1〜>>2 〜10〜>>11 〜20〜>>21 〜30〜>>105
〜2〜>>3 〜11〜>>12 〜21〜>>22 〜31〜>>114
〜3〜>>4 〜12〜>>13 〜22〜>>23〜32〜>>120
〜4〜>>5 〜13〜>>14 〜23〜>>36
〜5〜>>6 〜14〜>>15 〜24〜>>40>>41
〜6〜>>7 〜15〜>>16 〜25〜>>49
〜7〜>>8 〜16〜>>17 〜26〜>>58
〜8〜>>9 〜17〜>>18 〜27〜>>72>>73>>74
〜9〜>>10 〜18〜>>19 〜28〜>>83
〜19〜>>20 〜29〜>>99
〜番外編〜第一弾>>65>>66
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- Re: 金色の絆 ( No.18 )
- 日時: 2010/01/11 22:34
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
〜17〜
「由梨〜? 今日は一緒にいんの〜?」
「うーん……今日はまだ残ってたいかも……純は?」
「まぁ……由梨がそういうなら……」
「ありがと。純」
由梨……いつもになく元気がないように見える。
何があったの? どうして話してくれないの?
聞きたいことはたくさんある。でも、聞けない。理由は…恐いから。
知ることを恐れているから。
葵と同じような関係になることが
とても恐いから。
葵のようにしたくない。
葵と同じ思いをさせたくない。
葵と同じ感情を抱かないでほしい。
葵みたいにわたしを一人にしないでほしい。
葵のようにしてほしくない。
葵がわたしを否定するように、彼女にもわたしを否定してほしくない。
葵。
葵。
葵。
葵に否定されたくなかった。
葵。
葵。
葵。
葵に嫌われたくなかった。
葵。
葵。
葵。
葵と一緒にいたかった。
葵。
葵。
葵。
葵はどうしてあの時私にあんなことを言ったの?
「純? どうしたの?」
由梨の声で我に返った。
「う、ううん。なんでもないの。少し疲れてたみたい。由梨も……顔色悪いよ?」
「……あ、私? 私は平気よ?」
反応が遅い。寝不足+ダイエット。多分そうだと思う。
あの痩せ方は食事制限、危険なダイエット法だ。
なぜそこまでするのか……それなら分かる。
五木功輔だ。
全ては彼のため。
13秒で走ることができないから、せめてかわいくなろうとする、
純粋な乙女心。
わたしには、ない。
でも、そこまでする必要はないと思う。
確かに由梨は痩せていわけではないけれど、雰囲気が穏やかで、そこに憧れる男も多い。
由梨は少しやりすぎている。
すべての原因は……
内ノ宮 苺。
彼女が断らなければ……
彼女が良いよといえば……
そう考えるだけで怒りがわいてくる。
だから、わたしはいじめに加わった。
すべての執筆は、わたし。
でも、わたしは執筆しただけ。
実際にやってはいない。
だから、いじめをするのは今日が初めてということだ。
「はじめるよ?」
「あ、うん」
わたしが答えてから、少しの間いじめをいつもする人……
つまり、わたしにっとっては物語のCASTが話していた。
聞き取れたのは「あいついつもよりいそいでない?」という言葉だった。
それを聞いて彼女を見た。
確かに急いでいるようにも見える。
「ま、いきますか」
CASTのリーダーが
先頭になって歩き出した。
わたしと由梨はその後をついていく。
「なにやってんの?」
「……帰りのしたく」
彼女はリーダーを一瞥して言った。
「今日は急いでるんです。邪魔しないでくださいますかね?」
少しイラっときた。
かなりの人数に囲まれても、物怖じしない様子に。
彼女の強い意思に。
リーダーが頬を叩いた。
数発叩くと、彼女はバランスを崩した。
そのとき、彼女のポケットから何かが出た。
わたしはそれをすっと拾い上げると、急に変な気持ちが湧き上がってきた。
なんだか分からないけれど、純粋できれいなものではない。
汚く、醜いものだ。
「これなぁに?」
「それっ!!」
彼女は慌てていた。
わたしは気持ちが舞い上がった。
気分がよかった。
「手紙ね。読むよー!」
「純読んでー!」
まわりが読むようにと促す。
「『今日の4時、教室で待ってます。
内ノ宮なら多分察することができると思う。
これがどんな意味を示すか。
だから、望みがなければ、帰ってくださって結構です。
待っていてくれる事を願ってます。』」
「ラブレターじゃん!」
「あんたでもくるんだねー!」
そういうとまわりは笑った。
彼女は青い顔をしていた。
帰り支度をしていたことから、断るつもりだったのだろう。
「純! 相手は?」
「そうだよ! 相手は?」
まわりが迫ってくる。
わたしは自分が注目されているような気がして、とても気分がよかった。
「相手は〜……」
わたしは続きを言うことができなかった。
こんなことってあるのだろうか?
