コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- LosT WoRD
- 日時: 2013/02/06 17:59
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: 3w9Tjbf7)
LosT WoRD
StoRy
世界が度重なる戦争や災害の為、バランスを崩した時代。
大人達が求めるのは確かな金か。揺るぎない地位か。
……まぁ、そんなの俺には関係ないのだけれど。
失われた世界でのわけがわからないファンタジー。
ここからはネタバレ含みます。
chAraCTor
シェン 一応主人公
ラギ 一応主要人物
スタン 万屋
ルーチェ.ルーカス 北区スラムリーダー 最興の錬金術師
ライア 南区スラムリーダー 最強の戦闘狂
ストーム 西区スラムリーダー 最凶の薄愛主義者
ラグマ.A.トリスタン トリスタン家の子供
ジュダル.A.トリスタン トリスタン家頭首
先生 ラギの先生
里兎 サトー 佐藤 シェンの義父
ジャン・エルカール 2年前の事件の関係者 万屋の宿敵
WorD
旧時代 戦争前の時代
新時代 戦争後の時代 今
合成獣 キメラ 戦争の生物兵器
機会人形 戦争のロボット兵士
錬金術師 不可能のラインを見極める科学者
街 戦争後富裕層が住むセントラル
中、外 街の中、街の外
森 戦争の異物が残る沿岸部
トリスタン家 戦争の兵器開発第一人者
不老不死者のホムンクルス トリスタン家の計画
- Re: LosT WoRD ( No.2 )
- 日時: 2012/12/21 21:04
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: .GCH7A/G)
ーー頭痛が痛い。
「大変だ。頭がヤられているな」
目覚めの挨拶が散々だ。目覚めの気分も散々だ。後ろ首がジンジンとウナウナ唸っている。
「何だよ。頭痛が痛いって」
「ーー頭が、痛い」
よく出来ました。
楽しそうに笑うのは自分よりも2、3年下の男の子だ。少年である。華奢な体つきで整っているが幼い顔立ちをしている。
「お前さ。東の森で寝てたんだよ。寝相が悪くても明日からはちゃんとママに用意してもらったベッドで寝た方がいいよ。あそこは旧時代の異物で出来た森だからさ」
見た目にそぐわず、人を小馬鹿にした物言いをしたことに驚き、話しの内容に驚いた。
「東の森だって、地下水脈でなく?!」
「そんな所から家出して来たのか」
呆れた声を出されたのは置いといて、どうやって地下水脈から外に出たのだろうか。
「家出なんかしても何にもなんないよぉー」
妙な間伸びした口調で部屋に入って来たのは背の高い猫目の男だった。言っては何だが、見るからに怪しい雰囲気を持っている。
「家までは危ないから街の入り口まででも送っていてあげるからさぁ。帰りなよー」
「街に何の関係が?」
二人して、これまたキョトンとしている。「だって、お前中の人間だろ」
「どうしてそう思うんだ?」ちょっと肩を竦めて、挑発的に訊いてみた。
二人は顔をお互いに顔を見合わせて、少年の方が口をかったるそうに開いた。「お前はどう見ても外の人間じゃないよ」
「着てる服も一見薄汚れてるけど、それ自体の価値は高そうだ。しかも武器も一つも持ってない」
「持ってるさ」
靴に仕込んでおいてあったナイフを取り出す。これは護身用に持ち歩いていた物だ。
少年は首を振る。「隠し武器ぐらいは持ち歩いてもらわないと困る。そんな脳も無しに外でやっていけると思ったら大間違いだよ」
いちいち、カチーンと来る言い方をされる。
「だけどサ。外の武装って言うのは持っていることを見せつけないと意味が無い。確かに意表を突くのも一つの手だが、みんな武器を相手も持っているていう大前提で戦うんだ」
少年の服装は非常に動きやすそうだ。シャツにズボン。そして靴はブーツの造りに似た革靴。シャツを腕まくりして、出入り口に一番近い、何があっても逃げやすい位置を陣取ってある。
完全に見破られていた。
「何の用でわざわざ外にでたのかはぁ、しらないけどぉー。中の門までぐらいならー、送ってあげるよぉ?」
「やめとけ。万屋をそんなことに使ったら後が怖いぞ」
「ヨロヅヤ? それ名前?」
“ヨロヅヤ”耳の奥で不思議な音が転がる。聞きなれない文字列だ。
「俺を万屋と呼ぶのなんてぇ。この旦那達ぐらいだしー?その他大勢にはスタンって呼ばれてんねー」
「ダンナ?」
「そんな古語使うのも万屋ぐらいだよ」
この変人奇人がっと悪態をついて少年はスタンを蹴った。ドシッと音がしたのでかなり本気の一撃だ。
「ダンナじゃなくてシェンだよ。シェンっ!」
顔をグッと近づけてきたので、シェンの鼻と自分の鼻との間がほとんどない。驚いて後ろに倒れた。それを起こす手助けは勿論なく、
「で?」と、一つ音を出されただけ。「お前は?」
「俺は、……ラギ」
ふーんと興味なさそうに(まぁ、興味は本当にないのだろう)言いながら座っていた椅子から立ち上がる。
「で?」と、また一つ返される。で?とは?
