コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 【執筆場所・移動…】ウェルリア王国物語〜眠れる華と紅い宝石〜
- 日時: 2013/07/10 02:18
- 名前: 明鈴 (ID: 607ksQop)
——私は一体、何者なんだろうね。
「CHAPTER2 号外-An unknown place- リィの言葉」
————————————————————————-−−−−━━━━★
〓【複雑・ファジー小説板に移動しました。】
2013.06.15から、
ここ「コメディ・ライト板」で執筆していた『ウェルリア王国物語』でしたが、
今後の小説の展開的にどうしてもシリアスシーンが長々と続いてしまうので、
この板は相応しくないなと勝手ながら判断いたしました。
で、このスレは削除の方向で、
この物語は「複雑・ファジー小説板」相変わりなく毎日更新に励みたいと思いますおさん。
本当に突然で申し訳ございません。。
いつも応援してくださっている方々、本当にありがとうございます。
この場を借りてお礼申し上げます。
そして、もしよろしければ、別の板での執筆の応援、
よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
2013.07.08*明鈴
****
〜目次〜
【主な登場人物】>>6
【prologue 始まりの場所-The last-】>>1
【CHAPTER1 出発の朝-On a Lapool island-】>>11
【CHAPTER2 号外-An unknown place-】>>12-13
【CHAPTER3 梟と少年-Imperial prince-】>>22
【CHAPTER4 偽りの仮面-A prince's rumor-】>>26
【CHAPTER5 時の番人-Momentary relief-】>>27
【CHAPTER6 王子の隠れんぼ-Ranaway-】>>28
【CHAPTER7 嘘つきの代償-Secret-】>>31
【CHAPTER8 招かれざる客-Red jewelry-】>>33
【CHAPTER9 良心の呵責-Conscience-】>>37-39
【CHAPTER10 予想外の襲撃-Visitor-】>>42
【CHAPTER11 師弟の関係-An old teacher-】>>51-52
【CHAPTER12 不穏な行動-He telephones.-】>>53-54
【CHAPTER13 旅立ち-It is meaningless.- 】>>58
【CHAPTER14 虚偽の王子-Sister-】>>59
【CHAPTER15 追跡者の考察-At a Wellria castle-】>>64-65
【CHAPTER16 追跡者の考察2-Give and take-】>>66
【CHAPTER17 見破られた正体-Disclosed true character-】>>68
【CHAPTER18 研究員の見解-A soldier's purpose-】>>87
****
〜参照300記念企画〜スピンオフ
【番外編 ウィルア兄妹の日常-The volume on extra-】>>72>>75>>81>>85【完結】
****
・作者の整理ブツ(^◇^;)⇒【用語解説1 表向きの歴史-explanation-】>>55
・作者の独り言 >>71
****
ファンタジーもの+若干の謎解き要素ありです。
わかり易く伏線を張っているつもりなので、
今後の展開や登場人物について、
アレコレ憶測を巡らせて見てください。
ご感想・アドバイス等頂けたら嬉しいです(#^.^#)
■
〜お客様♪-ご感想頂いた順-
*七海 様 *紫隠 様 *友桃 様
*小虎。様 *カサゴの刺身 様 *シア 様
*書き述べる 様 *凛 様 *伊織 様
いつもありがとうございます(^^ゞ
>>副題提供者:紫隠さま♪
★━━━━−−−−————————————————————————————————
参照50突破*2013.06.17
参照100突破*2013.06.20
参照200突破*2013.06.27
参照300突破*2013.06.30
参照400突破*2013.07.05
書き始め日*2013.06.15〜2013.07.08
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- Re: 【題名考えて欲しいです】キリと紅い宝石(仮)【ファンタジー】 ( No.9 )
- 日時: 2013/06/16 11:18
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
はじめまして^^
同じくコメディ・ライトで書かせていただいております、友桃(ともも)と申します。
小説読ませていただきました!
なんだかもう惚れ惚れしてしまうような描写で、一気に物語に引き込まれましたv 本気でハマってしまいそうです……!!
