コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- LosT WoRD
- 日時: 2013/02/06 17:59
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: 3w9Tjbf7)
LosT WoRD
StoRy
世界が度重なる戦争や災害の為、バランスを崩した時代。
大人達が求めるのは確かな金か。揺るぎない地位か。
……まぁ、そんなの俺には関係ないのだけれど。
失われた世界でのわけがわからないファンタジー。
ここからはネタバレ含みます。
chAraCTor
シェン 一応主人公
ラギ 一応主要人物
スタン 万屋
ルーチェ.ルーカス 北区スラムリーダー 最興の錬金術師
ライア 南区スラムリーダー 最強の戦闘狂
ストーム 西区スラムリーダー 最凶の薄愛主義者
ラグマ.A.トリスタン トリスタン家の子供
ジュダル.A.トリスタン トリスタン家頭首
先生 ラギの先生
里兎 サトー 佐藤 シェンの義父
ジャン・エルカール 2年前の事件の関係者 万屋の宿敵
WorD
旧時代 戦争前の時代
新時代 戦争後の時代 今
合成獣 キメラ 戦争の生物兵器
機会人形 戦争のロボット兵士
錬金術師 不可能のラインを見極める科学者
街 戦争後富裕層が住むセントラル
中、外 街の中、街の外
森 戦争の異物が残る沿岸部
トリスタン家 戦争の兵器開発第一人者
不老不死者のホムンクルス トリスタン家の計画
- Re: LosT WoRD ( No.17 )
- 日時: 2013/01/04 19:16
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: .GCH7A/G)
少し前。同じく北東の祭り街。
男は軽やかな足並みで歩いていた。
フフフンフン。とまるで鼻歌でも刻みそうな軽やかな足並みは旧時代には珍しい。更に言えば、男が歩くのはスラムの中層で、飛び出たパイプや違法露店の屋根、空列車や立体看板の上を軽やかに進むので、その異質な男こそ重力というこの世の摂理そのものに見放されているようだった。
スラムで長く生きた人々や感情が少ない機会人形などは、そんな男に気づいても気付かない、見てない、そこには何もいないを一貫して貫き通す。それがここで生きるには必要な知恵だ。
フフフンフン。
その努力を無に返す様に男は歌い出す。
しかし、それでも、踏まれた立体看板の店の亭主は無視をし続けていた。
男が向かうのは城壁だ。明白な越えられない壁。無重力にただ一人放り出されている様なこの男ならば簡単に越えられるのか? しかし、それが出来ないことは誰でも知っている。スカイボード(新時代に開発された、空を走るボード)でもこの壁は越えられない。
「おい。そこの短髪黒髪長身細身の兄ちゃん。そんな所にいられちゃ迷惑なんだけどな?」
男に声をかけてきたおっさん。この中年は果たして賢者か愚者か。
「おっちゃん珍しいね? 俺に声をかけてくるなんて」
「かけたくてかけたわけじゃねぇよ。ったく! 最近は変な連続殺人も起きてんのに」
心底心外であると憎たらしそうにおっちゃんはツバを吐く。
「変な連続殺人??」
「ガキや女が殺されてんだよ。みんな口をあんぐり開けて半目になってな」
知らないのか?
おっちゃんの顔が驚きを物語っており、被害者の数を男に伝える。
「どうせ。あんたもイカれた東のガキみたいなもんなんだろ? これ以上ここで問題を起こすな」
「おっちゃんさー。イカれた野郎に『お前はイカれてる』って言って逝かされるとは思わねぇの?」
はんっ。
文字で書いたように鼻で笑う百戦錬磨のオヤジ。
「誰が逝くか? てめぇが勝手に逝ってろや」
(おっちゃんかっけぇー!!)
