コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 星屑チョコレート【短編集終了】
- 日時: 2016/04/02 13:11
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=38861
食べてしまえそうなくらい——すき。
*, 挨拶
初めましての方は、初めまして! 蒼(あお)です。
甘いお話、少し苦いお話、色々な物語を書きたいと思っています。恋愛話が多いと思いますが、時々、人間関係の話も入れるかも知れません。主人公と一緒になって、振り回されてくれたら嬉しいです(笑)。
*, 注意書き
その1 更新は早い時もあれば遅い時も……。
その2 荒らしさん等は、来ても無視させていただきます。
その3 コメント&アドバイス、受け付けております!!
*, 小説開始日〜
2015年3月28日〜2016年2月17日
*, メニュー
・ミルク
昨日も今日も明日も僕は。
(あの場所で、君を待っている) >>5 >>43
それを人は愛と呼ぶ。
(偽りは偏愛を招くのです) >>11
電話の先のホントの君
(嘘吐きサンの小さな思い) >>12
春色の空き缶
(不器用で解り難い君が) >>18
妄想奮闘記
(甘い罪は君をも騙す) >>27
友情スキャンダル
(優し過ぎた我が儘) >>28
笑って、太陽
(どんな結末でも、たとえ) >>35
恋情スキャンダル
(難し過ぎた愛心) >>42
傷痕
(癒しの魔法をかけてよ) >>44 >>45 >>46
幸運争奪戦
(ハズレな誰かを夢見ていた) >>51
甘味な罠
(酔い止め薬、どうやら効かない) >>57
夢想の在り処
(塞ぐ、塞ぎ、塞がない) >>64
1段下の束縛
(真紅に染まりし、瞳孔) >>69
花弁に口付け
(言の葉の行き場) >>71
脳内恋文
(勇気の見えない愛言葉) >>74
WOLF
(飢え死にでも何でもすればいい) >>77
・ビター
愛とか恋とか要らないけど。
(欲しかったモノの行方は) >>1
君に注ぐ哀情
(それは愛しさ故の行為) >>2
片恋世界征服
(世界平和なんて上手くはいかない) >>3
空を越え、時を越えて。
(流した涙は夢に溶ける) >>4
夜陰の恋はbitter
(闇夜に呑まれし夢見月) >>14
トキメキは風に吹かれ
(さようならを貴方に贈ろう) >>19
雨上がりの造言
(イカサマに厭き厭きした僕等) >>20
少年よ、愛を叫べ。
(全てを欺いた少年の言葉) >>22
秘め事ラヴァー
(それだけで幸せだから) >>23
消えた君の断末魔
(最期に描いた愛の形) >>24
閉ざされた扉の隙間で。
(君以外、何も要らないの) >>25
思い出延長線
(友達は近い様で、遠かった) >>26
清澄SOS
(先も何もない部屋の中) >>34
ヘドロな愛を下さい。
(禁断の蜜は蝶に吸わせて) >>47
代役メモリー
(感情が欠落した彼女) >>50
だって、君しかいないから。
(冷たい視線が、また) >>54
曖昧collar
(剥がれかけた笑みで) >>55
ニセモノ有罪
(嘘でも偽りでも拒絶でも) >>56
水浸し
(飲み干したい欲情) >>59
さようならも言えない。
(背中合わせの思い人) >>62
人魚は星の上
(逢いたい願いは叶いますか) >>63
不透明恋慕
(正義であり不義であり) >>70
・スイート
友と呼ばれるまでも無い。
(好き好きごっこは難しく) >>21
幸せ恋心
(今日も僕等は愛され者です) >>36
逆様トライアングル
(恋人? そんなの知りませんよ) >>39
白紙未来地図
(投げ捨てないで、素敵な) >>40
友と呼ばれるまでも無く。
(ダメダメごっこは簡単で) >>41
花蜜、それでも
(追い越せないなら、隣) >>58
隣のあなたは今日のてき
(夏風邪は引いたもの勝ち) >>78
*, 長編作品の紹介
・ヒーロー達の秘密会議。(上記URL)
誰にも言えない、とある『秘密』を持っている個性派揃いの少年少女が巻き起こす大事件のお話です。
コメディー40・ファンタジー50・恋愛10が占めています。ファンタジーがお好きな方は、宜しければ。
*, お客様
八太刀さん
佐渡 林檎さん
せいやさん
はるたさん
あんずさん
朔良さん
ゴマ猫さん
村雨さん
*, あとがき
>>79
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- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.55 )
- 日時: 2015/05/13 22:07
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 曖昧collar 】
冗談だよ。
手で髪を弄りながら、笑って君は言う。誤魔化せているつもりなのだろうか。頬が引き攣り、見るからにぎこちない。そんな事にすら気付かないとでも。何時からそんな軟な女になったんだ、と自分に呆れる。知っていたじゃない、ずっと前から。今更、傷付く意味何てないの。解っている、理解しているけど、願ってしまう。それが「本心」ではない事を。有り得ないのに。
全てを無かった話にすれば、君はそんな顔をしないのかも知れない。全てを忘れた過去にすれば、私はこんな思いしないのかも知れない。声は聞こえている。だけど、嬉しいという言葉が染み込んで、少しの所で止めてしまう。諦めの悪いとか、何を言われてもおさまらない。痛いのは嫌い、大嫌い。今からは優しくしてね。足掻いても惨めなだけって、見えないフリ。ああもう、君が解らない。教えてよ、どれくらい前からなの?
