コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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夏の秘密 【12.14 ファジーへ引っ越します】
日時: 2014/12/14 16:39
名前: まーにゃ ◆znJHy.L8nY (ID: WoqS4kcI)

 
 誰にでも、絶対に知られてはいけない秘密は存在する。
 例えそれが、親友であっても、恋人であっても、家族であっても。

 なぜ知られてはいけない?
 その答えだって、鍵をはずすことはできないのだ。

 これは、己を守り抜く、夏の戦い。


 

*******************
こんにちは。まーにゃと申します。
今は冬ですが、舞台は夏の小説です笑
コメディなのかシリアスなのか、非常に曖昧で迷ったのですが、こちらに投稿しました。
ぜひお時間のある際に、ちょろっと読んでみてくださると嬉しいです。
感想などもしありましたらよろしくお願いいたします。

◆訪問数100達成ありがとうございます。

◆全体的に少々描写の追加訂正を致しました。(12.14)


◇引っ越しのお知らせ >>28

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Re: 夏の秘密 ( No.4 )
日時: 2014/12/14 00:45
名前: まーにゃ ◆znJHy.L8nY (ID: WoqS4kcI)

 いかにも暑がってる人みたく右手で緩慢に顔を扇ぐハルくんに、伏せめがちで答える桐ちゃん。そんな二人の、先が見えそうにない会話に割って入ったのは蓮香だった。その顔は明らかに、イラついている。
「ていうかあんた等じれったい! 学くんも、待つなら待つではっきり言いなさいよ! バカじゃないの? 柚野くんに賛成する気ないけどあたしはこんな所突っ立ってられないから。じゃあね」
 きっつい言葉を落とし、蓮香が券売機に向かおうと足を踏み出した時だった。
「すいません、1時間10分前くらいに着いたんですが、皆揃いそうな時間まで近くの喫茶店で待機していて。暑いのは好きじゃないので」
 汗一つかいていない純さんの突然の登場に驚いたのは、私だけでないはずだ。

***************

 ほんとうはあまり乗り気じゃなかった。
 いや、あまりというレベルじゃなくて、かなり乗り気じゃなかった。
 ——2週間の、ハルくんの家での集中合宿。
 ハルくんが提案したことだった。合宿という以上勉強するは勿論だけど、単純に夏休みの思い出づくりがしたいという、ハルくんの思い付きのアイデアだった。ハルくんと仲の良い桐ちゃん、たまたま桐ちゃんの隣の席だった蓮香、ハルくんの隣の席だった私、そしてハルくんの後ろの席だった純さんが、今回の合宿に参加することになったメンバーだ。
 もともと深いつながりがある5人ではなくて、単なるクラスメートというだけの仲なのだけど、私はみんなのことを嫌いではない。ハルくんは今年の4月に転校してきたばかりで、知り合ってから日が浅いけど、明るくて楽しいムードメーカー。桐ちゃんは、大人しいけど頭も良くて優しい。純さんは、いつも正しくて品があって紳士的。蓮香は第一印象こそ冷たいしドライだけど、可愛いところがあるのも私は知っている。みんな個性があって、私はそんなみんなのことを面白いと思っている。
 それだけに、初めは合宿のことを聞いて楽しそうだと思ったし、是非参加したいとも思った。
 そう思ったけど……。
 私には、秘密がある。
 合宿の2週間、隠し通せる自信もない。ハルくんの勢いに負けて合宿に参加することになったものの、憂鬱な合宿になってしまいそうな予感がしてならなかった。

 電車に乗って10分程で辿りついた、西東京市の田無町。住みたい街ナンバーワンの吉祥寺から30分程度離れたこの町に、ハルくんの家はあるらしい。駅前には大型のスーパーがあって、カフェや本屋、ファーストフード店にレンタルビデオ屋など、生活に必要そうなお店が軒を連ねていた。ドラえもんのアニメを描いている会社はこの町にあるんだぜ、なんてハルくんが得意気に自慢をしていた。
 みんなはどうして合宿の参加を決めたんだろう……。そんなことを考えながら、ハルくんの家を目指し、随分、歩いた。暑さのせいで会話が少なかった為か(1名、喋る子がいるけれど)、その無言の時間が、そっくりそのまま距離に反映されてしまったような気さえした。
 よりによって、今年一番の気温になると予報されていた今日という日に、ファッションを重視してレギンスを履いてきてしまったのは失敗だったかもしれない。いや、それよりも、履きなれていないこのミュールを履いてきてしまったことの方が、致命的だった。先程から小指を靴擦れしてしまって、一歩一歩の負担がいつも以上に大きくなっていた。ミュールは、男の子もいる合宿に参加すると聞いたおばさんが、妙に張り切ってしまい、先日靴屋で買ってくれた代物だった。取り付いた赤のリボンが可愛らしく、当初私もひどくこれを気に入った。だけど、こうなることが分かっていれば、履いてこなかったと思う。