「純〜?」
まわりが不思議がっている。
そのときドアのところで声がした。
「俺だよ。その手紙を出したのは、俺」
その場が凍りついた。
由梨は今にも倒れそうだった。
まったく、なんという皮肉だろう。
今日じゃなくてもよかっただろうに。
なぜ、今日なのだ。
なぜ、由梨のいる今日なのか。
でも、そんなことを彼に聞いたって無駄だった。
だって知らないんだ。
いじめのことを。
ここにいる人以外は。
勿論、この場に来た彼も。
「い……五木……?」
由梨の涙声に似た震えた声で彼……五木功輔に聞いた。
ちょうどそのとき、四時を知らせる鐘が鳴った。
- Re: 金色の絆 ( No.19 )
- 日時: 2010/01/11 22:36
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
〜18〜
わたしは、神から罰を受けました。
神はわたしの希望。
でも、神はわたしを見捨てたのです。
神はときに残酷です。
「い……つき……?」
「お前ら何やってんの?」
心が……
わたしの心が崩れていく。
「え……じょ、冗談でしょ? 五木……」
周りの子が驚いて聞く。
「……何が? 俺が内ノ宮のことを好きなこと? それとも……」
五木は周りを見渡しながらいった。
「これを見てたこと?」
そういって、携帯電話を見せた。
その画面は、さっきまでの私達と内ノ宮さんのやりとりがうつっていた。
「え……ちょ、やめてよ! 五木! 消して!」
「何で? お前らがやったんだろ? あ。これ動画だから、明日声だけでも放送で流そうかな」
「五木!」
まわりが悲鳴にも近いような声を上げた。
わたしは五木の顔を真正面から見れなかった。
「五木はさ、内ノ宮さんが……好きなの?」
周りの叫び声の中、小さな声で聞いた。
聞こえるか聞こえないかも分からないぐらいの小さな声で。
「うん」
五木は答えてくれた。
あのときみたいに。
わたし、五木のことが大好きなんだよ……
わたしの声を聞いてくれるのは五木だけだったから……
どんどん想いが膨れ上がっていく。
風船みたいに。
気が付いたら、想いを口にしてた。
「……好き……だったよ……」
蚊の鳴くような声で。
涙を我慢して。
五木……聞こえた?
