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ベスティア・ラッコント
日時: 2015/07/27 23:04
名前: いろはうた (ID: 2wn.vvKF)



すべては、あの青い夜に始まった


私の復讐は始まった


あなたの瞳に魅入られた


殺意あふれる琥珀の瞳に


恋するように


狂うように






  獣
ベスティアのように

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Re: ベスティア・ラッコント ( No.5 )
日時: 2015/07/30 00:18
名前: いろはうた (ID: 2wn.vvKF)

*始まりは日が落ちた瞬間。

夕日が沈むと同時にそれは始まった。

とろりと溶けたトマトのような夕日の光がヨガリ一族の村を最後にちろりとなめた後、

突然村が青い炎に包まれた。

見たこともない青い炎に村人たちは恐れおののきながらも消火活動を開始した。

しかし、炎はただの水では消えなかった。

精霊使いの霊力によって生成された炎だったのだ。

すぐさま村中の水系統の霊質の精霊使い達が集められ消火活動に当たり、

それ以外の精霊使いは一般の村人の守護、または放火犯さがしへと駆け回ることとなった。

ナタネの両親も数多くの精霊使いの一員として、戦いに赴くこととなった。

まだ鮮明に覚えている。

母が出かける前に頭を優しく、泣きそうな顔をしながら撫でてくれたことを。

幼かったナタネは、母がどうしてそのような表情を見せるのかが理解ができなかった。

まさか、これが永遠の別れになるとは思いもしていなかったのだ。

母はきっとわかっていたに違いない。


「生きるのよ、ナタネ。

 あなたには、双子の妹がいる。

 名前はツバキというの。

 必ず、見つけ出して。

 そして、二人で、幸せになって」


どこかせわしない口調でそう耳元にささやきこまれた。

耳にかかった暖かな吐息。

頭に触れていたぬくもりが静かに離れる。

そして、母は父と共に青い炎に向かって駆け出して行った。

しばらく呆然としていたが、ナタネはやがて、よたよたと歩き出した。

あてはない。

ただ、本能的に逃げなくてはならない、と思ったからだ。

そして、このことを誰かに伝えないといけないと、強く思った。

ナタネは走った。

青い炎の隙間をすりぬけ、潜り抜けて走った。

村の出口まで差し掛かった時、ぞくりと背に悪寒が走った。

足がひとりでに止まった。

振り返らずにはいられない殺気。

広がり始めた星空。

藍色の空をなめるように燃え盛る青い炎を背景に、その人は立っていた。

炎を背にして立っているため、顔がよく見えない。

中性的なしなやかな体からは、すべてを圧倒するようなオーラがにじみ出ている。

そして、何よりその瞳。

獣のような琥珀の瞳が、ナタネをとらえた。

ジリ、と足が後ろに下がった。

怖い。

怖い、怖い、怖い。

私が食べられる。

あの人に食べられてしまう。

歯がカタカタと震えてうまくかみ合わない。

握りしめた手は汗でびっしょりと濡れた。

怖い。

怖くてたまらない。

だというのに目を離せない。

離すことができない。

その視線にがんじがらめに縛られる。

息をすることすらうまくできなくなる。

その時、その人は無造作に、手にしていた重いものを投げ捨てた。

鈍い音と共に人影が地面を転がる。

炎に照らされて見えたその人影は、母だった。

血まみれのその体はピクリとも動かなかった。

大きな音が聞こえる。

数秒してから、それが自分の喉からほとばしる叫び声だと気付いた。

悲鳴とも憤怒ともいえない叫びだった。

足が動いた。

ナタネは村の出口に向かって走った。

このことを、誰かに伝えなければならない。

誰に、どうやってかもわからない。

それでも伝えなければならない。

ナタネは走った。

黒い森の中をがむしゃらに走った。

木の根に躓き、坂を転がり落ちても、かまわず走った。

一瞬でも立ち止まってしまったら、あの青い炎に、あの人につかまってしまうような気がした。