男の中で何かが目覚めた。
(いいねぇ。その図太い神経。その唯我独尊天下無法天上天下俺様一番一喜一憂一期一会一日千秋昨日も先週今日は今週みたいな感じ)
「おっちゃん。俺は今人生の先輩に会った気分だ。否、おっちゃんこそ俺の師匠だ! くそぅ。息子にも見せてやりてぇよ。せ、せめて、お名前だけでもっ!」
「テメェに名乗るぐらいならドブに捨てるは、そんな名前」
「ギャフン!」
「腹いせに看板を壊すなこのガキゃ」
男の人蹴りで鉄の看板がグニャリと曲がった。
店主は無骨な体をヒクヒクさせて男に詰め寄る。
「さっさと降りろっ!! 道を歩け道をっ」
男はおっさんに大人10人分程の高さを放り投げられた。
「ちょ、死ぬ。頭から落ちてる! ししよー!?」
「誰が師匠だ。殺すぞガキゃー」
確かに、これで男が善良な一般市民だったらしんでいただろう。だが、男落ち着き払って、一個下の店に飛び乗っていた。
「では師匠っ。御指導はまた改めてヨロシク」
店主が何かを言う隙もなく、男はまた足取り軽く去って行った。
後にはしくじったという顔をした店主が残される。
だが、男を突き放すという店主の判断は正しかった。
男が逃げ、店主が商売に戻ろうとした時ーー。
ぼっかーっっっーーっ、ン!!
擬音化するとファンシーな爆音が男が向かって行った“中”と“外”の境界線に響き渡ったのだから。
- Re: LosT WoRD ( No.18 )
- 日時: 2013/01/04 20:42
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: kuEj07Eu)
初めまして。
複雑ファジーや雑談板に生息している柚子と名乗る柑橘系です。
コミカルの中に、楽しい動きなど様々なものが入っていて、とても面白いと思いました。
コメディでも、描写の多いタイプでしたので楽しく読めました。
これからも、執筆頑張ってください^^
P.S.
昨日、柚子個人のスレッドで狐乃宮 秋さんの当小説を紹介させていただいたのですが、何か不都合などありますでしょうか。
何かありましたら、なんなりとお申し付け下さい。
- Re: LosT WoRD ( No.19 )
- 日時: 2013/02/06 17:36
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: 3w9Tjbf7)
(ヤバイヤバイ。この胸の高鳴りを俺はどうしたらいいでしょうか? 師匠?)
(はっはっ。師匠。出逢ってこのかた5分間。気づけばもう長い付き合いですね。俺は今、特攻としてこの城壁をぶっ壊そうと思っているんですが、師匠は元気にしてますか?)
(はっはっ。師匠。こんだけ長い付き合いになると何でも分かりますよ。アンタは変わらず茶でも飲んでいるんでしょう?)
(こんな、前人未踏の試練を与えるなんて、俺は期待されてるんでしょうか?)
(任せてください。派手に行きやすから)
実際、出会って5分は知り合いレベルに達しないし、長い付き合いでもないし、男に試練を与えたのは「ひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまひまいまいまいまいまひまひまひま」と言っていた男自身なのだが。
それは置いといて。
真実は、世界はこの男と店主との出会いに世界は感謝しなければならない。
(“外”から切り刻んだんじゃ、師匠に怒られそうだなぁ)
男がそう思わなかったら、今頃スラム街と城壁、街の一部が派手にぶっ壊されていたのだから。
男はいとも簡単に、誰もが見上げる城壁を通過してしまったのだ。
そう。まるで、男の前には壁など存在していなかったかのように。否、確かに男の前には男の障害に値する物などなかったのだ。
「街に入るのも久しぶりだなぁ。一ヶ月振り? 一年振り? 1時間振り? 一日振り?」
鉄壁の城にいともあっさり侵入した男はやはり軽やかな足取りで暴れ出した。
先ずは腰の得物に手をかける。
次に愛刀を引き抜きーーーー世界を取り巻く電気ケーブルを切り刻んだ。
「どれぐらい切れば、この城壁をぶっ壊せるかな?」
贅沢しか知らない上層階級の一種の馬鹿共が豪勢な生活を送るこの“街”で、電気は新時代になって底を見せることなく滝の様に流れる生命線だ。
それを考えもないように考えて切り刻めばーーーー。
ぼっかーっっっーーっ、ン!!