——別れようか。
目を背け、演じ切っていたのはさ。
*
「私」は「君」の心を解っているけど、解りたくないと逃げてしまう。
何気に初めての別れ話。相手を知り過ぎて悩み、結局何も解決しないまま離れて行くのかなー、と。恋って曖昧だよね、から考えました。
- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.56 )
- 日時: 2015/05/22 14:58
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 ニセモノ有罪 】
誰も気付かなかった。それが凄く嬉しくて、楽しくて、あたしは「次」を求める。何で気付かないのだろうか、不思議に思ったけど、答えは直ぐに出た。あたしが上手いからだ。相手の心を自分に向ける、こんなに夢中で化けられるものは、他にない。すっかり嵌まっちゃって、元に戻る方法は見つからないかも。
「ふふふっ」
自然と笑みが零れちゃうのは、あたしの所為じゃないでしょう。恨むのなら精々恨んでいれば良い。1つ言わせてもらうと、見破れなかった貴方が悪いのよ。だって、酔って溺れたのは、あたしじゃない。世界の狭さに押し潰され、責任と屈辱で笑われていたら? 間抜けた顔で見られたって、どうしようも出来ないわ。全ては貴方にある、解っていても、認めたくないのね。残念な人。
「決めた」
それでも「次」が来るのだから、仕方がないじゃない。熟した果実を食べて、何がいけないの? 最高に美味な果実を探す為、今宵も狩りに出かけよう。暗色に染まる満月が、あたしを照らしてくれる。廻る日々に感謝しながら扉を閉めて、真っ黒になるまでは愛してあげる。さあ、貴方をあたしに。
*
割れた仮面の下に、影を潜めた「あたし」が出迎えてあげるでしょうね。暗躍だけでは寂しいもの。今夜限りの玩具を遊び終えた「あたし」は、涙を浮かべて忘れず告げる。
2人だけの秘密、と。
*
テストという地獄から解放され、急に背伸びした件。
大人っぽい話が苦手です。本当に書けません、助けてください。人によって解釈は自由ですが、作者的には『快楽を求めるあたし、夜から逃げたいあたしを持つ、2重人格者』。書く時に使った設定なので、他の設定でも全然大丈夫です!
- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.57 )
- 日時: 2015/05/29 22:39
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 甘味な罠 】
正気を失いそうな程、身体に匂いが染みついて。
目が回りそうな程、君の後ろ姿へ手を伸ばして。
追う者が俺じゃない気分だ。
*
終わりの号令で、皆が一斉に出口へ走って行く。その様子を横目で確認してから、窓際に1人で座る君を見た。……また本を読んでいるみたいで。何というか、趣味が違い過ぎて話の糸口が見つからない。自分が読書家だったなら、と。吐き出した息はやけに重くて、そのままへたり込みそうになる。友人に本好きがいるけど、男同士なので別の話題が生まれるから……。少しでも興味を持てば良かったのに、今まで何に熱中していたんだ! あ、サッカーか。今日も、君に話しかけられないまま時が過ぎる。もう帰ってしまおうか。どうせ出来ないんだし。色々辛くなってきて、机に入っている教科書をバッグにつめ込む。
「わっ」
肘が筆入れに当たって、中身が床に散らばる。何故きちんと閉めておかなかったのだろう。半分泣きながらペンや消しゴムを拾っていると、頭上から「あの……」と小さな声が聞こえた。何だい、慰めなら要らないよ。それくらい自分で出来る。
「これ」
「あああああ!? 天瀬(あませ)さん!? な、なな、何で!? え!?」
「落としていたから……、驚かせちゃったよね。ごめんなさい」
「いっ、いえ! ああああ、あり、ありが」
我ながら情けない。本当に情けない。此処に穴が開いているならば、直ちに飛び込んでしまいたい。何時も見ている子の前だというのに、何コレ、噛み過ぎだろう。絶対可笑しい奴だと思われた。嫌だ、自分を変えられるのなら、そうしたい所だ。両手を顔に当て、隙間から表情を窺う。終了、大恥をかいてまで、生きる目的はないよ。