黒い森が次第に灰色に変わり、やがて銀の森に変わった。

白い地面が裸足のナタネの足にかみつき、血が噴き出した。

痛かった。

怖かった。

ナタネは泣きながら、それでも走った。

獣のごとく、体を丸めて、風のように森を駆け抜けた。

やがて、遠くに小さな家が見えた。

その前に立っている、白い髪をしたきれいな女の人。

あの人だ。

あの人ならきっと、皆を助けてくれる。

女の人がナタネの気配に気づいて振り返り、驚いたようにその青い瞳を見開いた。

ナタネは渾身の力を振り絞って走り、その女の人の体にとびついた。


「助けて!!

 助けて!!

 ヨガリの村が!!

 みんなが、青い炎に……!!」


そこまで言ったとき、急に体中の力が抜けた。

膝がガクンと折れ、立っていられなくなる。

だめなのに。

まだ女の人に、全部を伝えきっていないのに。

言わなきゃ。

伝えなきゃ。

ああ、どうか。

どうか、みんなをたすけて、と。

Re: ベスティア・ラッコント ( No.6 )
日時: 2015/07/30 00:23
名前: いろはうた (ID: 2wn.vvKF)

あんず様!!


お久しぶりです!!
本当にお久しぶりです!!
半年ぶりぐらいでしょうか……長かった……
放置プレイして大変申し訳ありませんでした……


いやはや、いろはうた、もともとシリアスなものはそんな書けない人間でして
あくまで、コメディメインでいかせていただきます!!
おっしゃる通り、所々に少々シリアスな部分があるって感じですね……
序章のあたりだけものごっつシリアスですが、そこをこらえていただければ
まあ、超絶ファンタジーな世界が広がりますので!!


コメントありがとうございます!!

Re: ベスティア・ラッコント ( No.7 )
日時: 2015/07/30 00:54
名前: みーこ ◆jdHxHHqZ4A (ID: pmOIN4oE)


こんにちは!
いろはうた様!
新作見つけて、飛んで参りました。
遅くなってしまい、すみません(。-_-。)
全部読みました!
雰囲気好きです。
精霊とか、そういうの大好きです!
応援しています。
では!

Re: ベスティア・ラッコント ( No.8 )
日時: 2015/07/30 15:41
名前: いろはうた (ID: 2wn.vvKF)

みーこ様!!


お久しぶりです———!!
お元気でしたかーーー??


物語の雰囲気は今までの「浅葱の夢見し」や「なめわか」とは大きく異なったものとなる予定ですー
なんというのでしょうか。
バトル中心??
題名が、イタリア語で「獣物語」なので、繊細な心理描写よりは
情景描写が多くなるかと思われますーーーー


コメントありがとうございますーーー

Re: ベスティア・ラッコント ( No.9 )
日時: 2015/07/30 16:12
名前: 冬野悠乃 ◆P8WiDJ.XsE (ID: nzgoKsJ4)

こんにちは、冬野悠乃と申します!

えっと、忘れやすい頭でできているので、もしかしたらこのペンネームではコメントしていないのではないかと思いますが…元実上しわすです。

まず、主人公のナタネちゃんの名前が可愛いと思いました。
不思議な感じがする名前だなと思いました。
日本名なのでしょうか…? だとしたら、日本名ってカタカナにするととても素敵な感じに聞こえるな、とも思いました。漢字でも素敵なんですが…!

それと、プロローグの 恋するように 狂うように というところも同じく不思議な感じがしました。
いい意味で矛盾しているというか、妖艶(?)というか…。

あと、村民さんたちはみんな…いなくなっちゃうのかな…。
いなくなっちゃったり死んじゃったりとかは嫌いなので悲しんだりしました。

女の人の名前、なんなんだろう…と一話からたくさん謎が…!

これからのお話が楽しみで眠れません(ちゃんと寝なさい

というわけで、変わらず更新応援しています!
では、冬野でした!


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