「本名は“ラグマ.A.トリスタン”、あのトリスタン家の身内じゃねぇの?。ぇ? あんちゃん」
シェンの目の色が変わり、俺の胸倉を掴む。想定外の力で身体が浮き、また鼻と鼻との間がなくなった。しかし、今度はシェンの細っこい腕によって倒れることは許されない。
「何で、そう思う?」
ヨロヅヤは無表情に傍観に徹していた。
「野生のカンっやつかなぁ」
そんな的確な野生のカンがあって溜まるか。
この時俺に残された手段はハッキリ言って、無かった。
この二人は“外”で生きてる二人だ。自分は戦闘訓練を受けたといっても所詮は“中”のお遊戯だ。技術も経験も何も勝らない。
シェンが野生のと言ったのも強ち間違いで無かった。胸倉を離さないシェンにはヨロヅヤと同じ無表情の中に冷徹な、且つ獰猛な獣が潜んでいる。
ヤられるーー。
覚悟よりも先に寒気に襲われる。
シェンは俺の胸倉を離さず体を捻りーー俺を背負い投げた。
はぁ?!
思う間もなくシェンの後ろの屋根が崩壊した。
- Re: LosT WoRD ( No.3 )
- 日時: 2012/12/19 22:20
- 名前: 碧 (ID: IcK/upD1)
面白いです!かっこいい話ですね!
更新頑張ってください(^-^)/
- Re: LosT WoRD ( No.4 )
- 日時: 2012/12/19 22:34
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: .GCH7A/G)
碧さん
ありがとうございます!!
かっこよく書きたいので言ってもらえると嬉しいです(・◇・)
またコメください。
- Re: LosT WoRD ( No.5 )
- 日時: 2012/12/22 17:08
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: .GCH7A/G)
『シェン? 今暇か?遊びに来いよ」
能天気な声が胸のポケットにいれてあった携帯から流れる。
「何だよクソオヤジ。今忙しぃんだけど」
『ばっきゃろう。そんな薄情な息子に育てた覚えはないぞ。こっちも忙しいなか掛けてやったんだ。泣いて喜べ』
「うぜえわ。クソオヤジ」
『シェン君たら照れちゃってぇ〜』
「忙しいっってんだよ。いいんだな家が全壊しても」
『いいわけあっか。シェン君が死んでも死守し』
携帯は胸を叩いてブチ切った。
今日は森で人を拾った。
『森』と言っても戦禍を逃れた本物の森は中にしかない。外の『森』はその戦禍によって出来た巨大なゴミ捨て場だ。戦争で使用されたか、される予定だった。戦車やヘタな武器がゴロゴロと落ちてあって、非常に危ない。しかも難を逃れた合成獣なんかも跋扈している。
俺の外見よりチョイ年上の外見をした少年だ。見た所小さな傷が多いが、致命傷になるような物はなかった。
中の人物だろう。上等な服を着ているし、隠してある武器もガラクタではない。
後からラギに言わせれば、「仕込みも分かってたのかよ!」と呆れるのだが、それは今はいい。
やっぱ拾うべきじゃなかったか。
獅子の背中から鳥の翼を生やしたキメラ、森で蹴り飛ばしておいたキメラが今、家を破壊した所だ。
「何こいつお前のペットだった?」
間一髪で後ろに放り投げたラギに言う。キメラはさすがに警戒をして、獣らしく唸っている。
「かわいいだろ。ポチっていうんだよ」
「可愛がってる割に向こうはお前を殺す気マンマンって感じだけど?」
