コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- なるやん、時々へたつん。【シリアス編進行中】
- 日時: 2016/01/04 11:34
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=38844
この小説はナルシスト×ヤンデレの2人の、よく分からないイチャイチャ(?)物語と、主人公×ツンデレのラブコメです……読めば分かります!!←
とか言ってますけど、なるやんの部分少なめです←
どっちかというと、へたつん、時々なるやんですw というか、その四人以外のラブコメも多めです←
気が向いた時に更新するので、更新止まったら「あ、この作者飽きたんだな…」とでも思っといてくださいw
≪2014.12/30執筆開始≫
+゜*。:゜+.゜目次+゜*。:゜+.゜
キャラ紹介>>01
オリキャラ応募用紙>>07
プロローグ1「なるへた」
>>02>>03>>04
プロローグ2「やんつん」
>>05>>06
第1話 「俺じゃ釣り合わないから」
>>10>>11>>12>>13>>14
第2話「鈍感恋模様」
>>17>>18>>21>>24
第3話「君とスポーツバッグ」
>>25>>28>>29>>30>>31
第4話「転校生トライアングル」
>>32>>33>>34>>35>>38
第5話「きっと恋は変わってく」
>>43>>44>>45>>46>>47>>50
第6話「恋心に変わった日」
>>51>>54>>55>>56>>57>>58>>59
第7話「首吊りなんかじゃ救われない」
>>61>>62>>63>>64>>65
第8話「あっかんべをあの日のように」
>>66
《祝、参照1000超え 2015.12/30》>>60
゜・†。+゜お客様゜・†。+゜
椎名さん >>08>>15すごい良いキャラありがとうございます!!!ヾ(*´▽`*)ノ
春音>>19>>26>>40ボクっ娘&可愛い系男子キャラありがとΣb( `・ω・´)グッ
むむさん>>22ハイキュー良いですよね(((
四之神綾芽さん>>36ハイキュー好きがいてうれしいです!!(そこじゃない)
正義さん>>39マトモなキャラありがとうございます!!アレンジしがいが(((((
てるてる522>>48>>52久しぶり&ありがとう!!…φ(・ω・*)
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- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.58 )
- 日時: 2015/12/28 12:52
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
「……あー、どうしようかなぁー……」
つっくーのスクバの中にあったノートを持ちながら、僕はため息をついた。
小説らしきものを外で読むのも何だと思って、スクバを家に一度持ち帰ってしまった。
だが、考えてみれば酷い話だ。
人の私物を勝手に読み漁るなんて、やっていいと思ってるのか、僕。
一応、
『スクバ取り違えてるみたいだけど大丈夫?届けに行くよ、今どこにいる?』
とメールを送ってみたんだが、一向に返信が来ない。
____これはもしや、神様が読めって言ってるのか?そうなのか!?
僕は時計を仰ぎ見て、しばし考えた。
____つっくーから返信が来るまでは、読んでみても構わないはずだ。神様だってそう言ってくれている、うん。
「____って、結局読み終わっちゃったよ……」
時間にして五十分ほど。
もう少しだけもう少しだけ、と言い聞かせているうちに、最後のページまで読んでしまった。
そのノートの中身は、正真正銘小説だった。それも、つっくーの直筆らしきもので書かれていた。
控えめに言っても、かなり面白かった。
勉強運動何でもできる美少女で、文才まであるとは何事だ。神に愛され過ぎだろう。
ただ、設定がかなり複雑だった。やたらとルビも多かった。
だが、設定が書かれているノートも一緒にあったので、何とか読み進められた。
一言で言えば、厨二臭いファンタジーだった。いい意味で。
よくもまぁ、こんな緻密な設定を創り上げられるな、と尊敬してしまう。
そういう設定が苦手な人はとことん苦手かもしれないが、僕は案外こういうものは好きだ。
つっくーの書いた小説をまた読みたいと思うくらいには面白かった。
それに何より、つっくーがこの本格ファンタジーを書いているんだと思うと、ギャップがたまらない。可愛い。つっくー本当天使。
____もう一回読み返そう。
「……あ、ちょうど返信来た」
もう一度開こうとしたその瞬間、メールが来た。
開けて内容を確認してみると、件名なしでこう書かれていた。
『すみません!わたしは今トワイライトっていう喫茶店と日代神社の間にいます。ゆうさんはどこですか?』
トワイライトって喫茶店、か……。僕の家から近いじゃないか。これは届けに行くしかないな。
僕はスクバの中に小説を元あったように入れ、自転車の鍵を取って家を出た。