ナイフで一突きにされた人の生命線である血が溢れるように、街の生命線である電気が溢れ大爆発を起こすのは必至である。
「師匠! やりました! 俺はやりましたよっ!!」
男は何故か爆炎の中に無傷で立っていて、何故か大音量で諸手を上げて叫んでいた。
一方、北東スラムの祭り街。内心部の屋台。
「あのガキぁ。やりやがったな」
ギリギリ目の前、目と鼻の先で爆発を免れた屋台の老練の店主が、憎たらしそうに殺意満帆に吐き捨てていた。
そして、そこに、
「オイ。オヤジっ!! 大丈夫なのかっ?!」
幼さが残る声変わりもまだかの様な少年の声が後ろから響いた。
『法』と『力』と『知識』と『家出野郎』と『少年』。
「爆発、したね」
「爆発、したな」
「俺は爆弾魔もこよなく愛でれるが、爆発、したな」
「爆弾魔とも戦えるけど、爆発、したわね」
「爆弾も作るけど、爆発、してるわね」
これから分かるのはそれぞれの個性と城壁が爆発したという事実であり、爆発が今も続いているということだ。
ギリギリ目の前で爆炎が渦巻き、爆煙が鼻を擽る。
ラギはそれにしかめっ面をして仮面を取った。人気がないから最早仮面はその働きの意味をなくしていた。
ラギはどうしていきなり壁が爆発したのか困惑していたのだが、シェンは思い出したかの様に走り出した。
「オイ。オヤジっ!! 大丈夫なのかっ?!」
歪んだ看板の屋台の前に唯一残っていた一般人らしい中年の男に声をかけた。
シェンのオヤジと言えば自分のお父様並の問題ある人物らしいのだが、その男は人相は多少厳ついが常軌を逸してはいない。
「シェンか? 今日は店仕舞いだ。さっきから客が逃げる様なことしか起きねぇ。どうなってんだ」
「そんだけ口がたたければ大丈夫だな。オヤジ。ん? さっき?」
「え? オヤジってその人がシェンのお父さん?」
普通に普通過ぎて想像と違って異質な普通なんだけど。
それを聞くとシェンが心底嫌そうな顔に整った顔を歪める。
「は? あんなクソオヤジとオヤジを一緒に出来るか。あのクソオヤジはクソにボケにアホを重ねたベストオブバカだぞ? クソオヤジマジシネ」
違ったらしい。
「大体。どこのどいつだよ! こんなムチャしたクソはっ! クソオヤジ並にクソだぞ? 面見たらその面剥いでルーチェのホルマリンにでも漬けてやろうか?」
しかもよっぽどラギの間違いが頭に来たのか、一人物騒なことを言って爆風の中に赤毛を颯爽と靡かせ入って行く。
これで終わらないのがこのメンバーだ。
「俺は面の皮剥がされた奴とも愛を語れるぞっ!」
ストームはいい感じに狂い、
「こんな無茶する奴とも闘えるの!?」
ライアはいい感じに顔を恍惚と歪め、
「この爆発の力で新しい生命体が生まれるかも?」
ルーチェはいい感じに興奮していた。
ラギの横で屋台の店主が呟く。
「大丈夫か? あいつら」
最早、普通の事を口にする店主が、ラギには一番の異常者に見えた。
「オヤジさんこそ大丈夫ですか?」
自分もいい感じに狂い出していることをラギは知らない。
- Re: LosT WoRD ( No.20 )
- 日時: 2013/01/05 12:59
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: vnwOaJ75)
はじめまして。柚子さん
狐乃宮デス。
こんなその場で考えたのを書き込んでるだけのを読んでくれてありがとうございます!
不都合なんてまったくないのでありがとうございますっ!!
これからも気の向くままに書き込むつもりなので
シェンやラギや変人達を応援してやってください!!
- Re: LosT WoRD ( No.21 )
- 日時: 2013/01/06 11:49
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: .GCH7A/G)
「爆風の中に一人立っている俺。ヤバイ。決まったかも。俺は将来現在進行形で子育て中の人気スタンドマンになろう。そして将来『師匠に教わった訓練方法のおかげです』とカメラの前でコメントしようではないか! 師匠。あなたのことは一生忘れません!」
ちなみにこの男が師匠と仰ぐ店主から学んだことは皆無である。
「愛する俺の息子は格好いいからな。俳優としてデビューさせよう」
本人が聞いたら、発狂しそうなことを決意すると、男は気がついた。
「爆風の中にいるのは俺だけじゃないなぁ」
「出て来いっ! どこのクソ野郎だ! 壁を吹き飛ばしやがって」
シェンが叫ぶ。
頭に血が登ったシェンは手に負えない。
「よくこの煙たい中叫べるなっ」
体力的には常人レベルのルーチェはかはっと咳をして口を手で覆っていた。
「こんな奇行をするような奴の所為で、クソオヤジの顔が頭に浮かんで腹が立つっ! 一発殴らないと気がすまないね!」
シェンは咳の一つもなく、口を手で覆っているが、それは手をスピーカーの変わりにしているのであって、喉を守る為ではない。
「本人にどこのどいつだっ!」
シェンの怒りの一声にまさかの返事があった。
「ここの俺だけど?」
「てめぇか! ーーって、てめぇかよ!」
その返事をした男の顔を見て、シェンは無益な反応を見せる。
「何で、てめえがここにいんだよ!」
言いながら、シェンはまたラギには予想外の行動をとった。
すなわち。背中に背負った青龍刀に手をかけ、重たそうな規格外のそれを男に向けた。
対する男はさも嬉しそうな笑顔を向けて、青龍刀を向ける少年に手を広げて胸を開けた。
そして口を開ける。
「まぁまぁ。息子よっ! 父に会って興奮したからってそんな物を振り回すのはやめなさい! 振り回すのなら刀にしなさい。OK?」
ぇ?