「遅れた反抗期に手こずってんだ」
「ハン。発情期でなくて良かったな」
「ダンナぁ。銃いるー?」
「お前がやれよ」
キメラはラギを目指して飛んだ。一直線に、シェンを軽々と飛び越えて。しかし、シェンも跳んだ。シェンはドロップキックを獣の腹に決めた。
「キャァンっっ」
キメラが吹っ飛ぶ。それはどう見積もってもシェンの体系から出せられる範囲の力ではなかった。
「なっ!蹴り飛ばすか。あれを。俺はずっと地下水脈を逃げ続けたんだぞっ」
「やっぱお知り合いかよ。悪趣味なペットだな」
「お知り合いでもペットでもねぇよ。あのキメラは俺を捕まえようとしてんだよ」
「随分とガタイのいいベビーシッターだなっ」
シェンは万屋が退屈そうに弄んでいた銃を引ったくり、躊躇なくキメラを連射で撃った。バンっと銃声が響くと焦げた匂いが鼻を指す。とんだ不良品の銃だった。
「万屋ー。お前マジでいつか殺されるよ」
「旦那こそー」
銃を投げつけてやったが白けた顔をより白けさせただけだった。
「死んだのか?」
ラギが生死不明のキメラに気を許さずに近づいて来る。今のうちににげだそうという気はないらしい。
「下級のキメラ見たいだからな。元の動物が死ぬ程度の傷を受ければ死ぬサ」
「そうか……」ラギは納得したように頷いた。「死んだんだな」
「それでぇ?あのトリスタン家の子供が何で外を彷徨いてんのぉ?」
万屋が多少は細い目を開けてラギを見る。「まさかホントーにネゾーが悪くてでないよねー」
万屋の目が商売人の目になる。それも、ただの商売人ではない。“外”で生き抜く知恵を持った、ヤバイ方の商売人の目だ。始めて自分と会った時に見せた目である。
それが意味することはつまり、ここからはヤバイ方の話しになるわけだ。ただのアマちゃんは聞くべきでない話しだ。
万屋はタチが悪い。わざわざ俺を巻き込む為に俺を森に呼んだのだ。
- Re: LosT WoRD ( No.6 )
- 日時: 2012/12/23 13:02
- 名前: 狐乃宮 秋 (ID: .GCH7A/G)
ゴチャゴチャとした部屋に男が一人。少年か、青年か、丁度その堺に身を置いた男だ。
部屋のゴチャゴチャも変哲もない本や食べ物から、変哲しかない森にも落ちてなさそうな何か分からない武器らしき物から何でもある。
そんな男が呟くことは一つ。
「暇だー」
隣で爆音が唸り、銃声が連続で叫ぶ。
「退屈で死ぬるー」
れ、れ、る、るる、るれ、れよ。
受身、尊敬、可能、自発。下二段型カツヨウ。
バッコーンっ。
耳を劈く破壊音は隣で続いていた。
『あの』、トリスタン家。
そんな言い方をされるのも無理ない。
トリスタンと言えば『あの』、世界を破壊した戦争の武器開発責任者である。結局、勝者を決めず敗者しか生まなかったあの戦争を助長させた一人であるわけだ。
しかし、その財力、権力、知名度あって世界が壊れた今も街の中の立派な権力者で通っている。
「評判は外でも聞いてるよー。あんなことになった今でもさー。新型機械ニンギヨーを開発しているんだよー。とか、タイリョー生産型の手軽ぅなじゅー作ってるとか」
ヨロヅヤの話し方は不器用な間延びが多い。その所為で音痴な歌のように聞こえて集中ができない。
「でもさー極め付けはあれかなー?」
「不老不死者のホムンクルス」
ハッキリと聞こえたのはシェンがヨロヅヤの言葉を奪ったためか、的を射すぎていたからか。
「錬金術師達が外でも騒いでたな」
「ハドスのじぃーさんまで騒いでたなー」
