コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- Link! 【現在23話】
- 日時: 2012/09/11 20:26
- 名前: 零華 (ID: KsKZINaZ)
あらすじ
科学と魔法の発達した世界。
そんな世界のとある魔導士ギルドに所属する最強タッグ アズマとハル(男)には毎回高難易度のちょっと危険な依頼が舞い込んでくる。
そんな二人の元にやってきた、(超)危険な依頼。
二人に降りかかる幾多の依頼を彼らはどう切り抜けるのか!?
目次…
第1話 依頼 >>001-010
第二話 新たな仲間 >>011-016
>>21
第三話 ニコ・アルベルト >>022-029
第四話 転生 >>030-038
番外編 ゲームをしようよ >>19
コメ貰ったらかえします!
少し遅れるかもしれませんが。
旅行から帰ってきました。更新頑張ります!
- Re: Link! 【コメ求む!】【テスト期間!オワタ!更新も】 ( No.29 )
- 日時: 2012/08/29 18:14
- 名前: 十六夜 (ID: BwWmaw9W)
- 参照: 元零華です
——いない。
「どうなってんだ」
アズマが念話を切った。ニコが居ないのなら念話を使う必要がない。
「何処に消えたんだろう……」
暗い路地に入り、注意して念入りに不特定の何かを探す。
「ここ、何かあるな」
アズマが指差す、その先には灰色一色のコンクリートの壁。
「別に何もないじゃないですか……」
レナが壁をなぞる、壁に明るい魔方陣が浮かび上がる。
「へえ」
ハルが驚く。何が書いてある、と急かすアズマを黙らせ、ハルは読み始めた。
「暗証番号を述べよ、だって」
「それなら分かる」
アズマが少し息を吸い、声を出す。
「2、5」
扉が開いた。
「本当に開くとは思わなかった」
本人も驚いている。
「成る程。ニコだから25か」
「ホントに当たるなんて凄いです!」
さて、と扉の中を振り返る。中は電球の一つも無く真っ暗。闇だけが広がっていた。
「待ってても無駄だな」
アズマが一歩踏み出した、途端に足を踏み外す。
「階段だ!」
思わず大声を出してしまい声を潜める。
流石に灯りをつける訳にはいかず、手掛かりは自分の感覚だけ。
『レナ、大丈夫か』
『あ、はい…………』
『ねえ、俺には聞かないの?』
暗くて見えないが雰囲気でハルが笑っているのが分かる。——あんにゃろう念話の傍受しやがったな……
念話はテレパシーの様な物だと言ってあるが、詳しい仕組みはこうだ。自分が言いたい事を頭の中で思う。それを微量の魔力に変換し飛ばす。受け手にその魔力が行けば頭の中で声が聞こえる。ブレスレット無しでも念話は出来るが、三人専用のチャンネルを作る為にブレスレットを着けている、と言うわけなのだが、ハルもブレスレットを着けているので傍受しようと思えばいくらでも出来る。
『ハル、大丈夫か』
『気持ち悪いから止めてよ』
『お前が言えって言ったんだろ!!』
『俺は質問しただけ』
『ハァ』
アズマが大きなため息をついたとき、目の前に明かりが見えた。
- Re: Link! 【コメ求む!】【テスト期間!オワタ!更新も】 ( No.30 )
- 日時: 2012/09/03 15:20
- 名前: 十六夜 (ID: KsKZINaZ)
- 参照: 元零華です
キリはマスターに連行されたものの、意思は回復していない。
気絶している間、彼は記憶の海を漂い続けていた。
彼の記憶の海は彼が、この世界に来たときから始まっていた。
その日、鈴木 陸は大急ぎでバイクを駆っていた。
「間に合うかぁ?」
出勤先の会社まで後5km程だが、時間も僅かだ。
距離は徐々に縮まっているがそれに比例して時間も消えていく。
焦りが積もり積もって、いつもは通らない裏道に入った。
その裏道というのが問題で、道幅がやっと車一台通れるくらい、近くに小学校があるということもあって子供が多く、カーブミラーの脇にも、「子供飛び出し注意!!」と看板が掛かっている、事故多発の危険道として陸は認識していた。
「うぉっと……」
飛び出てきた赤いランドセルを背負った影をからがら避ける————。
が、飛び出してきたのは他にもあった。角を曲がってきた車に正面からぶつかる。
衝突、衝撃。
何がどうなったか考える時間も無く投げ出される。
自分の体から赤い液体がドロドロと流れ出るのが見えた。
——俺、死ぬのかな…………
薄れ行く意識の中で、ゆっくりと思考は進む。
「くっそぉぉぉぉぉっっ!!!」吐き出そうとした叫びは声に為らず、ついに陸の意識は事切れた。
小学校の頃————暗黒の時期、虐められ虐げられ、学んだ事と言えば一つ。逃げること、逃げること、逃げること。
中学校————暗黒は続く。
高校、大学————闇は更に暗くなり、密度をましていく。
そして、社会人となった。この時期になって、やっと虐げられる時代が終り、陸の世界は少しずつ明るくなっていった。
「三日前、バイクで走行中に車で跳ねられる……へぇー、車って魔導四輪の事かな?」
「……ん……うん」
止まっていた思考が徐々に解凍されていき、陸は目を開けた。
「うわぁっ!」
第一声。陸が大声を上げたのには理由があった。
目を開けた途端、目の前にネコミミの美女がいた。
すらりと背が高く、真紅のショートヘアーが良く映えている。更にその上にちょこんとネコミミが、
「あ、起きた」
解凍された頭から記憶と疑問の波が押し寄せてくる。『俺は死んだ筈だ』とか『この人誰だ』とか『此処何処だ』とか。
周りを見渡す。真横にネコミミ美女、離れた場所に粉々であろうはずのバイクが新品同様になって置いてある。
何故…………?