自転車を飛ばしてから大体五分。つっくーの姿らしきものが遠くに見え、僕は自転車を停めて走った。
つっくーは驚いたような表情をしていた。僕何か変かな。
「届けに来てくれたんですかっ?そんな、わたしが取り違えたから私が取りに行くのに……っ」
何だ、そんなことか。
「そんな、家から近かったしこれくらい、どうってことないよ。それに、月詠さんを僕の家まで来させるなんて感じ悪いでしょ?」
それに、家に来たりなんかしたら、何しでかすか分からないぞ、僕。一応健全な男子高校生ですからね。
「ほらねぇ。言ったでしょぉ、唯。ここで届けに来なかったら男じゃない、ってさーぁ」
その声の方向に振り向くとそこには、
「よな____星河 宵那さん、ですよねっ!?」
つっくーと同じグループのメンバー、よなっちがいた。
うっわ、本物すごく可愛い。アイドルでは、つっくーの次に好きなんだよな、よなっち。
「おっ、アンタアタシのこと知ってんのぉ?嬉しいねぇ」
「当たり前じゃないですか!星河さん、よくバラエティ番組出てますよねっ?」
意を得たりとばかりににやけるよなっち。
「そーよぉ?アタシはアイドル界のバラエティ女王だからねぇ、なんつってあっはは」
「アイドル界のバラエティ女王、もうなってると思いますよ?テレビで見ない週ってないですし」
ただ単に、僕がよなっちの出ているテレビを全てチェックしているだけかもしれないが。
「あらそーぉ?嬉しいこと言ってくれるじゃないの。じゃ、特別にタメで話すことを許可してあげるぅ。てか、アタシ敬語嫌いなの。えーっと、ゆうさん、だっけぇ?」
そう言いながらつっくーの方を振り向くよなっち。つっくーは頷いた。
「そうです、ゆうさんですっ」
「おっ、当ったりぃ。んじゃゆうさん、よろしくぅ」
「よろしくね、星河さん」
____僕は世界一幸せなドルオタじゃないだろうか。何たって、二大好きなアイドルと対等に話せるし。
「じゃあ月詠さん、これ」
そう言ってスクバを手渡すと、「ありがとうございます」と言いつつも、浮かない顔のつっくー。
首を傾げながら「どうしたの?」と問うと、しばらくしてつっくーが口を開いた。
「…………あの、中、見ました……?」
…………なんて答えるのが正解なんだろうか。正直に言う?いやでも……。
「…………えーっと……。ごめんなさい、見ました」
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.59 )
- 日時: 2015/12/28 10:55
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
そう言いながら僕は頭を下げた。
「うっわぁ。ま、でも唯のだもんねぇ、誰でも見たくなっちゃうわ」と口を挟むよなっち。
「………………えとっ、これって……見ました?」
苦々しい顔で小説を取り出すつっくー。更に頭を下げながら僕は謝る。
「ごめんなさい!最後まで読んじゃいましたっ!」
さすがに失礼だったよな。どうしよう嫌われたかもしれない。
頭の中がぐるぐると渦を巻く。
「………………な、何で読んじゃうんですかぁ……」
震える声で言うつっくー。ああごめんなさい。
今まで積み上げてきた信頼全てが崩れ落ちていく音が聞こえた。ほとんど積み上げてないけど。
でもそんな震える声のつっくーも可愛いなんて思っておりません。決して(大嘘)。
「………………ひ、引きますよね……?こんな小説書いてるなんて」
「…………んっ?」
しばらく頭を下げていると、予想外の言葉が降ってきた。
思わず顔を上げると、つっくーは不安げに僕を見つめていた。
……もしかして、勝手に小説読まれたことに怒っていたんじゃなくて、「こんな厨二臭い小説書いてるなんて知られちゃった」と焦っているんだろうか。
「……えぇっと、すごくアレなこと言うけど」
「……はい」
「…………これ、続きってある?あったら是非読みたいなー……って、勝手に読んどいて何言ってんだって話だけど」
「……えっ!?」
つっくーは驚いたように僕を見つめる。
「こ、こんな小説書いてて引かないんですかっ!?」
「逆に何で引くの?」
「だ、だって、設定がすごく……」
「厨二臭いってこと?確かに設定が複雑だとは思ったけど、僕こういう設定好きだよ?」
「えッ!?ほ、本当ですか!?」
「うん」
驚愕したようにつっくーは目を剥いた。そんなに驚くようなことだろうか。というか驚いたつっくーが天使過ぎて辛い。
「お、面白かった……ですか?」
「うん、かなり。キャラも個性があって読んでて楽しかったし、続きがすごく気になる書き方だと思った」
すると、つっくーは笑顔を咲かせた。
「そうですか……っ!宵那以外の人に褒められるのって初めてですっ……!えへへ」
つっくーはノートを両手で持ち、口を隠すようにして照れ笑う。
僕は、世界が一瞬時間を止めたのを感じた。音もミュートをつけたように小さくなる。
そして、つっくーの笑顔だけが世界の全てになった。
心音がやけに鳴り響く。……あれ?これってもしかして。
「……えと、ゆうさん?」
つっくーの声で我に返った。
危ない。つっくーが可愛過ぎて、よく分からない世界にトリップしていた。
……でも。もしかしてこれって萌えじゃなくて____恋心?