「どういたしまして」
蝶が舞うかの様に美しい微笑を浮かべた君は、完全に俺を虜にした。綺麗を通り越して女神。女神に違いない。抱きしめたい衝動を後少しの所で抑え、インク切れの赤ペンを受け取ると、丁寧に磨かれた爪に似合う長い指に触れた。
「ひゃっ」
女の声が、まさか自分の口から出て来るとは思わなかった。引く、今度こそ引く。ゆっくり顔を上げてみたら、頬を薄ら薔薇色に染めた君がいたので驚いた。不思議に思った瞬間、自分の指から君の指へ絡めている光景が。な、何と……!! めが、女神の指先を汚してしまった!! 大変大変大変、俺は世界で1番してはいけない事をしてしまったのだ。死んでも償い切れない大罪を。
「やあああああああ! すみません!! 本当すみませ、止め!! 止めてくれ!! 汚れたああ!!」
「ごっ、ごめんなさい。何か付いていましたか? ハンカチ使って」
「ちが! 違うんです!! あ、でもハンカチは貸してください。記念に」
これ以上女神を汚したりしない様、最善の注意を払ってハンカチを貸してもらった。これが女神的存在である君の私有物……。今、俺は神を越した。飛び越したよ。神の強大な力でか、気付いた事がある。俺が触ったハンカチをこのまま返してしまうと、またも汚してしまうのではないか!? どうしよ、はっ、俺が一生ガラスケースの中で保管しておけば良いんじゃ!! 「取れました?」と垂れ気味の二重瞼がいきなり近付いた事を理由に、煩かった脳内が更に大騒ぎ。静まれ、1回静まって。心臓の音で、折角の機会が台無しになる。
「あ……う、はい、もう、だっ、だいじょ、返し」
喋っているのか判らない音量で、残念過ぎる程呂律が回らない。そんな俺を慰めようとしたのかは不明だが、遠くから「泉水(いずみ)!」と声が響く。廊下から……この声は担任。確かに沈黙じゃなくなったけども、大声で叫ばなくても良いだろうに。というか、用件は何だよ。大した事でないなら、行かないからな。俺にとっては、この女神と2人だけで密室(教室)にいる方が大切だから。
「泉水! 手伝ってくれ、力仕事はお前の唯一の取り柄だろう」
「違いますー! それに俺、他にも取り柄あるんでー!! ……きっと!!」
俺と女神の世界に入ってこようとする、邪悪な輩を退治しようとするが、どうにも上手く行かない。あの担任、何でか嫌いになれないんだよな。仕方がない、すっ、直ぐ行って戻って来よう。危ないけど、走れば帰ってしまうまでには間に合うと思うし。隣を見てみると、小さい身体を慌ただしく動かしているが……。本を探しているみたいだ。これなら抜けても気付かない、君は大の本好きだものね。
*
長かった、凄く。運ぶのは早く終わったのに、途中から雑談が始まるとか、誰が注意出来たんだ。俺は出来なかったよ、ふんっ。あーあ、遅くなっちゃったし、帰っただろうなぁ。もっと2人でいたかったのに……、何も喋れないけどさ。溜息を吐きながら、教室のドアを開ける。ほら、鼠1匹いな——あ。
「お、お疲れ様です」
控えめに優しく微笑んだ君が、そこにはいた。瞬間、俺は悟る。此処は夢の中だと。だって、あの気配りが出来て次元が違う君に、「お疲れ様」と言われたんだよ? 現実では有り得ん、望んでしまった罰なのかも知れない。確かめるべく、俺は自らの手で顔を殴った。——痛い、夢じゃない。
「い! 泉水くん!? どうしました!?」
「その声で俺の名を呼ばないで!! 絶対明日死んじゃうから!! 何で!? 何で今日、こんな良い日なの!? そっか、俺死んじゃうからか!! どうせなら覚めるなよ!! 頼むから!!」
君が1歩近づいて来る度に、身体中が飛び上がって思わず下がる。またも近付いて、下がり、近付いてを繰り返していたら、考えず後ろに下がっていた俺が、壁際に追い込まれてしまう。頭良いな、流石女神。
「もう! どうして逃げるんですか!」
不満そうに頬を膨らませる君。可愛い、綺麗、2つの言葉を越した表情に、俺の心は青春の鐘を鳴らす。全人類の宝だろ。そんな宝を独り占めしている俺は、神にも憧れられる存在だ。
「そっ、れは……あ、あの」
「言い訳は聞きませんよ。私は別に、泉水くんの事を待っていたんじゃありませんもん!」
