コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 雪の降る町 【完】
- 日時: 2012/02/12 21:08
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
初めましての人がほとんどだと思います
リオです♪
小説初挑戦&のろまで短気なので、更新は亀以上に遅いです…
気長に応援していただけるとありがたいです
登場人物
・濱里有咲 Hamazato Arisa
主人公。恵美奈の幼なじみで親友。
友達思いだか、ネガティブ思考になることが多い。
・平瀬恵美奈 Hirase Emina
有咲の幼なじみ。三歳の頃にこの町に引っ越してくる前
に、厳しい過去を経験してきた。
・高橋美咲 Takahasi Misaki
有咲と恵美奈の友達。拓海の元カノ。
友達思いで、周りの事を考えるのが上手い。
・渡辺拓海 Watanabe Takumi
美咲の元カレ。恵美奈への浮気が原因で別れる。
有咲や恵美奈とも友達。
無愛想だが、暖かい心を持っている。
お客様
ちくわ大明神様、みつ様、るいーじ様、恋歌様、スポンジ・ボブ様
Thank You!!
2011.2.12 修正完了
- Re: 雪の降る町 ( No.31 )
- 日時: 2012/02/11 19:37
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
走ってやっとの思いで公園に着いた時、拓海はもうすでにそこで待っていた。授業を抜け出してまで来てくれた。
「拓海…お待たせ」
申し訳なさそうにそう言うと、拓海はいきなり本題をきりだした。
「…なぁ、お前は、なんで恵美奈がこんな事したかわかるか?」
「え…わかんない」
拓海は一度目を伏せると、こう言った。
「…恵美奈には、眩しかったんだよ」
「…えっ」
「恵美奈には、いつも明るくて楽しそうに笑ってるお前が眩しすぎたんだよ」
「……何それ」
正直、自分は比較的物事を深く考えすぎてしまう方だと思う。ポジティブ思考が苦手だ。だから、人からそんな風に思われるなんてあり得ない。
「恵美奈は、自分とお前をつい比べてしまった時に、お前が眩しすぎた。お前が楽しそうに笑ってるのが羨ましかった。お前だけ楽しそうなのが嫌だった。だから、あんな事をしてしまった」
「………」
「恵美奈から聞いたと思うけど、あいつの過去は全部本当だよ。病気は…持ってないけどな」
無意識に頬を涙がつたっていた。
恵美奈だって…眩しかったよ。几帳面で、可愛くて、優しくて、頭もよくて。なんの取り柄もない私なんかより、ずっとずっと輝いてたよ。
なのに…恵美奈はこんな事が理由であんな事するはずがない。
恵美奈は、そんなひどい人じゃない。
「実はさ、俺も恵美奈とちゃんと話した事がないんだ。お前を騙してたのも、知らなかった。俺もお前みたいに、騙されてた」
「えっ……」
ウソ…そんなのあり得ないよ…。三人で私を騙してたんじゃないの?
「だから、今のは全部俺の推測でしかないけどな。お前も自分の事ばっかじゃなくて、周りの事もちゃんと考えてみろよ」
拓海…あんたはどこまで優しいんだよ。
「俺は美咲が彼女だったからか、お前より情報が早かった。でも、遅かれ早かれ、俺には最初から協力してもらうつもりだったらしいし、目的はお前を騙す事だからな」
「………」
「恵美奈は残される方の悲しみを知ってる。それに母親から、やりたい事は思う存分やれって言われてたからな。あんな事があいつのやりたい事だとは思わねーけど…」
拓海はこう言い終えた。全部、全部伝わった。
拓海はすごい。自分だって騙されてたのに、こんなに考える事ができる。周りをみる事ができる。周りの人を、救おうという、気持ちがある。
私は、どうだったのかな。ホント、バカだったよね…。
「拓海、私ね…」
そうきりだしたとき、私の視線の先に見えたのは
「……恵美奈」
- Re: 雪の降る町 ( No.32 )
- 日時: 2012/02/11 20:19
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
「拓海…バカッ!」
突然現れた恵美奈は、拓海を見たとたん、殴った。拓海は信じられないという表情で恵美奈を見ている。
「え…」
「私がそんな事思うとでも思った!?ホント、バカじゃないのっ…」
「…恵美奈?」
恵美奈は私が声をかけようとすると、キッと鋭い目で私をにらみつけた。
「もとは…もとは全部あんたのせいじゃない!あんたさえいなければ…」
ナニ?ドウイウコト?
「あんたが何もかもうばったんじゃないっ!私の大切なものを、何もかも…」
「え…」
「おとなしく黙ってなさいよ!私のいうこと、ちゃんと聞けよ!」
何よ…
ずっと一緒にいたのに、変わってしまったのは恵美奈の方じゃない。
ずっと信じていたのに、裏切ったのは恵美奈の方じゃない。
私を深い闇の底に突き落としたのは、恵美奈…
なのに今更何を聞くの?
私はこれ以上はないほど落ち込んだのに…
「拓海、あんたも聞くの?」
拓海は一瞬暗い目をした後、小さな声でこういった。
「……聞くよ。」
思えばあの時、私は想像以上に冷静だったのかもしれない。
普通は誰もが取り乱してしまうんだろうな…恵美奈みたいに。
しんしんと降り積もる雪の中、冷たく、重い空気が張りつめていた。
恵美奈が電話で美咲を呼び出した。
真っ白な公園に、四人の人影が見える。
みんな、そろった。
静かな公園に恵美奈の声が響く。
少しは落ち着きを取り戻したのだろうか。その声はまるで別人のように静かだった。
「目を閉じて。今から有咲が鍵をしている記憶の扉を開けます。今からちょうど14年前。私達は、一歳だった…」
- Re: 雪の降る町 ( No.33 )
- 日時: 2012/02/12 08:51
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
「私達は一歳。私はこの町にはいなかった。有咲も、いなかった。」
え……?どういうこと?私はずっとここにいたんじゃないの?