「戦争前からの錬金術師の夢だからな。仕方ないのかも知れねぇがうぜえ」
「旦那はうぜー言い過ぎじゃねぇ?」
半壊した家の中、二人はゴソゴソと瓦礫の中から何かを探していた。
「でさ、その“不老不死者のホムンクルス”を作ろうかっていう家のお坊ちゃんがどうして家の番犬に襲われてんの?」
やっと訊いてきたと思ったら、ラギは薄ら笑いを浮かべるしかない。
「例えば、自分の父親が胡散臭い実験を家の中でしていたら気分がいいか?言い訳ないだろ?」
「何だー?ただの家出ぇ?」
ヨロヅヤの顔は笑っているが、その真実はラギが今ヨロヅヤの前にいる理由がただの家出ないと分かっている。
お前の逃走劇は全て知っているぞ。
言葉を発せずに人を脅迫している。
「家出はしたかった。父親が何をしているのなんかは殆ど知っていたしな。でもわざわざ命の危険を犯してまで出てきたのは違うよ」
それでも、少なくとも半分は嘘をついた。
「俺の戦闘訓練の先生に言われたんだよ。『逃げろ』って」
「『逃げろ』ってまさか」
シェンが何かを探すのをやめて、顔を引き攣らせる。
今までトリスタン家がやってきたこと。
話の流れ。全部含めて考えたら答えは自ずと出る。
「そのまさか。あのイカレお父様は到頭息子にまで手を出そうとしだしたんだ」
そう吐き捨てるラギの言い様は、皮肉なことに“中”を語る“外”と同じだった。
シェンはそれを笑って、「それは。お疲れ様」とだけ言った。
シェンは今度は大笑いをし、「残念だったな万屋ー。お前の『お礼ガッポリ作戦』は終わったな」
「ちぇー」
「『お礼、ガッポリ……』」
あぁ。気にしないでねぇ。と、言うが、大事な問題だ。
「外に出たら、用事があったんだよ。それを手伝ってくれたら、『お礼』も出す。どうだ?」
二人の返事はしばらくなった。
「それで、さっきから何を探してるんだ?」
二人は乱暴に瓦礫を除く作業を繰り返している。
「ん?」シェンはやっとその作業を終えて何かを引っ張り出してきた。
「それー」
「これがないと違和感あんだよね」
大きな日本刀。
シェンはそれを一閃し、背中の鞘に収めた。普通の長剣程の長さがあり、腰にさすのは物理的に不可能。
「な?見せないと意味がない」
シェンの笑い方は独特だ。にっと歯を出すがそれが片方だけ深くえくぼができる。そのえくぼのおかげで幼さに拍車がかかるがそれに騙されてはいけないことはついさっき理解した。えくぼが消え瞳に色がなくなれば可愛らしい幼さもより一層恐怖を煽る。
「それで、ラギ。その仕事って?」
やっと興味を示しだした少年の背中には立派に人を殺せる日本刀。腰にはホルスター。その中に銃が三丁シンと眠っている。しかも、使い道が分からない工具が乱雑につながれてあった。艶やかな赤髪は好き勝手に跳ね、団体行動を知らない。くたびれたシャツにズボンはそれでも少年には大きい。
ラギが見るからに中の人なら、シェンは相当“外”の子供であった。
ラギは外に来たのは初めてだ。中では外は伝染病が張り込み、ゴミ溜にゴミと共存できるクズしか生き延びれない場所であると言われたり、言葉も知らない野蛮人が闘技場で荒金を稼ぐために殺し合いをし、それだけでは飽き足らず、闘技場以外でも殺戮を繰り返したりしていると言われている。
目的を果たすために必要なのは強力な協力者である。
「簡単なことさ。俺を無事に東西南北のスラムリーダーの所に連れて行ってくれればいい」
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