怒っているからか、若干ツンデレ要素が混じっている気がする。何だ、まだ褒美をくれるのか。ありがとう、一生分の感謝を此処に。震える両手に力を籠め、息を吸って吐く。
「天瀬さんが! 可愛いからです!!」
……自分のした事を脳が理解するのに、約10秒。しかし、身体は先に解っていた様で、湯船につかっているみたいに熱される。恥ずかしさのあまり、君の顔を直視出来なくて、バッグを急いで掴み、廊下へ逃げ出そうとした。——君に呼び止められるまでは。
「待って……どういう意味ですか。かわっ、いっ」
「知りません! 俺、きょ、今日はこれから用事があって、帰らせていただきます。さっきの無かった事にしてください」
「っ、そんなの嫌です! 教えてもらえるまで、か、帰らせません!!」
上手い言葉が思い付かなくて、口から出て来る下手な言葉を並べる。すると、大人しい君が大声で叫んでくるので、吃驚しながら後ろを向く。いや、可愛いって初めて女子に言ったけど、誰もが羨む美貌を持つ君なら、俺以外にも普通に言われているだろう。何故引き止めるんだ? 疑問が頭を回り続けて、呼吸の仕方を忘れた。
「初めてで、可愛いと言われるの……。その、嬉しくて。話しかけられる事ないのに、い、泉水くんとは楽しいから」
顔を赤くして話す君が、この世の者とは思えないくらい可愛い。それに加えて、俺と話すのは楽しいと思ってくれていたと知り、緊張が俺を支配する。つまり、可能性があるという事で良いのか? 今、告白をしたら——2人きりの教室に優しい色が入り込んで。触れられない女神に近寄り、手を伸ばす。窓際で面白そうに本を読む君が、ずっと、ずっと前から。
「天瀬さんと、とも、友達! 友達になりたくて!! 優しくて素敵なので……あはは、嫌ですよね、急に言われても! すみませんっ」
残り1歩の所で勇気が萎んでしまった。勇気とは別に膨らむ思いを伝えられたら、どれだけ良いだろうか。チャンスを掴めない自分が悔しくて、誰かに当たってしまいたい。そう思っていたら「分かりました!」と喜びに溢れた声が耳に入る。顔を上げたら、俺の大好きな笑顔が目に飛び込んだ。
「始めましょう、お友達! ね、泉水くん」
ほらね、君の罠に嵌まったら、後戻りは出来ないよ。
甘い香りに誘われて、底の見えない愛に堕ちて行く。
*
久しぶりの長文でした。短編じゃ1番かな? 何故こんな文字数になったかといいますと、時間の都合で長時間パソコン使えなかったから、少しずつ書いていたら長くなりました。私は半分くらいで疲れ果てるので、長編はやる気でないと書けません(涙)。でもまぁ、この作品はまた書きたいなー。罠に嵌まったのは2人共だよねって事で。
- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.58 )
- 日時: 2015/06/01 18:52
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 花蜜、それでも 】
「ほんと、これが最後だから! 俺のお願い聞いて—。親友でしょ?」
「却下。お前の願いは疾うに聞き飽きたっての。そもそも、人を振り回す奴が親友な訳ないだろ」
どうやって見つけ出したのかは判らないが、俺が買ったポテトチップスを、許可無しに食べている男へ目を向ける。それ、カロリー高いのに……沢山食べて太っても、俺は知らん。自業自得だ。溜息しか出て来ないけど、結局毎度聞き入れてしまうんだな、これが。シーツが洗濯したばかりだというのに、油分が染み込んで汚れていた。どう責任とってくれるんだよ、今直ぐ買って来い。
「聞いてくれるんだー、やったー、嬉しいなー」
「その前にシーツ買いに行け。棒読みも止めろ。それ以上したら聞かない」
「またまたご冗談を。バレバレですよ?」
「冗談言っていない」
本棚から取り出した漫画を読みながら、頼む気あるのか不思議に思うくらい、爆笑している。因みにバタ足させながら。慣れているので、別に苛立ったりはしないが、此処まで来ると鬱陶しい。クーラーで冷えた室内へ、度々遊びに来るその癖。昔から言っているのに直らないけどさ、そろそろ本気で直した方が良いと思う。もう17だし。
「あー、やっぱリンの家は居心地良いよなー、楽しいしー、お願いも聞いてくれるか」