なんてね。そんな不相応なこと思う訳がない。
「よかったねぇ唯。ゆうさん、アンタもいい人だねぇ」
よなっちはそう言うと、訳知り顔で笑って手を振る。
「アタシん家近いから先帰っちゃうねぇ。じゃ、お二人さんごゆっくり」
つっくーは一度首を傾げ、すぐに慌てたようによなっちの方を振り向いた。
「宵那っ!違いますからねっ!?そんなのじゃなくて……!た、多分……あ、あれ?」
「はいはい分かってますよぅ。ゆうさんならアタシも応援できるなぁ」
そう言いながら含み笑いをして去っていくよなっち。
「だ、だから……!ゆうさんはそんなのじゃ……!」
「……そんなの?」
「わわっ、違います!違いますから気にしないでくださいっ!」
なんだかよく分からないが、一つだけは言える。
慌ててるつっくー可愛い。可愛いは正義だ。
「……じゃ、帰ろっか。送ってくよ?」
「……えっ?そ、そんな、悪いですっ!」
「悪い、って。月詠さんを暗い中一人で歩かせるなんて、そっちの方が出来ないよ。僕が勝手に送りたいだけだから気にしないで」
そう言いながら自転車を取りに行く。
そして、手でハンドルを持って押しながら、つっくーに問う。
「家どっち?」
「えぇっと、こっちです!ここからだと少し遠いんですが……」
申し訳なさそうに上目遣いで僕を見るつっくー。
やめてくれ、そんな顔されると襲っちゃうぞなんつって。冗談にならない冗談はやめておこう。
「全然いいよ。どうせ家帰ってもやることないし。勉強だってどうせしないしね」
そう言いながら自転車を押してそっちへ歩いていく。
「そうなんですかっ?でもゆうさん確か、社会と国語の全国模試で、上位の成績とってましたよね?」
そんなこともあったような。というか毎回そうか。
「あーそうだっけ。まぁ僕が全国模試のテストと相性良いだけじゃないかな。たまたま点とりやすい問題なだけでさ」
僕とつっくーは、そんな話をしながら歩いていった。
その間中ずっと高鳴る心臓に、僕はため息を吐いた。全く、そんなにうるさくされると認めざるを得ないじゃないか。
これは偶像崇拝じゃなく、恋心だ、って。
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.60 )
- 日時: 2015/12/30 12:04
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
祝、参照1000超え!
私ここで小説書き散らしてますけど、参照1000超えたのって史上二回目なんですよ!
たったの二回!すくねぇ!w w
てな訳で、今嬉しいんです!今までありがとうございます!
あ、ちなみにもう一つ参照1000超えた小説は、親記事に貼ってあるURLから読めるものなので、良ければ是非!w 完結済です!w
ところで皆さんお気付きでしょうか。
この小説、こんなに無駄に長いのに、時系列的には1ヶ月進んだか進んでないかくらいなんですよ...。
時期的にまだ7月の中旬程度です、もう真冬なのに!w w w
つまり、まだ学園ラブコメの定番、夏休みも体育祭も文化祭も何一つとして書いてないんです!クリスマスだってバレンタインだって書きたいのに!
