コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

雪の降る町 【完】
日時: 2012/02/12 21:08
名前: リオ (ID: IRDFwr.p)

初めましての人がほとんどだと思います
リオです♪
小説初挑戦&のろまで短気なので、更新は亀以上に遅いです…
気長に応援していただけるとありがたいです


登場人物
・濱里有咲 Hamazato Arisa
主人公。恵美奈の幼なじみで親友。
友達思いだか、ネガティブ思考になることが多い。
・平瀬恵美奈 Hirase Emina
有咲の幼なじみ。三歳の頃にこの町に引っ越してくる前
に、厳しい過去を経験してきた。
・高橋美咲 Takahasi Misaki
有咲と恵美奈の友達。拓海の元カノ。
友達思いで、周りの事を考えるのが上手い。
・渡辺拓海 Watanabe Takumi
美咲の元カレ。恵美奈への浮気が原因で別れる。
有咲や恵美奈とも友達。
無愛想だが、暖かい心を持っている。


お客様
ちくわ大明神様、みつ様、るいーじ様、恋歌様、スポンジ・ボブ様

Thank You!!


2011.2.12 修正完了

Page:1 2 3 4 5 6 7 8



Re: 雪の降る町 ( No.6 )
日時: 2012/02/09 21:43
名前: リオ (ID: IRDFwr.p)

あの事件から五日が経ち、ずっと家にひきこもっていた私は、さすがにやばいと思い、久しぶりに学校に顔を出した。
雪がちらついてきた。

その日もすべていつも通りだった。何も、変わらなかった。
ただただ時間だけが過ぎていく。
ただ
一つだけ心にひっかかった事がある。
休み時間に友達が話しているのを聞いてしまった。

恵美奈の本当の母親は、もういない。
そして、
恵美奈は、昔から体が弱い。
もう、命は長くない。

…どうして?なんで恵美奈が…

神様、お願いです。
もう、これ以上恵美奈を、いじめないでください。
神様は不公平です。
私は何も知らなかった。
何も知らないまま、幸せに過ごしてきた。なのにどうして、恵美奈は一人苦しんでいるのですか?

恵美奈はもうずっと長い間苦しんできたのに、気づいてあげられなかった。
一番近くにいたのは私なのに。
ずっと一緒にいたのは私なのに。

恵美奈は何も悪くない。なのに恵美奈は苦しんでいる。
おかしいじゃない。


神様は……不公平すぎます。

Re: 雪の降る町 ( No.7 )
日時: 2012/02/10 07:13
名前: リオ (ID: IRDFwr.p)

次の日
まだ雪は降り続いている。
私はまた学校を休んで恵美奈のいる病院へ出かけて行った。
このままだと授業に完全に置いていかれるが、そんな事はどうでもいい。なんとかなる。

今日は恵美奈の秘密をすべて教えてもらうつもりだ。今まで隠していたこと、全部を…

ガラッと音をたてて扉を開ける。
「恵…美奈?」
思わず声が漏れた。恵美奈の目は覚めていた。
「有咲っっ!」
5日ぶりの再会。相手は、十年以上秘密を隠し続けてきた友人。
それでも…嬉しい。無事で良かった

「バカッ!どれだけ心配したと思ってるんだよっ」
「ゴメン…」
「ホント、無事で良かった……」

私も恵美奈も、声をあげて泣き崩れた。
今までの緊張が、ふっと緩んだ瞬間だった。
「恵美奈」
「…何?」
「全部教えて。恵美奈の覚えてる事、全部…」
「あ…… うん、わかった」

恵美奈の抱えた厳しい過去は、私の予想範囲内におさまらなかった。

Re: 雪の降る町 ( No.8 )
日時: 2012/02/10 18:53
名前: リオ (ID: IRDFwr.p)

13年前。恵美奈一歳。
恵美奈の本当の母親は、家族思いの優しい人だった。みんなに好かれ、決して笑顔を絶やさなかった。
ところがある日、恵美奈が一歳の頃、重い貧血で倒れ、病院に運ばれた。
運ばれた病院で、母親はあと一年生きられるかどうかわからない、重い病気をもっていた事が発覚した。
まだ幼い恵美奈を残していくわけにはいかないと、必死で闘病した結果、余命一年と診断されたものの、奇跡的に二年間生きる事ができた。
そんな母親の心の支えになったのが、愛する夫と娘の存在だった。
もういつ死んでもおかしくないといわれていた頃。
その日はその町では珍しく、雪が降っていた。
雪の中母親がか細い声でこう恵美奈に訴えかけていた。
「恵美奈は、生きなさい。後悔ばかりしていてはいけません。やりたいと思う事を思う存分やりなさい。心から信頼できる友達をつくりなさい。そしていつか、恵美奈の事を心から愛してくれて、心から幸せにしてくれる人と結婚しなさい。お母さんは生きていて、幸せだった…」
その直後、母親は静かに息をひきとった。雪の中で、冷たい体は満足そうに微笑んでいた。
恵美奈は薄々ながらも気づいていた。お母さんが、もう少しでいなくなってしまうんじゃないか、もう自分のそばにいてくれないんじゃないかと。
そして息をひきとったその時は、無意識ながら、自分の頬を涙がつたっていった。
雪の中、微笑む母親の姿を見ながら……。