わたしの声。
「……それってさ、冗談か何か?」
わたしは首を横に振った。
「でもさ、本当なの? そういう風には見えないよ?」
五木にわたしの声は届いてた。
でも……想いは届かなかったんだ……
「冗談に、見える?」
静かな声がした。
私は顔を上げた。
五木は驚いたようにいった。
「内ノ宮……」
「冗談に見えるんですか? 貴方には」
「…………」
「貴方が一番分かってるはずですよ? 彼女のこと」
「うん……知ってたよ。寿が俺のことが好きなんじゃないかってことは。噂でね」
「……そうなんだ」
「……うん。知ってた。でも、俺は内ノ宮のことが好きだったから……」
「五木が内ノ宮さんのことが好きな理由ってさ、13秒台だから?」
五木はゆっくりといった。
「……違うよ。それはほとんど関係ない」
……うん、知ってたよ。
五木はそんな単純な理由で人を好きになるとは思わないから。
「じゃあ、なんで?」
「……一緒にいて心地よいから」
「……うん」
なんとなく分かるよ。
内ノ宮さんは人と一緒にいないけど、とても心が綺麗で、いい人だって思える。
一度話して、分かった気がする。
彼女は、心に深い闇を抱えてる。
それでも……ううん、それゆえに彼女はきれいなんだ。
「ねぇ、五木」
「なに?」
「きちんと告白してもいい?」
「え?」
「へんじもわかってるけど……でも、きちんとしたいの」
「……うん」
周りはとても静かだった。
さっきまでのやり取りが嘘のように。
「五木……好きです」
一瞬の沈黙。
「……ありがとう」
五木はそういって笑ってくれた。
「……わたしさ、あきらめないよ?」
「報われないかもしれないけど」
「それでも、好きでいさせて」
「……寿もさ、もっと良いやつを好きになればよかったのにな。寿自身が良いやつなんだからさ」
涙があふれた。
自分のことをそうやって言ってくれる。
やっぱり五木のこと、大好きだよ……
「えっ……や、あの……」
五木はわたしがいきなり泣いたことにびっくりしたらしい。
おろおろしながら言い訳を探してる。
わたしは自然と笑っていた。
「いいの……五木のせいじゃないから」
「えっと……」
五木はまだ困惑中らしい。
泣いたり笑ったり、面倒くさいやつだ、とか思ってんのかな……
そういえば……
「内ノ宮さん?」
帰ろうとしていた彼女に声をかける。
「……はい?」
「あ、あのさ……」
「はい?」
ゆっくりと内ノ宮さんに近寄る。
「友達に……なってください」
「……は?」
そりゃ、は?っていいたくなるよね。
仮にもライバルがそんなこと言い出したらわたしだって動揺するし。
「五木は内ノ宮さんのことが好きなんだけど、わたしも内ノ宮さんのこと好きなんだよね」
涙は止まっていた。
「……」
「だめ……かな?」
「由梨!!」
周りがうるさい。わたしは彼女と話しをしてるのに。
わたしは周りの人を睨んだ。
「っ……」
周りは静かになった。
彼女はゆっくりと口を開いた。
「私は嫌です」
そう一言言った彼女の目には強い決意があって、わたしは少し困ってしまった。
彼女はわたしの顔を見ている。
凛とした目で。
「それでも……それでもわたしは……諦めませんから」
「……」
彼女は何かをいおうとしたが言えなかった。
彼女が口を開こうとしたときに、扉を叩く音がしたからだ。
みんなの視線がそっちに集まる。
「第一下校時間は過ぎています。用のない生徒は残ってはいけないはずですが?」
「ご、ごめんなさい!!!」
生徒会長だ……生徒会長の天堂鏡介。
生徒会長は、ある意味校長よりも力を持っている。
しかも生徒会長はとても強い。
この学校の中で一番。
生徒会長に逆らったら、終わり。
この学校ではもうやっていけない。
でも、まさに今、わたしたちに終わりが近づいてる。
ここでは規律を破るなんて死に等しい。
優しそうな笑顔で話しかけてきた。
「貴方たち、知ってますよね?規律を破った人が……」
「天堂君」
内ノ宮さんが生徒会長の名を呼んだ。
彼の名を呼ぶなんてただの命知らず……
って、そんなことを考えてる場合じゃない!