それと雰囲気がとっても素敵でしたv なんだかあったかくて^^
今後平凡な日常から離れたときに、冒頭のこの穏やかな幸せな感じの雰囲気がすごく効いてきそうだなぁって思いました。
これからの展開がとても楽しみです! また読みに来ます。
更新がんばってください(^^)/
- Re: 【題名考えて欲しいです】キリと紅い宝石(仮)【ファンタジー】 ( No.10 )
- 日時: 2013/06/16 23:24
- 名前: 明鈴 (ID: jBbC/kU.)
>紫隠さん
ありがとうございます!
『眠る華と紅い宝石』…!!
なんという素敵ネーミングセンス(-^〇^-)!!
今後の展開を考慮して、参考にさせて頂きます…!!!
ありがとうございます(´▽`〃)
>友桃さん
沢山詳細に感想を書いて下さり、とても嬉しいです(><〃)
ありがとうございます。
更新する甲斐があります。頑張ります(#^.^#)
- Re: 【題名考えて欲しいです】キリと紅い宝石(仮)【ファンタジー】 ( No.11 )
- 日時: 2013/07/03 01:38
- 名前: 明鈴 (ID: 607ksQop)
■CHAPTER1■ 出発の朝-On a Lapool island-
「ほら、キリーっ。朝ですよー」
下の階から、リィの声が聞こえてくる。
きっと鍋の中身をかき混ぜながら、階段の所までやってきて叫んでいるのだろう。
2階の一番奥にあるキリの自室にもはっきりと聞こえるのだから、そうに違いない。
キリは、もぞもぞと布団の中で体勢を変えながら、そんなことを考えた。
しかし、いっこうに起きようとはしない。
そう、さすがのキリも睡魔には勝てなかった。
「起きなさーい!」
「んんん…。もう少し…」
「キリい、今日はウェルリアに行くんじゃなかったのー?」
一瞬の間。それから、
「そそそうだったあああああ!!」
キリの絶叫とともに、朝食を皿に盛りつけているリィの頭上で大きな鈍い音が響いた。
++++++++++++++++++++
月に一度、キリ達は隣国のウェルリア国に買い出しに行っていた。
『隣国』といえども、キリ達が暮らしているラプール島は『離島』、つまり周囲は完全に海で囲まれている。
そこから船で1時間ほどの場所に、ウェルリア国はあった。
世界でも1、2位を争う強国であるウェルリア国。
島の人々はよくそこへ出稼ぎにでたり貿易をしたりと、ウェルリア国との交流を盛んに行っていた。
現に、季節を問わず毎日1時間に2本のペースでラプール島とウェルリア国間の渡船が行き交っている。
「キリー? 行かないのー?」
「行きます、起きます、一気に支度しますっ!」
言うや否や、ばっと布団をはねのけ、キリは急いでクローゼットからお決まりの黒のプリーツスカートに白のブラウスを取り出した。
手早く着替えてから洗顔も済ませると、次に、肩あたりまである髪の毛をものすごい速度で梳かし始める。
普段、どれだけ剣を振り回していても、どれだけ大食いでも、やはり女の子である。
ゴムを口にくわえながら、ほつれている髪の毛を綺麗に梳かし、茶色がかった髪の毛を上の方で二つくくりにする。
それから枕元に置いていた小型の短剣——柄の部分にはめ込まれた紅色の艶やかなルビーを主としていて、その周りに小さな宝石が散りばめられた、非常に手の込んだ装飾が施されている——を掴むと、腰に提げた。
これでキリの普段のスタイルの完成である。
——この間、わずか3分半。
キリは脱兎のごとく部屋から飛び出すと、1階へ駆け降りた。
「じゃあああん! ほら、準備完了! さ、早くウェルリアに行こう! 早く!」
「その前に、」
誇らしげに胸を張るキリに、
「まずは、私の作った朝ごはんを食べましょうね」
「……はあい」
終始笑顔のリィだったが、放った言葉は凍るようなトーンであった。
++++++++++++++++++++
詰め込むだけ食べ物を口に詰め込んで、かき込めるだけ食べ物を口にかき込んで、牛乳で口の中のものを胃に流し込む。
「ごひほうはまれひた〜(ごちそうさまでした)」
いっぱいいっぱいになりながら、ドンドンと胸板を叩いてむせ返るキリ。
やはり一気に食べると苦しいものだ。