Re: 雪の降る町 ( No.9 )
日時: 2012/02/10 19:04
名前: リオ (ID: IRDFwr.p)

悔しかった。何が起こったのか、なぜ悔しいのかもわからない。
わかるのは、ただ一つ。
お母さんはもういない、という事だけ。
いくら話しかけても返事が返ってくる事はない。目を覚ます事もない。ただ、冷たい体が横たわっているだけ、
恵美奈は何度も泣いた。もう二度と帰ってくる事のない母親を想って。もう、涙が枯れて出なくなるんじゃないかと思うくらい。
そんな中、父親が新しい相手を見つけて再婚した。運の悪い事に、父親は軽い人だった。恵美奈は亡くなった母親の事など、もう忘れているんじゃないかと思った。母親との思い出も。母親の言葉も。
その後、この町に引っ越してきた。
日本海側にあるこの町は、雪が降るのは珍しくない。恵美奈は雪が降るたびに母親の事を思い出した。それと同時に、母親の言葉も。
自分は何もできていない。お母さんの期待に応えられてない。特にやりたい事もないし、信頼できる友達もいない。自分を心から愛してくれる人は…まだ、いない。
そう思うたびに苦しくなって、涙がでる。お母さんは精一杯生きた。でも、生きられなかった。それなのに、生きていて幸せだった。自分は幸せに生きられるのだろうか。
このままじゃ無理だ。
そして、また悔しくなる。
継母は、確かに今は自分の母親だ。でも、誰もお母さんの変わりにはなれなかった。
自分の本当の母親を忘れてしまいそうで怖い。だから、うまく心を開けない。
継母ともぎくしゃくした関係が続いた。
家族なのにこんな関係でいるのが辛くて、母親の期待にこたえられないのが悔しくてストレスがたまり、四歳半の時、心臓を悪くした。
若い人に発病しやすい、お母さんと同じ病気。
これにかかった時点で、この先どうなるかは、幼い恵美奈でも予想がついた。


あぁ、私は、死ぬんだ………

Re: 雪の降る町 ( No.10 )
日時: 2012/02/10 21:46
名前: リオ (ID: IRDFwr.p)

有咲と出会ったのはその一年前。引っ越してきた時に興味ぶかそうに窓から部屋を覗いていた。
「よろしくねっ」
笑顔でそういった有咲が、その時の恵美奈には眩しかった。
だから、言えなかった。病気の事も、親の事も。
しばらくして言えばよかったと後悔したが、今さら言うことなどできなかった。
でも、毎日のように遊ぶにつれて、有咲を心から信頼できるようになりたい、と思えてきた。有咲といると楽しかった。ショックで病んでいた心の傷が、少しずつ癒えていくのを感じた。

小学校に入学すると、有咲に友達が増えた。私はその人達に嫉妬した。
だから毎日有咲の教室に遊びに行った。有咲に忘れられたくなかった。自分には有咲しかいないんだ、という事に気づいてほしかった。
「いつも来てるけど、あの子誰?」
ある日、有咲の友達が有咲に尋ねたのを聞いてしまった。その時有咲は、こう答えたのだ。
「あの子?私の親友だよっ」
嬉しかった。嬉しくて涙がでた。
親友って、1番の友達だよね?私が有咲の1番なんだよね?

それでも、どんなに嬉しい事があっても、私の病気は、よくなる事はない。
悪くなる一方で……
有咲が私の病気を知らない手前、入院なんてできるわけない。
有咲に忘れられたくない。有咲にだけは…
ちょくちょく学校を休みながら、通院で治療を続けた。
誰も助けてくれる人はいない。慰めてくれる人もいない。頑張れって言ってくれる人も……
有咲に病気の事をうちあけようと、何度試みたものか…
でも、結局言えなかった。
心から信じていなかったのかもしれない。
そんな事で壊れる友情じゃなかったはずなのに……
苦しかった。どうしようもなく、辛かった。

そして、余命一年と言われたのは

一週間前…


Page:1 2 3 4 5 6 7 8