「内……」
「! い……」
生徒会長が内ノ宮さんをみて驚いたように口を開いた。
「何でここに……」
独り言のように小さい声だった。
普段の生徒会長とは違う雰囲気みたいに見える。
まぁ、普段一緒にいるわけじゃないし、話すのも初めてだけど……
さっきまでの雰囲気とは明らかに違う。
「あぁ……もう。予定が狂いすぎてる。でも、まぁ仕方がないな」
生徒会長はちらっと内ノ宮さんをみてから言った。
「君がいるなら見逃してあげるよ。以後気をつけなよ」
周りはとても静か。
生徒会長は少しいらっとしたように言った。
「返事は?」
「はい!!!」
その場にいた、内ノ宮さん以外の人が声を合わせていった。
殺されなかった……
今日のことは他言できない。
だから、生徒会長が恐いって言うのは噂となる。
普段は優しいから、噂を聞いてもたいていの人は信じない。
でも、こういうのをみると信じざるを得なくなる。
生徒会長は仕事を終えたとでも言うように教室から出て行った。
内ノ宮さんが数秒後に帰っていった。
わたしは彼女に話すことがあったのに呼び止めることができなかった。
どうして彼女は彼のことを止められたのか。
その疑問だけがわたしの頭の中を占領していた。
「ゆ、由梨……? 帰ろう……? 一緒に帰っていい?」
「あぁ、うん。もう二度とあんなことしないでね? わたしは頼んでないんだから」
「あ、う、うん……」
「早く帰んないと今度は殺られるよ?」
「そ、そうだね!」
「早く帰ろう!」
みんなが教室を出て行った。五木も教室から出て行った。
教室は夕陽で茜色に染まっていた。
とても綺麗だった。
でも、その様子が少し寂しそうに見えて、内ノ宮さんと重なった。
彼女のことは全然知らないけれど、これから知っていくから。
だから、決して一人だと思わないでほしい。
よく分からないけれど、心のそこからそう願っていた。
- Re: 金色の絆 ( No.20 )
- 日時: 2010/01/11 22:37
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
〜19〜
「ただいま」
苺が帰ってきた。
「おかえり、苺」
靴を脱いでリビングに歩いてくるのが分かる。
その足取りはどこか軽いような気がする。
きっと問題が解決したのだろう。
「実?」
笑いながらリビングに入ってきた。
笑いながらきたってことは予想は当たっていたらしい。
「何? 苺。何か良いことあった?」
「んーとね、厄介ごとがひとつなくなった!」
「そうなんだ」
僕は笑って頷いた。
よかったな、って思う。
苺は僕が17年間大切に育ててきたんだ。
いわば僕の宝。命よりも大切だ。
その『僕の宝』に傷をつけられたら困るし、傷をつけた人を殺しに行くと思う。
それほど僕には大切なのだ。苺が。
今までだっていじめられそうになったことはある。
ただ、僕がその芽をひとつずつ丁寧に摘み取っていたから大事にはならなかった。
苺も知らなかったし……
でも、今回のは違う。
苺も17歳、高校二年生だ。
自分の問題は自分で解決できるようになった。
僕がするべきことは、そのことに誰よりも早く気づき、見守ってあげることだ。
手を差し伸べることだけが大切にしているって意味じゃないことを僕は知っている。
勿論、僕だって心配だ。
もし苺に何かあったら……そう思うと助けてあげたくなる。
助けることが苺にとって一番酷な事なのに。
これから先も、必ず僕が守ってあげられるわけじゃない。
だから、苺も知らなくちゃいけないんだ。
世の中はこんなにも汚くて澱んでいる事を。
「そうそう、実」
苺が突然思い出したようにいった。
「あのね、今日、会長に会ったよ」
会長……? もしかして……
「天堂……鏡介……」
「うん。学校で会うのは久しぶりかな……」
「何にもされなかったか!? 鏡介のやつ、苺に何かしたんじゃ……」
「実、鏡介って呼んでたの?」
あ……またやってしまった……
「昔の癖で……な」
「そっかぁ、そういえば三年たったんだねぇ……あの日から」
「あぁ、三年もたってたんだ」
三年。
そんなにも長い時間が経過していたんだ。
中学二年生のときから。
あいつにとってこの三年はどんなものだったのだろう。
正直、気にしてはいけないんだろうけど、やっぱり気になる。
そりゃあ、元とはいえ『親友』だったんだから、仕方がないだろう?