まだ夏休みにすら入ってねぇ!畜生おせぇな!w
と、いうわけでまだまだ続きますw
次話は友哉の鬱展開と本作品初のシリアスを描く予定です!お楽しみに!←
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.61 )
- 日時: 2016/01/01 10:01
- 名前: 彼方 (ID: z5Z4HjE0)
ここでようやく、ちょこちょこ挟んできた伏線回収です!あと、友哉の異常な卑屈さの謎(?)もこの話で明かされます!
という訳で、鬱展開…もとい、本作初のシリアス編スタートですw
最初オーバードーズの予定でしたけど、思ったより全然現実的じゃなかったんで止めました。
これのせいで検索履歴が鬱病の人みたいになっちゃいましたクソw w w←
第7話「首吊りなんかじゃ救われない」
最近、友哉の様子がおかしかった。
それと、望と菜々架も。
「聞いてよ友哉ぁ、オレまた告られちゃったのー?ホラ見てこのラブレター____ってねぇねぇ聞いてるーっ?とーもーやぁー」
「…………良かったな」
何故か沈んだ顔をする友哉を見ても、望はいつも通りの笑顔を浮かべていた。
「だっろーっ?羨ましいだろっ?羨ましいだろっ!?」
「…………あぁ」
友哉は気の無い返事をしていた。
「ちょっと友哉、ちゃんと望の話を聞きなさいよ」
「そーだよー、ちゃんとオレの話を聞けーっ!」
「………………聞いてっから、気にすんな」
鬱っぽい色を浮かべる友哉を見ても、望と菜々架の態度はいつも通りで全く変わらなかった。
否、意識していつも通りにしている感じか。
「……ねぇ、最近友哉どうしたの?」
「何?友哉、何か変かしら?」
あたしが尋ねても、菜々架は空っとぼけていた。
あたしは、居心地悪く感じていた。
「吉岡ぁ、今日カラオケ行かね?」
「いや、今日こそ部活に来てもらうぜ」
「いーや、カラオケの方がいいよな?」
「…………俺両方パス」
放課後、カラオケの誘いも部活の誘いも断って、友哉はすぐに帰っていった。
友哉は最近いつもこうだった。
絶対、何かおかしい。その時あたしは、それだけは分かっていた。
「ねぇ友哉、部活何で来ないのよっ?またサボり癖?」
あたしが普通を装って尋ねると、友哉は「ごめん」とだけ言って、去って行こうとしていた。
その時、思わずあたしは腕を掴んで言った。
「友哉、またサボったらそのスポーツバッグ返してもらうって言ったよね?さっさと部活来なさいよ」
「…………確かに、そうだったわ」
「なら……っ!「でも……そういう気分になれねえんだ、ごめん」
友哉は心なしか、口数も減ったし笑顔も減った、とそうあたしは感じていた。
一体何があったのよ、とあたしは思っていた。
あたしが悶々としながら更衣室へ歩いていた時、同じクラスの女子の会話が耳に入ったんだっけ。
「何かさー、吉岡くん最近元気なくない?心配だわー」
「だよねー。そういえばさ、去年の同じくらいの時期にも、こんなことなかったー?」
「こんなことって、吉岡くんが元気なかったってこと?」
「そーそー。何かあるんじゃない?この時期にさー」
「確かに、去年もそんなことあった気がする」
「だよね。あ、そういえばバスケ部の東雲先輩が____」
去年の同じくらいの時期にも、友哉が元気をなくしていた、か。確かに、そんなことがあった気がする。
去年にも、というか毎年____
思考が芋づる式に加速されていった。
確かに去年も友哉はこれくらいの時期に元気がなかった。中1の時も、中2の時にも、だ。
中3の時なんか、しばらく学校を理由不明で休んでいたっけ。
ようやく学校に来たかと思ったら、足を骨折していてクラス全員が驚いた、なんてことがあった。
そんな時でも、望と菜々架だけは驚かなかった。中3の休んでいた時、少しの間だけ望と菜々架も休んでいた。