キリは食卓から立ち上がると、ふと周囲が気になり、キョロキョロと辺りを見回した。
今まで近くにいたはずのリィの姿が見当たらない。
「あれれ。リィさーん?」
自室に戻ったのか。
キリは2階に上がり、階段のすぐ脇にあるリィの寝室に向かった。
ドアが閉まっている。
「リィさあーん…」
「………」
ドアの向こうから、返事は無い。
「リィさーん、入るよー?」
首をかしげながらキリはゆっくりとリィの寝室のドアを開ける。
寝室の中に、人の気配はなかった。
しかして、シン——と張り詰めた異様な空気が寝室に蔓延している。
「なんだろ……この感じ……」
しばらく神経を研ぎ澄ましてリィの部屋に立ち尽くしていたキリは、そこで、机の上に無造作に置いてある小箱に気がついた。ちょうど、キリの両手にすっぽりと収まる大きさの正方形の箱である。
この箱の周囲だけ、明らかに空気が違う。——気がした。
キリは、思わずゴクリと生唾を飲んでいた。
『今ここで、この場で、この箱の中身を、確認しなければならない』
キリの頬を冷たい一筋の汗がつたう。
何故だか分からないが、瞬時にそう思ったのだった。
——中身を確認しなければ。
ゆっくりと息を吐き出し、周囲を伺う。
——ドアを閉める。
そして机に向き直ると、両手でそっと掬うように小箱を持ち上げた。
蓋を開けようと左手を添えたところへ、
「キリー、もう食べ終わったのー?」
「っ……?!」
声を聞くやいな、キリは小箱を元の場所に放り投げていた。
次の瞬間、ガチャッとドアのノブが回り、ドアの隙間からリィが顔を出した。
「キリぃ。こんなところで、何してるの?」
裏表もない、素直で率直な質問だ。
「あ、あの……あの……っ」
「ん?」
焦ってろれつが回っていないキリに、リィは満面の笑みを向ける。
——ああ、笑顔が眩しいっ!
「り、リィさんを、探してたのよ。一体全体、どこ行ったのかなあーって。うんうん」
「ごめんごめん。洗濯物を取り込んでたのよ。用意はもう出来た? じゃあ、行きましょうか」
「う、うん」
平然を装って、キリはリィの寝室を後にした。
++++++++++++++++++++
玄関に向かう途中でリィが思い出したように声をあげた。
「ごめんキリ。大事なものを持ってくるの、忘れてたわ。取りに戻るから、キリは先に外に出て、待ってて」
「あ、うん」
ごめんね、と眉尻を下げてパタパタと廊下の奥へと姿を消したリィを肩ごしに見送って、キリは靴をつっかけて表へ出た。
青い空に白い雲。爽やかな風がキリのスカートをはためかす。
今日は絶好のお出かけ日和だ。
「んーっ!」
新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで、深呼吸。
「やっぱり朝の空気は新鮮だなあ」
——でも……。
キリの胸の内は、もやもやしていた。
——さっきのあの箱、あれは一体……。
嫌な感じがした。
言い表せない何か。
胸がざわつく……。
気のせいだと思いたい、が。
「うんそうだよ。気のせい、気のせい!」
「何が『気のせい』なの?」
「うわわわわ!」
背後から声をかけられ、思わず反射的にのけぞるキリ。
もちろん、声をかけた人物は、リィその人であった。
「んな、なんでもないよ! うん!」
「そう?」
「ところでリィさん! 忘れ物、とりに戻れた?」
「ええ。ほら」
リィが差し出したそれは、キリが先ほどから気にしていた例の【小箱】であった。
相も変わらず、小箱は異様な雰囲気をまとっていた。
「あ、うん。そっか。それは良かった。です」
取り繕った言葉でしか反応ができず、キリはひきつった笑顔を浮かべてその場を収めた。
『ボーッ』
その時、船の出航合図の汽笛が辺りに響き渡った。
身体を揺さぶるような汽笛の音と同様に、キリの心も不安に揺さぶられていたのであった。
————————————————————————-−−−−━━━━★
次⇒【CHAPTER2 号外-An unknown place-】>>12-13
- Re: 【題名考えて欲しいです】キリと紅い宝石(仮)【ファンタジー】 ( No.12 )
- 日時: 2013/06/28 02:59