 目の前を歩いている桐ちゃんが、アボカドの日本名はワニナシだよ、なんていう雑学をハルくんに吹き込んでいる頃、その家は見えた。
「ついたぞ。みんな」
 ちら、と振り返りハルくんはそれだけ言った。
 その一瞬の表情では何とも分からないが、私が想像していたよりハルくんは家への到着を喜んでいる様子でもないように思えた。もっと、こう……そう、「よっしゃ着いたぜ! これから夏が始まるな、イエーイ!」みたいなノリでくるのかと想像していたから、意外と言えば意外だった。実は、彼も少し疲れてしまっていたのかな……。
 いつの日かの会話で聞いていた通り、ハルくんのお家は二世帯住宅で、手入れを怠っていないのが素人目でも十分わかる大きな庭が、そこには広がっていた。

「ただいま、じぃちゃん。友達、連れてきたよ」
 玄関の前。ハルくんの視線の先に、バケツと水柄杓を手に下げたお爺さんが、立っていて。
 お爺さんはハルくんの言葉に返事をすることはなく、代わりといえば、無言で私たちの顔を舐めるように、一人ずつ順番に見てきただけだった。その目つき一つだけで、ハルくんと性格が似ていないというのを感じ取れてしまう程の威厳だ。眉を顰めた厳しそうな顔つきを崩すことなく、最後尾の純さんまで見終わったら、お爺さんはこれまた無言で頷いて、家の中へ入っていこうとした。
 それを阻止してしまったのは、私だった。世話になるため用意したお土産を渡さなければ、そう思ってのことだった。

Re: 夏の秘密 ( No.5 )
日時: 2014/12/09 00:43
名前: まーにゃ ◆znJHy.L8nY (ID: WoqS4kcI)

>>如月胡桃 様

コメントありがとうございます!
わわわ、傷なめ合い倶楽部も読んでいただけているなんて、まさに狂喜乱舞……!
一つに集中しちゃうとどうしても方向性を見失いがち(?)になるので、今回は息抜きも兼ねて恐れ多くもスレたてをしてしまいました笑
キャラクターにまで感想を言ってくださるなんて感涙です( ;∀;)
ゆるゆると書いていきますので、是非またお暇なときにでも遊びに来てくださいね^^

Re: 夏の秘密 ( No.6 )
日時: 2014/12/13 23:22
名前: まーにゃ ◆znJHy.L8nY (ID: WoqS4kcI)

「あ、ちょ、待ってください! お土産!」
 咄嗟のことで、お爺さんの肩を掴んでしまいそうになった。そんな私の手を引っ張って止めてくれたのは、純さんだった。「待て」純さんはそう言っていた。
 お爺さんは少しだけ私を振り返り、きつく睨んで、また足を動かし家の中へと姿を消してしまった。めんどくさ、蓮香の吐き捨てるようなつぶやきが聞こえる。私は動揺してしまって、この状況に何一つコメントすることは出来なかった。

「……あ。わ、悪いな、ほのり! お土産は後で俺がじぃちゃんに渡しておくよ、あはは! なんてーかさ、じぃちゃん、俺にも全く関心ないっていうか、前々からそうでさ、いつも一人みたいな、ま、まあでも気にする必要ないから! て、ていうかさ、俺らでお土産食べちゃおうぜー? なにそれ、まんじゅう? 俺こしあん派なんだけど!」

 曇ってしまった空気を取り払うように、あからさまに明るい声を出してくれたハルくんの顔は、無理やりつくった笑顔そのものだった。いつも笑顔が絶えない彼に、似合わないその作り笑顔は、人一倍悲しいはりぼてのように見えた。
 でも、ハルくんの言葉に、私は間違いを一つ見つけている。
 乾ききった玄関前。お爺さんは、間違いなくハルくんを待っていた。とうに水撒きは終わっていたのに、暑い中、ハルくんを待っていた。その手にわざわざバケツと水柄杓を持って。

「ごめんね。お土産、石鹸なんだ」

***********************

 ああ。麦茶美味し……。
 来たばかりでいきなりじろじろと見てしまうと失礼な感じもしたが、なんとなく周囲が気になってしまい居間を見回す。十畳ほどの和室の中央には年期の入った丸くて大きなちゃぶ台、壁に掛け軸、襖をくぐれば台所がある。そして入り口正面に並んだの障子の向こうには、縁台と、先ほど目にした大きな庭が広がっているようだった。こざっぱりとしていて、余計な物はあまり置いていないようだ。ぬいぐるみやら何やらで飾った私の部屋とは根本的に違った、シンプルで開放的な部屋で、複数人で過ごすには最適な環境に思えた。二世帯住宅のうち東側はお爺さんの家だそうで、立ち入りを禁止されている。西側のハルくんの家——この度私たちがお邪魔させてもらう家は、昔ながらの日本のお家といった造りになっていて、全ての部屋が和室になっているらしい。
 二階の空き部屋に荷物を置いた後、ハルくんの提案で、寝る際の部屋割は男3人女2人で別々の部屋、ということに決定した。男の子はハルくんの部屋、そして私たちはその隣の一室を使わせてもらえるようだ。
 差ほど仲の良いわけではない蓮香と二人きりというのに戸惑いが全くないというわけでもないけれど、嫌というわけではないので頷いた。もしかしたら、皆も私と似たような理由で賛成しているのかもしれない。蓮香は部屋割を決めるのが面倒くさくて、桐ちゃんはハルくんの提案だから異論なし、純さんは皆の意見を尊重した、というところだと思う。