きっと、あの幼なじみ3人にしか分からない、何かがあるんだろう。
それはきっと、軽々しく触れられないような重たいこと。
幼なじみ3人の問題なんだから、触れちゃいけないだろうことは分かってた。
分かってるけど____
「……何であたしに言ってくれないのよ、3人の馬鹿ぁ……」
小さい頃から一緒にいた訳ではないが、あたしだって中1の頃から3人と一緒にいる。
きっと、あの幼なじみ以外だと一番付き合いが長いはず。
なのにどうして。
そんなことをずっと、あたしは考えていた。
その日、もやもやとした気持ちを抱えたまんま、あたしは仕方なく部活に向かった。
次の日。
今日も友哉は元気がなかった。むしろ、昨日にも増して鬱々としていた。
毎年これくらいの時期に元気がなかったのは確かだが、それでもここまで鬱々とはしていなかったはず。
さすがに皆心配らしく、ひそひそと友哉についての話をしていたっけ。
中には、友哉といつも通りに話す菜々架や望に、尋ねる人もいた。
しかし、2人は白々しくとぼけていたはず。
そんな中、
「さすがにこれは気まずいわよ……」
どういう偶然か、あたしは友哉と一緒に帰ることになった。
いつもだったらとても嬉しい。が、何しろ鬱状態の友哉だ、あたしは、なんて声をかければいいか分からなかった。
あたしはひたすら、俯いて黙りこくっていたんだっけ。
その時、気まずい沈黙の中にいると、人は肩が凝るものなんだと実感した。
「……あのさ」
「…………何?」
あたしが恐る恐る問うと、あたしと同じように俯いていた友哉は、ゆるゆると首を上げた。
「…………友哉、何か悩みでもあんの?だったらあたしに相談しなさい、友哉が静かだと薄気味悪いの!ほら、分かったらさっさと言いなさいよ」
あたしは重い空気を無くそうと、あえて軽い口調で言った。
友哉はしばらく視線を宙に漂わせたが、やがて泣き笑いのような表情を浮かべていた。
「…………ありがとな」
その、どこか枯れた瞳はよく覚えている。
しかし、友哉はそれ以上は口を開こうとしなかった。
あたしはすっかり参ってしまって、所在なく髪をいじりながら口を噤むしかなかった。
半ば機械的に足を進めていると、いつの間にかそこはあたしの家の前になっていた。
友哉の家はもう少し先だ。
友哉はそこで足を止めると、あたしの方を見た。
その時初めて、友哉とまともに目があった、はず。
「………………なぁ桃音」
「何よ」
いつも通りを心がけてそう言うと、友哉は逡巡する様子を見せ、やがて言葉を紡ぎ出していた。
「…………俺、さ。生きてていいんだと思う?」
いきなりのそんな言葉に、あたしは思わず絶句した。
なんて答えればいいかも分からず、ただ固まっていた。
さっきにも増して、沈黙が体を刺していった。空気が一気に粘度を増したみたいだったのを、鮮明に思い出せる。
すると友哉は「……なんてな、ははっ。冗談冗談」と笑ってみせていた。それは、いつも通りの、冗談を言う時の笑顔だった。
あたしは安心して、「もう、冗談キツいわよっ?」なんて軽く蹴りを入れた。
友哉は顔をしかめながら蹴られた場所をさすっていた。
「いって、蹴らなくてもいいじゃねえかよ!」
「あんたがいきなり変なこと言うからでしょうが!馬鹿友哉っ!」
「だからって蹴るなよ!お前の蹴り痛えんだよ……」
「知るかそんなの!」
「理不尽!」
いつも通り、だった。この笑顔も、このやりとりも。
あたしは重たい空気が払拭されたのを感じて、ようやく心の底から笑えた。
そう、重たい空気が払拭された、そればかり意識していた。
だからあたしは、気付かなかったんだろう。
「じゃあな」
そう言って手を振って背を向けた友哉の笑顔が、さっきまでとは違ったことを。
「ん、じゃあね!明日こそちゃんと部活来なさいよっ?」