- 名前: 明鈴 (ID: OMeZPkdt)
■CHAPTER2■ 号外-An unknown place -
「うっわあああ! すっごいキレイー!」
目の前には太陽の光を反射してキラキラと輝いている海が広がっている。
キリは手すりを掴んで思わず身を乗り出していた。
ここはウェルリア国に向かう渡船の甲板の上。
船内は、出稼ぎや観光、買い出しなどの様々な目的でウェルリア国に向かう乗客たちで溢れかえっていた。
ちなみにキリとリィは1ヶ月分の生活用品の購入目的でこの渡船でウェルリア国へと向かっていた。
ラプール島にある建物は住宅がほとんどで、日用品を売っている店はほとんど無いに等しい。
島の住人のほとんどは、日常用品をこうしてウェルリア国に買いに出ていた。
++++++++++++++++++++
キリは、しばらく身を乗り出して潮風を浴びていた。
そうして、風に髪の毛をなびかせながら笑顔を浮かべているリィを振り返った。
「ねえねえリィさん、見て見て見てっっ! 海、キレイだよお!」
興奮で声が上ずる。
リィは船の甲板ではしゃいでいるキリを見て、クスリと笑った。
「ああ。そうそう、キリ」
「ん?」
ふとリィに声をかけられ、キリは、はたとはしゃぐのをやめた。
「なに?」
「ウェルリア国についたら、どこに行きたい?」
「え、好きなところ行って良いの?!」
「私も着いたら少し寄りたいところがあるし。帰りの船までたっぷり時間もあるし」
「わあっ」
「どこ行きたい?」
「じゃあじゃあっ、えーっとね、えーっとねえ」
キリの頭の中に、沢山の食べ物が浮かんでは消えていく。
「ウェルリア国名物ジャンボたこ焼きでしょお、元祖バニラ味のソフトクリームにい、……あ、この間お隣さんに貰ったマドレーヌも美味しかったなああ。あのマドレーヌ、ウェルリア国限定品なんだって! ……って、あれ。リィさん?」
よだれを必死で拭いながら指折り数えて話していたキリは、リィが左手で額を押さえていることに気がついた。
「どうしたの? あ、もしかして、船酔いした?」
「キリ。まったくあなたって子は……」
「ほあ?」
幸せそうな表情を浮かべるキリに対して、ため息混じりに「仕方がない子なんだから」と呟くリィであった。
「ごーがいっ! 号外だよお!!」
突如、一人の男性が声を上げた。
その声に驚いてキリがキョロキョロと辺りを見回すと、先ほど声を上げた男性がショルダーバックから紙を無造作にひっつかんで、船内にばらまいている姿が目に入った。
「号外、号外! ウェルリア国第一王子についてのニュースだよー!」
「ゴー、ガイ……?」
言葉の意味を模索しているキリの目の前にも、一枚の紙が降ってきた。
「『号外』っていうのはね、事件とかをいち早く私たち国民に伝えるために臨時で新聞を発行して、こうして配布してくれるもののことを言うのよ」
甲板に落ちていた紙を片手に、リィが教えてくれた。
「ほおお……。大事件、ですか」
「まあねえ。ウェルリア国にしたら、一大事なんだと思うわよ」
「へ?」
「ほら」
リィはそう言って、キリに紙を差し出した。
その号外を見る限り、どうやらウェルリア国の第一王子が城から逃げ出したらしい旨が書かれていた。
国王は国軍から兵士を手配し、王子を探しているが、依然消息は掴めておらず、捕まえた者には褒美を出す、とのことだった。
「王子様でも、何か嫌なこと、あったのかなあ」
「あらあ、王子様も立派な一人の人間よ、キリ」
「それは分かってるよう。……ああーっ! 王子様、かあ……」
「……キリ?」
リィは嫌な予感がして思わずキリの顔を覗き込んだ。
話の雲行きが怪しくなってきた。
「王子様よ、王子様っ。私がもし王子様だったらあ、毎日美味しいモノ、いーっぱい食べて、幸せに暮らすと思うんだけどなああ」
「………」
こうなったキリには何を言っても無駄である。
妄想世界へトリップしたキリは、聞く耳をもたない。
「もし私が王子様だったらねえ……。うふふふ。シュークリーム食べてえ、チョコパフェ食べてえ……、あ! ジャンボたこ焼きも良いなああ。ぐふふふ」
しまいには変な声が漏れ出している。
今なら、「この子が王子を誘拐しました」と国王へ突き出しても通じるであろうほどの変質者っぷりである。