「ハル、お昼ご飯どうするの?」
 其々、荷物の整理をしたり、雑談をしたりで各々の時間を過ごしていたころ、不意に桐ちゃんが時計を目にしながら言った。もうこんな時間なのね、呟いた蓮香が、読んでいた文庫本を閉じた。つられて私も時計を見ると、短針と長針は丁度12の上で重なっていて。

「くくくっ。まーなーぶー! その質問を俺はずっと待ってたぜー?」
 先程から一人で何やら作業をしていたハルくんが、突如として不気味な笑い声をあげたもんだから、思わずどきっとした。それ以上に、ハルくんに向けられた蓮香の冷ややかな視線に気づいてしまって、更にどきっとさせられた。あはは……。
「なんなのよ、突然。気持ち悪いわね」
「じゃーん! これを見ろ!」
 蓮香のバッサリ切り捨てるような台詞もお構いなしにニヤりと笑ったハルくんは、竹ひごの束を高い位置に掲げて、得意気にそれを私たちに見せつけてきた。

「飯の調理は毎日2人組みを決めてやってもらう! ペアの決め方はこの5本の竹ひご! 2本だけ黒が混ざってるから、それを引いた奴がその日の食事当番な! 運悪ければ毎日当番になるぜ? スリルあって面白いだろ、あはは!」

 なるほど、それでさっきからこそこそと、その竹ひごのクジを作っていたのか。
 ハルくんを見ていると、面白いか、面白くないか、が彼の全ての行動の基準になっているように思える。どちらかと言うとつい平穏ばかり追いかけてしまう私にはない、その思い切りの良さがちょっぴり羨ましくも思える。
 
「良い案ですね。クジで決めてしまえば文句のつけようがないですし」
「お、純! やっぱり話が分かるなあ。んじゃお前から早速、ほら、引け」
「え、僕から、ですか? まあ、良いですけど」
 テンポよく(というより若干強引に)事を運んでいくハルくんに、流石の純さんも戸惑いがちにクジを引く。「あ」この場の全員が声を揃えた。純さんの引いたクジの先端に、黒の墨が染み込まれていたからだ。
 これが、ハルくんの言っていた外れクジか。っていうか、トップバッターにしていきなり外れだなんて、純さんちょっと可哀想な気が……。

「いきなり外れかよ。じゃ、純、今日は頼んだぞ。後で案内するけど、冷蔵庫に冷やし中華の材料が入っているから。今日は初日だし、夕飯の材料は食事ペア以外の3人で買いに行くから。つーことで、もう一人の食事当番さっさと決めようぜ」
 とか言って全部外れなんじゃないでしょうね、呟きながら呆れ顔でクジを引いたのは、蓮香だった。大丈夫、外れはちゃんと2本だけだから。ハルくんのその台詞に誤りはなくて、蓮香の引いたクジは赤のインクで色付けがされていた。

「桐ちゃん、お先にどうぞ」
「えっ、あ……広井さん、先どうぞ」
「ううん、桐ちゃん先に引いて良いよ。私は後で大丈夫」
「そ、そんな、悪いよ。やっぱり、広井さん、お先にどうぞ」
 これ以上このやり取りを続けたら、蓮香に怒られる。察した私は、それじゃあごめんね、それだけ言ってクジを引いた。譲ったつもりが、桐ちゃんに譲ってもらってしまい、結果は——

「あ、外れ!」
「はい、じゃあもう一人の当番は、ほのりに決定な! んじゃ、よろしく頼んだぜー」
 すぐに、純さんと目があった。
 よろしくお願いします、彼は優しく微笑んでいた。

Re: 夏の秘密 ( No.7 )
日時: 2014/12/09 13:36
名前: らい (ID: KtwqslFV)

初見失礼します

他作品のようにスペースがなく、文章ばかりで
読むのに疲れそうと思って読み始めましたが、とてもお上手で。
最新話までサクッと読めました。
登場人物が読んでいるうちに整理されていき、初めの登場人物を読まなくても把握できました。
ほのりちゃんの秘密がどういった形で周りに知られるのか気になりますね。
一人一人がしっかりキャラがありブレマセンねw

拙い文章ですみません。
箇条書きみたくなってしまいましたw

これからの更新期待しております。

Re: 夏の秘密 ( No.8 )
日時: 2014/12/09 18:31
名前: まーにゃ ◆znJHy.L8nY (ID: oOaw6UvZ)

>>らい 様

傷なめ合い倶楽部共にコメントをありがとうございます!
少しでも読みやすいように言葉のテンポなどを考えておりましたので、比較的ノンストレスで読んでいただけたようで安堵しております。

ほのりは最後まで秘密を隠し通せるのでしょうか……!
登場人物たちにとって「隠し事をする」ということの意識の変動を、物語の進行を通して書いていけたらなと思っています^^
感想を言っていただけてとても励みになります。
是非またこちらの方にも遊びに来ていただけたらなと思います!


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