回答は誰からも寄越されなかった。しかももれなく大変な頭痛がセットでついてくる。
思わず目を瞑ると、ネコミミ美女が上から覗き込んできたのが気配で分かった。
「あんま考えない方が良いよ。まだ混乱してるだろうから」
「あ…………ぁ」
情けない返事をしてから、そういえば、と、自分の体を良く見る。
体は全くもって傷付いていない。
「私はカノン、治癒魔法を施しておいたからね、貴方、傷だらけだったから」
それにしても、とカノンが続ける。
「何があったの?森を歩いていたらいきなり傷だらけの貴方が瞬間移動してきた……というか無意識に移動した。って感じかな。驚いたんだからぁ。」
瞬間移動……?
自分の知らない単語が次々出てくる。
「あの……瞬間移動て」
「え、だって貴方血に染まりながらヒュッと現れたし、空間移動魔法じゃないの?」
「いや、だから空間移動魔法ってヒュッて消えてヒュッと現れる瞬間移動の事?」
「それ以外に何があるの。いやー、良くあんな高等魔法を使える……え、空間移動魔法知らない?」
話を聞いて、驚いている陸の顔を見て、疑問を口にするカノン。
「知らない。魔法?何のこっちゃ」
「………………………」
長い沈黙、やがてカノンが口を開いた。
「もしかして、頭でも打っておかしくなっちゃった?」
「頭はおかしくない。てゆうか此処何処、てっきり病院とかに居ると思ったんだけど」
「ねぇ、ホントに大丈夫?魔法を知らない何てまるで……」
————違う世界から来たみたい。
その言葉に息を呑む。
新品同様のバイク、傷ひとつない体、聞いたこともない『魔法』や『瞬間移動』。
思い付く単語は二文字。
転生、とか。
「……今から俺の言うことに口出しせず答えてくれ」
陸の口調が変わったのを察しカノンが神妙に頷く。そして、取り返しのつかない質問をした。自分の世界から完全に切り離されてしまう可能性のある質問を。
「此処は、地球の、日本じゃあ無いのか」
「此処はバックランド、世界でも五本の指に入るくらいの有名な国。日本とかいう国は知らないわ」
ほぅ。
自然と溜め息が漏れる。
あぁ、もう元いた世界には戻れないんだな、そう感じた。
でなければ本当に頭がおかしくなったのかもしれない。
陸は諦めた。
そして諦めは決意に変わった。
この世界で生きていくと。
「なぁカノン、俺にこの世界の知識を教えてくれ。少しずつで良い、幼児レベルの事から全て」
「少しずつ?私を誰だと思ってるの、記憶を操る魔法は私の十八番よ。何か事情があるらしいからやってあげるわ。直ぐに終わらせてあげるから。その代わりに貴方の事も全部教えて貰うわよ。気になって仕方無いし」
頷いてまた目を瞑る。
「行くわよ!」
急に目の前が明るくなり、思わず目を薄く開く。陸の目の前に魔方陣と思わしき光の円が出ている。
「うぅぅっっ」
圧倒的な量の知識が脳に入ってくる。しかしその痛みも直ぐ収まってきた。
「ねっ!すぐ終わったでしょ」
「んん……今なにしたの?」
「私の知識の記憶を貴方にコピーしたの。さて、まず貴方の名前は?」
「鈴木陸」
「スズ……キリ……ク」
どこか違う気がする。
「よし!長いから間を取って………キリでいいわよね」
鈴木のキと陸のリを取ってキリか、確かに間を取っている。と納得。
「じゃあキリの事教えて」
キリはゆっくりと話始めた。
「まず、俺はこの世界の人ではない。言うなれば異世界人だ」
「異世界?」
「俺は、〝地球という星″の〝日本″に住んでいた。それで、車に跳ねられて死亡」
「はーい、質問」
カノンが学校の生徒の様に手をあげる。
「車ってなんですかぁ」
「車……うーん、ガソリンっていうエネルギーで動く乗り物……かな」
「えぇーっ!あんな効率の悪いエネルギーまだ使ってんの!?」
「え、ガソリンあんの」
と言って急いで記憶を探る。この世界にもガソリンは存在するようだ。
「今はもうほとんどがバイオエネルギーと魔力のハイブリッドね」
「バ、バイオエネルギーと魔力……すげぇ」
「それで」
「気付いたら此方にいたんだけど」