僕らにとっては親友なんて数えるほどしかいないんだ。
多分三人。
内一人は天堂鏡介。
中学二年生になって三度目の転校先にいた。
残りの二人も。
あの時は助かった。感謝してる。
素直にそう思えるのもあいつらだけだ。
勿論苺にとっても。
まぁ、鏡介にはあのあと、……まぁ、一種のライバル心を燃やされていたのだが、
今もそのままだろうな。
そのまま放っておいたから。
勿論、あいつの気持ちが変わってなかったら、だけどな。
「実ー? なんか変だよ?」
「いや、別に変じゃないけど……」
「そ? なら良いんだけどね」
「苺。お腹すいたでしょ?」
「うん!」
「ご飯、食べようか」
「はーい!」
苺はニコニコしながら食卓の席に着いた。
僕はその様子を見ながら、『あの時』をこえたからこそ、
今の苺があるんだと思えた。
まぁ、何はともあれ、苺が無事で本当によかったって、
心のそこから思った。
- Re: 金色の絆 ( No.21 )
- 日時: 2010/01/11 22:38
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
〜20〜
あれから一週間たった。
外は大雨だった。
内ノ宮苺はまた内ノ宮実と一緒にいる。
でも、やっぱり変わってしまったものが、ある。
「内ノ宮さ〜ん♪おっはよ〜ん♪」
「………………はぁ、お早うございます」
彼女はなんだかとても面倒くさそうな顔をして声をかけた少女、寿由梨に返事をした。
「ね〜、あのね〜」
「…………何ですか? 今実と話してるんですが……」
「あ、ごめんね〜」
由梨は私たちのほうを向かない。
やっぱり、少し気まずい。
由梨の好きな人を知ってしまったし、振られたのだって、その場で見てしまったから。
「内ノ宮!」
「……はい?」
少年が一人その輪に入る。
彼こそが由梨の好きな人、五木功輔だ。
「五木じゃ〜んっ! おっはよ〜ん♪」
「おはよ、寿」
「……で? 何ですか?」
「苺、そんな冷たくしたらかわいそうでしょ? 仮にも……」
内ノ宮実が口を挟む。
‘仮にも……’
続きは予想できる。
‘仮にも’苺のことがすきなんだから。
そういいたいんだ。
彼女の存在のせいで、わたしはあの輪に入れないでいる。
内ノ宮実は五木に意味ありげな笑みを向けてからこっちを見た。
正確にはわたしの近くにあるドア、か。
丁度、葵が教室に入るところだった。
たまたま、そっちを見てしまったので葵と目が合ってしまった。
わたしはすぐに目をそらした。
「……純?」
葵が意味がわからない、とい顔をしてわたしに問いかける。
「……あおぃ」
「笹川くーん! おはよー!」
わたしが葵に向かって声を発するのとともに由梨も声を出した。
葵は由梨たちのほうを見た。
わたしの声は
届かない____
「あ、ごめん。純、なんかいった?」
「……」
わたしは黙って目の前にいる”仲間”に話しかけた。
葵は小さなため息をついて由梨や内ノ宮苺のほうへ歩いていった。
わたしは泣きたくなるのをこらえた。
遠くで葵の声がした。
「おはよう、寿さん、五木君、実君……苺ちゃん」
「おっはよ〜ん♪」
「おはよーございます」
「……おはよう」
「…………お早うございます」
「とりあえず、そこどいてくれる? 五木君」
「…あぁ、悪い」
「いーよ、別に。大した事じゃないしね」
「ありがとな」
彼女たちはまた話している。
わたしは遠くから見つめるだけ。
わたしも由梨みたいに素直になっていれば、あの中にいたのかな……
今更そんな事言ったってしょうがないけど、やっぱりそう思ってしまう。
あの中にいる葵はたまに楽しそうに笑う。
今までは私以外の人に心のそこから出る優しい笑いを見せた事がないのに……
葵までわたしから離れていっちゃった……
本当に一人になってしまったのかもしれない。
この一週間、葵とは必要最低限の会話しかしてない。
葵……
葵、葵、葵!!