リィはそんなキリから少し離れた場所にあるベンチに腰を下ろした。
脇に紙を置く。
「………」
一息つく。
そこへ、ようやく現実世界に戻ってきたキリが駆け寄ってきた。
「リィさんっ」
「……キリ」
リィに駆け寄るために全力でダッシュしたことと、先ほどの妄想による興奮で息を荒げているキリ。
そんなキリを見上げ、リィは静かに息を吐いた。
その表情は、心なしか、憂いを帯びている。
「キリ」
リィの瞳が揺れる。
「私、一体何者なんだろうね」
- Re: 【題名考えて欲しいです】キリと紅い宝石(仮)【ファンタジー】 ( No.13 )
- 日時: 2013/07/03 01:44
- 名前: 明鈴 (ID: 607ksQop)
リィの呟きは、キリの心にもズシンと重く響いた。
「自分は何者なのか」——それは、キリも分からなかった。
その昔、リィも記憶喪失でラプール島に流れ着いたという話は聞いていたが、キリ自身も、赤ん坊の頃にラプール島に流れ着いた身。
自分自身の生い立ちどころか、両親の顔もロクに覚えていない。
「何者、なんだろ。私」
——不安。
そうだ。王子様は、王子様であって、他の何者でもない。
では、と心の中で自問自答をする。
——私は、私であって……。何?
けれどキリは、もし自分が何者なのか分かっても、リィが何者であっても、ラプール島から離れることはないと思っていた。
リィとも、何があっても離れることはないと思っていた。
「……みんなが、大好きだから」
「ん? 何か言った? キリ」
「んーん。なーんでも無いっ」
++++++++++++++++++++
船は暫くして、港に着いた。
汽笛を背にして、キリとリィは海沿いの街を歩いていた。
「これから、まずはどこに向かうの?」
ひたすら石畳の道を縫っていく。
傍らには漆喰の壁で囲まれた住居が規則正しく並んでいる。
リィは周りには一切目を向けず、黙々と歩いていく。
うって変わって周囲に興味津々のキリは、見慣れない植物を見つけては立ち止まり、見慣れない昆虫を見つけては立ち止まり——そうしているうちにリィの背中が少しずつ遠のいていく。
キリはその度にリィの後を駆けていくのだが、また立ち止まっては周囲を見渡し、距離が開いてはまた駆ける——。
目的地にたどり着くまで、終始この繰り返しであった。
そのうち、一風変わった外見をしたモダンな建物が見えてきた。
リィの歩む速度が次第にゆっくりになっていく。
入口の前で立ち止まると、リィは少し遅れてやってきたキリを振り返った。
「キリ」
「ん?」
「これ、預かっておいてくれる?」
ギュッと押し付けるようにして渡されたのは、キリがリィの寝室で見つけた例の【小箱】だった。
「これはね、とっても大切なものなの。だから少しでも中の物を見たり、触れたり、ましてや壊してしまうなんてことは、絶対にダメよ。もし守れなかったら、ただじゃ済まないからね」
いつものように終始穏やかな笑みを浮かべているが、リィは脅しともとれる言葉を羅列して、もう一度キリに強く念を押した。
キリが「うん」とも「はい」とも返事をする間もなく、リィはそのまま吸い込まれるかのように建物の中へ入ってしまった。
「ほへ……」
表の看板には、『喫茶ジュリアーティ』と洒落た書式で書かれている。
「喫茶店……」
しばらく呆然と建物を見つめていたキリは、慌てて態勢を立て直した。
そして、
「なによお、リィさんのクセして。喫茶店なんだったら、なにも外に締め出す必要なんてないでしょうがっ」
リィに対する不平不満をひとしきりぶちまけて、ひと呼吸。
そして、どこかに休憩できる場所はないか辺りを見回すキリ。
が、周囲は白を基調とした住居しかなく、建物の間は細い路地が敷いてあるのみだった。
「……困った」
小箱をギュッと握り締める。
と、突如キリの耳に、僅かにだが、荒い息遣いが飛び込んできた。
————————————————————————-−−−−━━━━★
次⇒【CHAPTER3 梟と少年-Imperial prince-】>>22
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