「ふーん…………それなのに随分と落ち着いているわね、いきなり知らない世界に来たのに」
それはなぜかは分からない。キリは自分でも驚く程落ちていた。
「ねぇ……戻りたい?」
カノンが躊躇いがちに聞く。
「戻りたくないと言ったら嘘になる。でも、今戻りたいとは思わない。戻りたくても戻れないでしょ」
「各地で時空の歪みっていうのが目撃されてるの、でもね……それは100年に一度くらいの話で……」
カノンの顔が曇る。
「戻れる可能性は低い、か」
「しかも、何処へ行けるか分かんないって話なの……」
だとすれば帰れる可能性は限りなく0だ。でも、キリは帰るつもりはなかった。
「俺は此処で生きるさ。前の世界が嫌いなわけでもないけど大好きって言える程の幸せも無かったし」
特に大人になるまでは。
何を察したかカノンが少し悲しそうな顔をした。実際はキリの記憶を覗き見ただけだったが。
「ねぇ、提案なんだけど、私と旅しない?」「え、旅?」
「そっか、知らないか。この世界で生活するにはお金を稼がないといけないわね。で、一番手っ取り早く金を稼ぐ方法は、ギルドの連合に加盟して依頼をこなす方法ね。あ、ギルドは魔導師の集まりの事ね」
カノンの説明によれば、ギルド連合に加盟すると、カードを作って貰う事が出来、このカードに各ギルド固有の紋章をいれるとそのギルドに加入した事になるらしい。また、ギルドに入らなくても、依頼を請ける事は街単位で設置してある連合ギルドでも依頼は請けれるという。
「どう?キリはまだ何にも解からないだろうから私がしっかり鍛えてあげるわよ」
「え?何を?」
「勿論魔法よ!この世界で生きるならまず魔法を覚えなきゃ!」
いきなり魔法を覚えると言われてもいまいち実感が湧かないキリである。
「やってみればわかるって」
キリの不安そうな表情を見てカノンが笑う。ほっとしたキリだったが、この後の訓練が全く笑えない物になるとは知らなかった。
二人はカノンが建てたテントの近くに立っていた。
「じゃあまずは基礎中の基礎からね。あの岩を何かで壊すイメージをするの。何で壊すかは自由よ。——こんなふうにねっ!」
カノンの手に2つの魔方陣が現れ、その魔方陣からピンポン玉サイズの氷の塊が飛び出した。氷の塊はいとも簡単に岩を貫通し見えなくなっていった。
3個目の魔方陣が現れたが、今度は岩の上だった。
「凍てつく氷よ 芯から凍らせ消し飛ばせ!」
空いた穴からピキピキと音をたてて氷が広がり、岩全体を覆った。
そして、岩が砕け散った。
「おぉーっ!」
漫画やSFの中だけだった物が現実で、しかも目の前で見れて感激。拍手までしてしまった。
- Re: Link! 【コメ求む!】【テスト期間!オワタ!更新も】 ( No.31 )
- 日時: 2012/09/03 15:20
- 名前: 十六夜 (ID: KsKZINaZ)
- 参照: 元零華です
「ありがとう。…………次はキリの番よ」
「え、まじでやんの?」
「やるに決まってんでしょ!ほら、早く!」
「えー……どうやってだよ」
「取り敢えず右手に意識を集中させて!右手からボールを放つイメージよ」
カノンの言われたとうりに右手に意識を集中させる。すると————
「おおおおっっ」
右手の手のひらに黒い玉が浮かび上がってきた。固体でもなく液体でもない。地球でいうゼリーに似ている。
「ほら!それを前に押し出すイメージ!」
黒球を放つ。黒球は想像したより少し遅かった。そのまま岩に向かう。
岩にぶつかる。岩は砕けもせず、割れもしない。黒球は岩を透過していた。
「どうなっているのかしら…………私も見たことがない魔法だし……もう一度やってみたら?」
キリは言われるまでもない、ともうひとつ黒球を生み出して、放とうとしたとき、カノンの声が掛かった。
「まだ放たないで!色が……」
カノンは黒球を凝視していた。キリも気になって目をやる、すると——
黒球はもはや黒球とはいえない色になっていた。真っ赤に燃える赤色。
「放って!」
キリが放った赤い玉は空中で燃え盛る火の玉と化して岩に襲いかかった。