あたしは何も気付かず、ただ呑気に笑っていた。
友哉は後ろを向いたまま「気が向いたらな」なんてうそぶいていた。
後から考えれば、友哉の笑顔はただの明るい笑顔じゃなかった。
あの時、あの質問に答えていたら、と何度後悔しただろう。
あの時、あの笑顔に気付いていたら、と何度後悔しただろう。
____友哉の笑顔は、どこか哀しい決意に満ちたものだったのに。
あたしは馬鹿だ。
本当に馬鹿だ。
何であの時気付けなかったんだろう。
あたしは自分を責めながら、ただただ両手を組み合わせて祈った。
「……桃音のせいじゃないよ。オレも菜々架も、気付けなかったんだから。むしろ、オレ達こそ気付いて然るべきだった」
望はあたしを気遣うように呟いた。両手でズボンを握りしめて、後悔に暮れるように俯いていた。
余程強く握りしめているんだろう、その握った手は、細かく震えていた。
「…………友哉の馬鹿……ッ」
菜々架はそう零した。頬には雫が伝っていた。
怒り以外の彼女のネガティブな姿を、この時あたしは初めて見た。
隣に座る友哉のお母さんは、固く目を閉じて祈っていた。あたしよりも、ずっとずっと強く。
あんたにはこんなに真剣に心配してくれる人がいるのに、何で。
「…………馬鹿ぁ……ッ」
あたしはそう吐き捨てながら、眠ってるようにも見える友哉の顔を睨みつけた。
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.62 )
- 日時: 2016/01/01 16:36
- 名前: 彼方 (ID: mvR3Twya)
「桃音、おはよーっ!」
後ろから背中を押されて、誰かと思って振り向くと望だった。あたしは「おはよ」と返しながら辺りを見回した。
「どしたの、桃音?」
望が疑問顔で一緒に辺りを見回す。
「……いや、あんた友哉とは一緒じゃないの?」
そう、望は大体友哉と来ているのに、今日に限って一人だったのだ。
「友哉なら今日休みだよ?今朝電話かかってきて『俺今日休むから、担任にそう言っといて』って」
「そう……、なら、いいけど」
あたしは望が一人でいるのを見て初めて、昨日の友哉の意味深な質問を思い出し、不安になってきたのだ。
いや、ちゃんと休みって連絡してるんだ、大丈夫、大丈夫。
それでも胸騒ぎは収まらず、真綿でじわじわと首を絞められているような息苦しさを感じた。
「おはよう、望、桃音」
後ろから菜々架が歩いてきた。
「あぁ菜々架、おはよ……」
菜々架は不思議そうにあたしを見た。
「どうしたの、桃音?元気がなさそうじゃない」
「う、ううん、何でもない。ただね、ちょっと友哉が気になって。昨日、何か様子がおかしかったから」
あたしはそう言いつつも、「でもホントに何でもないのよっ?でさ?」と話題を変えようとした。
しかし望と菜々架は、先程までとはうってかわって厳しい表情をしていた。
「桃音。様子がおかしかった、って、友哉、どんな感じだったの?」
固い声で望が尋ねる。
「何かね、元気がなかったのはなかったんだけど、いきなりおかしなこと言い出して」
「おかしなこと、って?」
菜々架も神妙な声色で訊く。
「えっとね、確か、『俺さ、生きてていいんだと思う?』って__」
その言葉を聞くや否や、望は走り出した。菜々架もそれに続いて駆け出した。
「え!?ちょ、ちょっと!いきなりどうしたのよっ?」
いきなりのことに一瞬怯んだが、あたしはすぐさま2人を追いかけた。
「ねぇ菜々架、どうし「後で説明するわっ!」
走りながら菜々架に問いかけると、菜々架は焦ったように叫んだ。
____初めて見た、菜々架の焦っている姿。菜々架はいつも柔らかく笑いながら物事をこなすのに。
菜々架はきっと望が浮気したとしても「ふふ、三澤くーん?」なんて笑いながら望を引きずっていくだろうに。
何でこんなに焦ってるの?