「伊吹(いぶき)」
名を呼ぶと、先程の笑みを崩しながら「……ばれちゃった?」と言う。何時ものと声が全く違う、低い。最初から分かっていた。何年お前と一緒にいると思っているんだ。俺を舐めるなよ。
「お前が強請るのは、必ず何かあった時に限る。無自覚だとは言わせない」
「そうだったんだ、へー、知らなかったなー、はー」
「…………」
わざと言っているな、コイツ。でも許してやるよ。悲しみを隠そうとした強がり、残念ながら俺は嫌いじゃない。だから、気付かないフリをしてあげる。
「言いたくなければ、言わなくて良い」
「いやいやいやいやいやいや、言う、言いますよ? てか、言いに来たんで。言わずに帰らないからねー」
「……親父さんか」
「おいおい、言うって言ったでしょ。無視しないでー。泣いちゃうよ? ねえ泣いちゃ」
「————じゃあ泣けよ」
辛い日は、思う存分泣けば良い。苦しい日は、その胸の中身を晒して良いから。俺が半分支えてやるつもり、悪いけど独りにはさせないよ。そんな事したらお前、きっと笑って涙するんだろう。現に今、俺の目にはすすり泣く男が見えているのでね。慰めたい訳じゃない、けど、2人で分かち合えたら、と俺はさ。冷たい水滴が落ちて来て、喉が渇いていた事を思い出す。……これといって、特別な日常でもない。平凡で何処にでもある一瞬の煌めきに過ぎないのに、様々な輝きを持つ。それを先の未来で一緒に見たい。ただ、見たい。
「いやぁー、泣いた。久しぶりに泣いたー。目が痛いわー」
「それは………………うん」
「何もなしかい!」
最高、と床を叩いて笑っていた。全然面白くないのに。まだ赤みの残る瞳が、差し込む日差しを拒む様に細くなった。ポテトチップスを食べ終わり、漫画も読み終えて満足したのか、ゆっくりと立ち上がる。黒と茶の混ざった髪を掻き毟って、考え込んだ表情になると、人差し指を立てた。
「よーし、この間出来たクレープ屋に行こう。そうしよう」
「は? 何の話だ」
「お願いだよ、お願い。なになに、まさか俺の泣き顔が可愛過ぎて忘れちゃったー?」
「死ぬか?」
睨みを利かせれば「冗談だって」と鼻歌を歌う時みたいに軽く終わらす。何時も通りと言いたい所だが、そんな寂しそうに笑われたら断る気にもなれない。何だか操られている気分で、楽しいとも言えないんだけど。
「リンったらー! 早く支度してよねー。閉店しちゃうじゃん」
「はいはい」
「『はい』は1回ですよー」
踊りながら先を行くお前の後を、小走りで追いかける。
間に合えば良いな、そう思いながら。
*
正反対な2人が、兄弟みたく過ごす日常を書きたかった。
伊吹は不安定な家庭で育ったので、滅多にいないレベルの甘え下手になってしまうが、1歩後ろで見守ってくれるリンが救いの手を差し伸べる。何か友情って良いですね(( 本当に苦しい時は、誰かに相談するのが1番だと思います。溜め込んでしまうより。
- Re: 星屑チョコレート【短編集】 ( No.59 )
- 日時: 2015/07/09 17:17
- 名前: 蒼 ◆udrqXHSxjI (ID: A9wxTbZM)
【 水浸し 】
貴方が誰かの名を呼ぶ度に、1つの形だったものは融け出して。気が付いた時には、液体と化していた。それでも知らん顔しているから、液体は欲しがり始めるの。貴方を、貴方だけを。
解っているくせに、と呟けば苦笑いみたいな顔を作る。慣れって怖いね、全然痛くないや。器から零れて行く名のない液体が、貴方ごと消してしまえば、そうすれば、貴方は私のものになる。だからさ、止める気は全くないよ。何時しか貴方と私が重なるなら、それ以上嬉しい事はないものね。
それなら、しつこいって叱ってよ。無謀な夢は諦めて、新しい夢を探しても、映すのは他でもなくて。何も与えてくれない貴方を深く、深く。
ああ、また貴方を呼ぶ声も聞こえて、液体が零れる。忘れ去られる頃には、こんなもの蒸発していて。私の全てと。
*
片思いは辛いよって話。
融けちゃったら消えてしまうのに、止まらない。そういう気持ちを考えて書きました。相手も気付いているけど知らないフリをして。……卑怯ですね(笑)。次の恋に期待!
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