「私のお母さんは病気だった。余命12ヶ月を告げられ、必死に生きてた…。あの時私は、神奈川の相模原に住んでた。…有咲、この名前に覚えはない?」
あ…聞いた事ある…。
なんだっけ?
目を閉じたまま、私は何も答えなかった。
「有咲もその頃、相模原にいた。覚えていないだろうけど、私と有咲は仲がよかった…。病院にも、よく一緒に行った。そしてなぜか、有咲は私のお母さんを、憎んでた。有咲は忘れても、私は一生忘れない」
あ…
頭の中で、何かがカチャリと音をたてて開いた。
これは…私が鍵をしていた記憶の扉だ…
あの頃の記憶がまざまざとよみがえってくる。
「…ゴメン恵美奈…私、全部思い出した…」
そうだ、私はとんでもない事をしでかした。
人間として、最低な事を。
「私は、恵美奈の母親を殺したんだ」
- Re: 雪の降る町 ( No.34 )
- 日時: 2012/02/12 08:54
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
私はそっとみんなの様子を伺った。明らかに驚きを隠しきれない様子だ。恵美奈だけが一人うつむいていた。
「ゴメン恵美奈、ホントにゴメン…」
「謝ってすむ問題かよっ!人殺しなんだよ!?何度謝ったってあんたは一生人殺しのままなんだよ!?」
冷静さを失った恵美奈は、涙を流しながら叫び続けた。
誰も何も言わなかった。
…誰も何も言えなかった。
後悔だけが波のように押し寄せてくる。なんてことをしでかしたんだろう。これに比べれば、恵美奈のした事なんて月とすっぽんじゃない。
私は幼かった。物事をちゃんと考えるのには、幼すぎた。
恵美奈の母親は、恵美奈に厳しかった。恵美奈にだけ厳しかった。
私はそんな恵美奈の母親に、苛立っていただけなのかもしれない。
母親は恵美奈に立派な人に育って欲しかった。だから甘やかさなかった。
恵美奈も幼心にそれをわかっていた。
バカな私だけが、わかっていなかった。
だから、いつかテレビでやっていた、飲めば死ぬほどの威力のある薬品を点滴の中に混ぜた。
そして恵美奈の母親は、雪の中、旅立っていった。
私は許されない事をした。許してはならない事をした。
たとえ幼くても。
私は人殺しだ。
その後すぐに後悔し、その記憶にふたをした。そして扉をしめ、鍵をかけた。
何もかも忘れようとして、この町に引っ越してきた。
何もかもきれいに忘れて、充実した毎日を送ってきた。
このまま思い出さない方が良かったのかもしれない。
でもこれは、思い出すべきだった。
決して忘れてはいけない。
恵美奈は私を恨み続けるだろう。
それは仕方のないことだ。
一生治らない傷を、恵美奈の心につけてしまったのだから…
- Re: 雪の降る町 ( No.35 )
- 日時: 2012/02/04 21:03
- 名前: リオ (ID: IRDFwr.p)
私はうつむいていた。一生懸命涙をこらえていた。ここで泣けないじゃない。すべては私のせいなのに。
長い長い沈黙。
最初にその沈黙を破ったのは、美咲だった。
「…有咲、こっちこそ…ゴメン」
「えっ……」
「確かに有咲は悪い事をしたよ。だけど、私だって恵美奈と一緒に有咲を騙してた。何も知らないのに、その企みにのってしまった私も悪いの。だから…ゴメン」
謝られるとは思っていなかった。すべて自分が悪いのに。過去を話した事により、引かれ、距離をおかれるとばかり思っていた。
正直、嬉しい。
「美咲……ありがとう…」
次に口を開いたのは、拓海だった。
「改めて言わせてもらう。…悪かった」
「なんで!?なんで拓海が謝るの!?何もしてないじゃない…」
「たとえ知らなかったとはいえ、俺はお前を騙してた。お前を、傷つけた…。ゴメンな」
涙が溢れてくる。もう、どうしようもない。
悲し涙でも、悔し涙でもない。ただ単純に、嬉しくて…
「バカ…嬉しいよぉ」
本当はずっと怖かった。嫌われたんじゃないかって。大切な仲間が、離れていってしまうんじゃないかって…。
それが、こうして戻ってきてくれる事を、私はどれほど待ち望んでいたのだろう。
騙されていた事を知った、あの日から…
このまま騙されていたほうが幸せだったんじゃないかって、何度思っただろう。
だけど本当は…そんなことはなかったんだね。
人は傷ついた分だけ幸せになれるって言うじゃない。
私はたくさん傷ついた。逆に、人をたくさん傷つけた。
後ろを振り返ってばかりじゃ何も変わらない。
でも私今、ほら、着実に前に進んでるよ。
雪が降り続いている。さすがに体も冷えてきた。
そんな中、口を開いたのは……恵美奈。
「みんなお人好しすぎるんだよ!人殺しなんだよ!?人として最低な事をしたんだよ!?なのになんでそんな簡単に謝ったりするの!?」
しんと静まりかえった公園に、恵美奈の叫ぶ声だけがこだましていた。