しかし菜々架は運動がとても不得意、バレー部の望とあたしについていける訳もなく、すぐに途中で咳き込みながらお腹を抱えて立ち止まった。
あたしが走りながら振り向くと、菜々架は横腹を押さえつつもそれでもまた、走り出した。
そんなに無理しなきゃいけないほど、切羽詰まった状況なんだろうか。
望は一つのアパートに着くと、階段を駆け上がり、『四〇五』と書かれたドアの前で立ち止まった。
あたしもそれに続いて立ち止まった。
ここが友哉の家だ。
「友哉?……友哉!ねぇ開けてよ友哉っ!具合悪くても玄関にくらい出られるでしょ?……ねぇってばっ!」
望は、がんがんとドアを叩きながら叫んだ。
あたしは荒い息を吐きながら望に問う。
「いきなりどうしたのよ……、ていうか、友哉の両親は?お母さんとかにドアを開けて____」
「いないんだ!友哉のお母さんはシングルマザーで働いてるからっ!兄弟だっていない一人っ子だから、家には友哉一人なんだッ」
焦燥感を瞳に写して望が吐き捨てる。
____知らなかった。友哉のことを、あたしは何にも。
望のその言葉で、そのことを改めて思い知らされた。
菜々架がげほげほと咳き込みながら追いついてきた。
「ちょ、ちょっと菜々架大丈夫っ?無理しなくても____」
「私はいいからっ、友哉はッ?」
地面に蹲りながらそれでも、菜々架はドアを見上げた。
「なっ、何でそんなに焦ってんのよっ?友哉が昨日変なこと言ったくらいで」
そうあたしが言うと、しばらく悩むように、望と菜々架は視線を下に落とした。やがて視線を交わすと、菜々架が呟いた。
「…………後でちゃんと、全部話すわ。でも、今は友哉が……っ」
「…………うん、分かった」
腑に落ちないながらも、納得するしかないと思い、頷いた。
しばらくがちゃがちゃとドアノブを鳴らしていた望だったが、痺れを切らしたように「あーもう!」と舌打ちをした。
「もうオレ管理人さんに鍵もらってくるっ!待っててっ!」
望はそのまますぐ、崩れ落ちるような勢いで階段を駆け下った。
1、2分後、管理人らしきおじさんを連れて望が駆けてきた。
「どうしたの一体。もう、せっかく掃除してたんだけどなぁおじさん」
望と菜々架とは対照的に、欠伸をしながらおじさんは、鍵の束の中からもたもたと1つの鍵を取り出し、差し込んだ。
がちゃ、と音を立てておじさんがドアを開けるや否や、望と菜々架がその中に駆け込んだ。
靴を脱ぐ動作すらもどかしい、と言わんばかりに脱ぎ捨て、2人は走っていった。
「…………何なんだい」
2人の必死さに唖然としているおじさんに、「あ、ありがとうございます!」と頭を下げて、あたしもついていった。
2人の姿は、奥にある友哉の部屋の中にあった。
菜々架と望は、部屋の入り口で立ち尽くしていた。
何事だと思って視線の先を見ると、
「…………嘘、でしょ…………ッ?」
あたしの掠れた声だけが反響する。
ぐにゃりと全てが歪んで見えた。悪趣味なドラマを見ているようだ。
だって、そこにいたのは____
まるでテレビを通して見てるかのように、現実味が全くなかった。「何で」の文字だけがうるさいくらいにぐるぐると巡る。
あたしは全身の力が抜けて、へたり込んでしまった。だが視線だけは、固定されてしまったかのように友哉の『その姿』から離せない。
やがて菜々架が夢遊病者みたいに部屋から出て行き、リビングに置かれている固定電話から電話をかける姿が見えた。
「…………ええと、救急ですかッ?……あ、あの、友人が自宅で首を吊って意識不明なんです、救急車をお願いしますッ!……住所、ですか。ええと____」
菜々架の焦ったような掠れた声が聞こえる。
それを見た望は、我に返ったように友哉の元へ走り寄った。
そして近くに転がっていた椅子に登り、友哉の首に吊るされた縄を引きちぎるように解いた。
宙に少しだけ足が浮いていた友哉は、支えが無くなったことで崩れ落ちる。
望はすぐさま友哉の隣に駆け寄り、肩を何度もなんども揺さぶった。現実を受け入れたくないのか、薄く笑みを浮かべていた。
「……ねぇ。……ねぇ、友哉。……嘘だよね?違うよね?ね?……友哉、そろそろ目開けてくれないとオレ怒るよ?ねぇってば、友哉」
しかし友哉はぴくりとも動かなかった。望の顔から笑みが抜けていく。
「……友哉?…………友哉っ!起きてよ友哉、起きてよッ……嘘だって言ってよ、ねぇってばッ!」
友哉、友哉、と必死に名前を連呼する望の横で、あたしは何もできなかった。ただへたり込んで、過呼吸になっていた。
何で、と言おうとしても、息がすーっと出る音がするだけ。声すら出なかった。
それからのことはよく覚えていない。
望と菜々架と一緒に救急車に乗った気がしなくもないが、記憶がない。
食事を無理やりとったのか、それとも何も食べないままなのか、それすら定かじゃない。
気付いたら、病室の白いベッドに横たわる友哉の隣に座っていた。
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