やだよ!!
葵だけはわたしの味方じゃなかったの!?
葵、葵、葵、葵、葵!!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!
葵がいないと駄目なんだよ……
わたしは。
本当に葵が必要なんだ。
味方が……葵がいるからわたしはあの事ができたし、やろうと思った。
葵ならって。
甘えてたんだ。
葵の優しさに。
わたしは、甘えてしまったんだ。
ごめん、ごめんね、葵。
わたし、きちんと自立できるように頑張るから……
努力するから……
だから、もう少し一緒にいてよ……
「…………っ葵ぃ……!」
わたしは俯いて、葵の名を呼んだ。
とても小さな声だった。
小さくて、小さくて、弱々しかったから、
わたしの声は誰にも聞かれずに、
わたしの泣き声や涙もすべて
暗くて底のない闇に飲み込まれていったんだ。
- Re: 金色の絆 ( No.22 )
- 日時: 2010/01/11 22:40
- 名前: ルシフェル ◆gB/tgam99I (ID: jd0mxmk6)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.php?mode=view&no=10952
〜21〜
純がおかしくなったのは、一週間前。
いつものように学校に帰ってきたと思えば、その後自分の部屋へ直行。
まったく何なんだ。
でも、純は何か隠してるんだろうし、それを深く知る必要はないと思うから俺からは聞かない。
もしも、俺が純にそんな事を聞いて、あの事を教えろっていわれても困るからね。
そういや、前にもこんな事あったな……
いつだっけ?
あぁ……小学生に上がる前か。
純が隣の家にボールを投げちゃって、親に怒られるのが嫌だから黙ってたんだ。
あの時は本当に苦労したなぁ……
でも結局、母親が純を丸め込んで……
って、何考えてんだよ、俺。
親なんて……何考えてんだよ。
母親?
ふざけんじゃねぇ。
あぁ……まったく、何なんだよ。
外は大雨だし、昔の事は思い出しちゃうし、本当何なんだよ。
「……笹川、聞いてる?」
俺の小さなため息を聞いてか、今まで話していた五木功輔がこっちを向いた。
それにつられて寿由梨、内ノ宮実、内ノ宮苺までもがこっちを向いた。
「……聞いてはいなかったけど、ずっと見てた」
「? 何を?」
「……苺ちゃん」
「はぁ!? お前、まさか……」
後ずさりする五木功輔。
丁度、その近辺に机があったので、運悪く足をぶつけてしまった。
「っいってぇぇぇぇ!!!???」
「……大丈夫?」
いきなり大声を出されると、流石に驚いてしまう。
っていうか、自分で下がっときながら叫ぶのはあんまりじゃないか?
それに”苺ちゃん”って言っただけなのに、反応が良すぎな気がするんだけど……?
俺はただ、校庭を見ていて、その方向に苺ちゃんがいただけなんだけど……
まぁ、あの状況じゃ、話したところで分かってくれるとは思いにくいが……
「え? え? まじで? うっそ、え? 本気で?」
「……何が?」
「いや、あの、え? や、まじで?」
「……五木。笹川、困ってんじゃん。五木がそうなのは彼知らないんでしょ? それとも、何? ば
らしたいの?」
見るに見かねて、寿由梨が助け舟を出した。
「……そ、そうだよな……いや、ばらしたくないです……」
「それなら、黙ってなさい」
「……ハイ……」
五木功輔は顔を赤くしながらチラッと苺ちゃんを見て俯いた。
……なぜだろう?