岩が炎に包まれ、暫くすると岩が溶けていた。
「こんな魔法が………………」
カノンの驚愕ぶりから、キリの魔法は初めてみた魔法だという事は分かった。
キリも自分が魔法を使った事に驚き、興奮気味だ。
だが、驚くのはまだ早いらしかった。
「もう一度だ」
3個目の黒球を作る、すると今度は淡い水色に変化した。
放つとそれは空中で水の塊になる。
結局の所、キリは<火><水><土><風><雷>の魔法を使用できた。
カノンがまだ何かあるかもしれないとキリに試させると、見事にこの五属性の魔法に黒球を変化させる事が成功したのである。
この五種類は魔法の基礎で、五大属性魔法と言われている。この五属性の魔法から派生した魔法の属性も数えきれない程ある。例えばカノンの<氷>も<水>の派生属性である。つまり、五大属性魔法を全て使えるとなると、
「ほぼ全ての属性が操れるって訳ね…………」
治癒や記憶を操るなど特殊な属性は無理だろうが、この五つがあれば膨大な魔法を使用できる。
カノンも五大属性を全て操れる人物などお目にかかったことが無い。聞いたことが無い訳ではないが、それでも世界で十本の指に収まるくらいだ。
普通は五大属性魔法は一人一つ、多くて二つ三つだ。
当の本人は色々な属性の魔法を組み合わせて遊んでいる。
「うーん……火魔法を風魔法で加速させて……いや、それでは火が消えるか……そうだ、いっそのこと土魔法と風魔法で砂を巻き上がせて火魔法で粉塵爆発を起こすか」
魔法を使えるか不安に思っていた筈がかなりのめり込んでいる。
「攻撃の手段よりまず防御が先よ」
ということでカノンの魔法を(といってもかなり弱くしてある)防御する訓練が始まった
- Re: Link! 【現在19話】 ( No.32 )
- 日時: 2012/09/05 12:04
- 名前: 十六夜 (ID: KsKZINaZ)
- 参照: 元零華です
「基本的に防御は土魔法がいいわ。他の四属性の魔法をほぼ完全にシャットアウト出来るからね。欠点は前が見えなくなること、そして見えない事で防御が崩れた時に攻撃を食らいやすい事よ」
防御の前に有難いお言葉を貰い、いざ訓練開始である。
まずカノンが氷弾をキリに向けて撃つ。それを土魔法で壁を作り防御。一発目は単発だったが二回目以降は連続で撃ってきた。
この連続の氷弾はさしもの土壁も耐えきれないだろうと判断し、火魔法で土壁を覆う。氷は溶けて、一瞬の内に蒸発した。
「これはどうかしら!」
カノンが風を起こし、それに雪と霰を混ぜる。即席吹雪が出来上がった。
キリは火魔法をドーム状に展開しようとしたが、イメージにむらがあったのかドームの一部にポッカリと穴が空いていた。
そこから吹雪が吹き込む。
「寒っ!ちょっ……ちょっとタンマ……」
しかし一向に吹雪は止まない。
「自分で何とかしろって事か……」
凍えた頭で必死に考える。
「そうだ!氷魔法には氷魔法!」
急いで直径二メートルくらいの黒球を作り出し、地面に叩きつける。ドーム型に水が広がった。それを直ぐに凍らせる。イメージしたのは日本の鎌倉だったが、中々上手くいったようだ。
外では吹雪が舞い踊っているが、分厚いドームに降り積もるだけだ。
少し余裕が出てきた時、急に吹雪が止んだ。
「おや?」
カノンが何をするのか分からないので、何が起きても大丈夫なように身構える。すると、キリの後ろの壁に小さな穴が空いた。気付けなかったのが致命傷だ。
穴から水が流れ込んでくる。その水量は最早一般家庭の蛇口の比では無く、小さい穴からこれでもかと水が入り込む。
ここでドームを崩すと上に積もった雪が一気に落ちてきて、キリが身動きをとれなくなる。かといってこのまま黙って見ていたら溺れ死ぬだろう(殺されはしないだろうが)。
巧妙な攻め方だった。
こうなったら仕方がないと、穴とは反対側に少し大きめの穴を作る。水はそこから流れ出し、何とか溺死は免れた。
一安心。と思っていると、キリが開けた穴から氷弾が連続発射された。