「今すぐ消えろっ! 失せろっ! 消滅しろっ絶滅しろっ! このクソオヤジっ!!」
え。ちょっと待て。
「反抗期なのはよく分かる。さぁ。今すぐ父の胸の中で親子の絆を深め語り合おう!」
だから待てって。おかしいだろ?
「だまれっこのクソオヤジつ!」
おかしい。絶対おかしい。
シェンに相対する『少年』は男というのも憚られる、『少年』だった。
短髪黒髪長身細身の少年はシェンと1、2歳しか年の変わらない少年だったのだ。
だが、生物学的にあり得ないのにシェンの口からは罵詈雑言と共にその親子である関係が幾度も証明されている。
『クソオヤジ』はラギより少し高めの身長で、子供らしい笑みを顔全体に貼り付けてシェンに向けていた。その腰にはシェンと同じ様に刀が一本たらーんとぶら下がっているが、それ以外に目立った武器はなく、「どれだけ武器を見せれるか?」というスラムの鉄則は完全に無視されている。その様子こそが挑発的で、この『クソオヤジ』こそが危ない存在だとしらしめていた。
「あれ? 君はシェンの友達?」
真っ黒な目で問いかけられた時、ラギは寒気を感じ、やはりこの男の危なさを感じる。
高圧的な雰囲気。怖い物などこの男には存在しないのだ。
「だったらここはやはり真っ当な父親らしく『いつも息子がお世話になってマス!』と言うべきだね。いつも息子が、あれ、シェン? 何で真っ直ぐ俺に青龍刀をぶっさしてくるのかな?!」
「どの口が真っ当を語る!」
そして次には納得。突然の理解がラギを襲う。
ああ。確かにこの親子は自分とお父様並にムチャクチャだ。
シェンが突き出した青龍刀をにやにやと避けたクソオヤジはそのままの表情で息子の背後を取る。
「隙あり」
「はっ? 冗談っ」
しかし息子は青龍刀を遠心力に任せてクソオヤジに振るう。
カキーン。
クソオヤジが抜いた刀と青龍刀が小気味いい音を奏でた。
「ちょっ。何でいきなりバイオレンスな親子喧嘩繰り広げんの?!」
「ほら。ラギ君もこう言っている! 仲良く酒を組みかわそうではないか!」
「何で俺の呼び方知ってんのっ!?」
ここでの疑問は恐怖しか感じない。
「そんなことはどうでもいい」
「よくねぇよ」
「何でクソオヤジがここにいんだ」
「万屋から仕事を請けてね。街に奇襲をしかけたんだ」
偉いだろ。えっへん。そんな風に胸を張る姿が恐ろしい。
シェンはまだ常識を知ってそれを逸脱しているから救いようがあった。
普通はこうだが俺はこうする!
そんな我儘が通るのがスラムである。だが、こっちの方は、
普通はこうだが俺がこうしたらこれも普通じゃね?
我儘を通り越し遥か上に飛び立ったような傲慢極まりない俺流常識に人を巻き込む。
ラギの知識が告げる。
こいつは危険だ。
「だが、ルーチェとストームとライアもいると思ってたんだが?」
「いるだろ」
「どこに?」
「後ろに」
「どこの?」
「ラギのーーーーん? いねぇな」
シェンが首を傾げるとまた、ラギの頭に警告音が鳴り響く。
この状況は危険だ。
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