全然面白くない。
今までならそういう光景を見ると面白い事になってんな、とか思ってたけど、今のは違う。
まったく面白くない。
自分でもわかんないけど、腹が立つ。
まぁ当の本人が完全無視じゃあ、多少の同情はしてあげるけどね。
とまぁ、あーだこーだ話しているうちにチャイムが鳴り、各自席に着いた。
もちろん純も戻ってくるわけだが……
こっちを全然見ようとしなかった。
……俺、マジでなんかやったかな……
うわ、だんだん心配になってきた……
うわー……
やっべー……
って……ん?
「な、何? 苺ちゃん?」
苺ちゃんがこっちを見ていた。
「……別に」
そういって彼女は目をそらしたけれど……
「……?」
気になる。
てか、何でこっち見てたの?
っていう、ふっつーの会話さえもためらっちゃうんだけど?
何でかなぁ……
そんな事を考えていると、先生が教室に入ってきた。
「おっはよーございまーすっ♪」
今、このテンションうざいな……
ぶっちゃけね。
「もー。みんな元気ないなぁ」
怒りながら(?)教壇へとあがる。
「えーっと……あ、そうそう」
……何か忘れてたんですか? 先生。
一応ツッコミをいれる俺。
「6校時の総合は地域清掃ボランティアの班決めするから、ある程度決めといてね〜」
「先生ー! それって何人班?」
「何人班ですかー? でしょー。5〜6人班がいいんだけど〜」
って、結局答えるんかい。
「男女混合班ー? ……ですかー?」
「基本的にはそれがいいんだけど……」
「「「「「「「男女混合、大賛成!!!!!」」」」」」」
……うっるせー……
いや、本当に。
5〜6人ねぇ……
苺ちゃん&実君は決定だろうな。
五木功輔も多分こんなか入るんだろーな。
つーことは、寿由梨もかな。
俺もこんなか入れてもらうか。
他のやつらはあんまり好きじゃないからな。
……純はどうするんだろう?
友達と一緒にやんのかな……
まぁ、好きにすりゃいいか。
俺と一緒にいなくちゃいけないっていう決まりはないし、そもそも俺には関係ないし?
「それじゃ、今日も勉強頑張ってね〜」
そういって先生は消えた。
そのとたん、俺の周りに人だかりができた。
授業が始まるのには、あと5分はあるし……
「笹川君〜♪一緒にやらない?」
「ちょ…やめてよっ! 笹川君は私とやるんだからぁ!!」
「何言ってんの!? うちやし!!」
「いやいや、私だから!!」
……なんでまた……面倒な事をしだすかなぁ……
丁度、前を向いたら、苺ちゃんを見ている五木功輔と目が合った。
……いい事考えた……(俺にとってね)
「……ごめんね。俺……」
眠そうな苺ちゃんの手をとって俺のほうに引き寄せた。
「苺ちゃんと行くから」
「はぁ!?」
実君の叫び声。続いて女子の声。
「「「「「「「えぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇ!?!?!?!?!?」」」」」」」
放心状態の五木功輔。
それを生き返らせている寿由梨。
いらいらしたような目つきで見てくる実君。
驚いたように見てくる純。
は? 何やってんの? え? これってどういうこと? っていう目で見てくる苺ちゃん。
「ね?」
「……”ね?”じゃねーよ!!」
「やだなぁ……いいじゃん。ね? 苺ちゃん?」
「……実がいいって言ったら、別に」
実君かぁ……
許してくれなさそー……
「……いいよ。別に」
「……え?」
「だから、一緒に行くんだろ? あのときの借りもあるからな。今回だけ許してやるよ」
「あのとき……」
あぁ…苺ちゃんを家に連れてったときのことか……
「……実君って、律儀だよね」
「……」
睨まれた。
丁度そのときにチャイムが鳴った。
女子たちは自分の席に戻っていく。
男子も1時間目の準備を急いでしている。
純の事もあるし、なんか大変だなぁ……
まったく、なんなんだよ。
でもまぁ、あんまり楽しい事ばっかりじゃなかったけど、
『結果よければすべてよし』かな。
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