「ちょっとカノンさん!?これ殺す勢いじゃない!?」
撃ち出される氷弾はマシンガン顔負けの速度でキリを襲う。
「治癒魔法あるから大丈夫!」
「当たること前提か!!」
真面目に突っ込んでいる余裕は無かった。
氷弾は火魔法で溶かしていたが、溶けきらなかった物がキリの腕に、ブスッ! と効果音を着けたくなる程、綺麗に突き刺さった。
「うぎゃぁーーーーー!!!!」
キリの悲鳴が青空に響き渡った。
キリはテントの中で寝転がって治癒魔法を受けている。
「はい終わったわよー。これで明日も訓練頑張れるわね」
カノンがニッコリ笑う。表は天使だが裏は悪魔だと今初めて気づいた。
「……鬼」
「な・ん・か・い・っ・た?」
一文字毎にわざわざ間を開けてねじ込んでくる。
「うぅ……何でも無いです」
さっきの痛みは鮮明に覚えていて、黙るキリ。体の傷は治っても心の傷はなおらなかったようである。初めて会った時に、優しそうな人だ。とか思った自分が悔しい。
「まあ初めてにしては上出来って所ね。良く考えて行動出来てたし。さ、早くご飯食べて訓練再開よ」
時刻は昼過ぎ、カノンが持ってきた保存食で簡単に昼御飯を済ませ、訓練を再開した。
米は無かった。
「午後からは勉強よ!この世界の事を|確り《しっかり》教えて上げるからちゃんと聞いてなさい!」
「はぁーーいぃ」
キリの間延びした返事にカノンが氷の|礫《つぶて》を飛ばす。
これは何とか風魔法で剃らしたが、耳元を ヒュッと氷が通り過ぎ、少し背筋が寒くくなった。
「先生、危険行為はやめてください」
日本では、この場面で飛んでくるのがチョークだったからこそ笑っていられたが、この世界は氷の礫やら危険な物体が飛んできて笑ってなどいられない。
「なら真面目に授業を受ける事ね」
言い放ってまたニッコリ。
——チキショー悪魔め
この呟きは言わずに収めた。
「一時間目は地理でーす」
「はい」
「この世界は五つの大陸に別れています。私達が居るのがエリオ大陸の中のバックランド。他の国との交流が盛んな貿易国。別名が自然の国 と言われるくらい自然が多くて、鉱山とかも沢山あるの。だから高価な宝石やエネルギー資源も豊富なんだけど、回りが敵対してる国ばかりだから貿易は海と空に限られているの。大国だから治安は良いんだけど周辺国との戦争が激しくて……」
要するに資源が豊富という理由で目をつけられているのだろう。
「しかも最近はオスランって国の攻撃が激しくなってきて、戦争の回数も年々増えているわ。何やらバックランドの中に、エリオ国のスパイがいるらしいの。エリオ国は怪しい最新兵器を作ってサイボーグ兵士軍を造り出していて、それがまた厄介なのよ。ただの機械だって甘く見てたギルドの連合部隊が次々やられちゃって。もう大混乱」
「え、カノンって戦争行ったことあるの?」
「いや、普通にあるけど。戦争何て良くあることよ」
平和ボケした日本に住んでいたキリにはこれまた想像出来ない。
カノンには事前に日本の事を少し話していた。だからなのか、カノンは真面目に話始めた。
「キリの国は平和だったのよね。でも、此処で生きていく上で躊躇はいらない。躊躇って痛い目に会うのは自分なの。————いい、無駄な攻撃は必要ないわ。でも自分を傷付けようとする奴には容赦しちゃいけない」
カノンの口調はあくまで優しかったが、言っていることはキリには実行しずらい事だった。
だからカノンはキリに言ったのだ。この世界で殺されそうにになった時相手を殺す事を躊躇ってはいけないと。
——————躊躇ったら死ぬのは自分だ。
そう心に刻み込んで、再開した授業に聞き入った。
- Re: Link! 【現在20話】 ( No.33 )
- 日時: 2012/09/07 15:36
- 名前: 十六夜 (ID: KsKZINaZ)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=29893
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