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陰陽師-紫鶴
日時: 2015/11/14 21:22
名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)

こんにちは〜、星飯緋奈です。
今回は、平安に手を出しました。前回は姫様中心でしたが、今回は違いますよ〜♪
では、設定です!

夜造 紫鶴【やづくりのしづる】(主人公)
夜造家の末弟。陰陽寮に出仕する。
圧倒的な才を持っていて、そのおかげか人に忌まれる存在となってしまった。現在は、夜造家本邸ではなく、月子の家に住んでいる。

白宮 月子【しらみやのつきこ】
霊力が非常に強い姫。白宮家の次女。彼女の霊力に惹かれてやってくる妖を白宮家の本邸に寄せ付けないように、彼女は別邸に住まい、紫鶴を自分付きの陰陽師として同じ邸に住まわせている。

白宮 雫【しらみやのしずく】
月子の姉。入内しており、何くれと紫鶴を呼びつけて、月子をからかうなど、わかりにくいが月子を気にかける。内裏での名は『梨壺の女御』

藤原 悠次【ふじわらのゆうし】
殿上人藤原義晴の次男。家は長男である志蓮にまかせ、自分は陰陽道の道に進んだ。

紫雲 【しうん】
月子に使える女童(めのわらわ)
紫鶴を兄のように慕っており、兄様と呼んでいる。元は身分が低かったが、月子の意思によって、白宮家の姫として扱われている。

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Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.20 )
日時: 2016/03/04 20:48
名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)

♪゜゜・*:.♪。..。.:*・♪・*:.。. .。.:*♪♪・゜゜・*
草木も眠る丑三つ刻。外から聞こえる細いが美しい音色が耳に入り、紫雲は目を覚ました。白宮邸にいた頃、よく耳にした音だ。
「笛の音かしら…でも、こんな夜更けに、いったい誰が」
帳台からそっと起き上がって、紫雲はそっと外に出た。秋なのだが、とても暑い。しかし、夜の空気はほんの少し、冷んやりしているから、過ごしやすいといえば過ごしやすかった。が、主人である月子の事が心配で、紫雲はそんな事をきにする余裕がなかった。
「もしかして…これが?」
《…ミ…タ》
「…っ!?妖…?そんな、ここは、兄様の結界が張ってあるはずなのに…っ!」
「紫雲様?どうなされました」
「あ…典姫(てんき)さん。あの、笛の音が、聴こえませんでしたか?」
「笛?そんな音、聞こえておりません。…まさか、月子姫と同じ?」
典姫は、長く月子に仕える女房だ。だから、月子が『視える』事も受け入れているし、そういった事に耐性を持っている。だから、紫雲の事を気味悪がったりしないのだ。
「まあ、今日は一先ずお眠りを。私が付いておりますからね。本当は恵斗がいた方が良いのでしょうが…寝殿に男性が入るのはしきたりに触れますから」
「ごめんなさい…」
「謝る必要は御座いませんよ」
にっこりと、典姫は皺の多い顔に笑みを乗せた。

Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.21 )
日時: 2016/03/15 00:10
名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)

紫雲が再び眠りにつくと、典姫は寝殿から見てすぐの池を見つめた。
「あそこあたりかしら。紫鶴殿に相談せねばならぬようですね…」

次の日。月子は、紫鶴が大内裏に出仕せねばならぬのと、牛の機嫌が若干悪いと直成が困ったようにぼやいていたため、渋る姉をなんとか諌めて日が昇りきった頃に白宮邸を辞した。白宮邸から南四条邸までへが意外に遠いため、半刻程度(約一時間)かかるものの、羊の刻あたりには到着することができた。
「直成、牛の機嫌はどうかしら」
「姫様…まだ、良くございません。どうしたのでしょうか、今迄こんなこと無かったのに…どうしたのかなぁ」
直成の大きな瞳に、涙が溜まる。牛飼い童ですら原因が分からないとなると、月子にはもっと分からない。が、しかし、ふと思い当たって、こう言った。
「もしかして、白宮邸の牛に反応したのではないかしら。あちらは雄の牛だったはずよ。とても気性が荒くって大変だと、牛飼い童がぼやいていたことがあったから。直成、その子は雄?雌?」
「雌だったと思います」
そこで、直成りはハッとした。
「まさか…少し、時間をおいて調べてみます」
「えぇ、頼んだわね」
月子は、自分の背より幾分か低い直成の頭を撫でて、本殿に入った。

Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.22 )
日時: 2016/03/23 08:53
名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)

「お帰りなさいませ、月子様!」
自身の部屋に着くなり、今まで屋敷の主人の代わりを任せていた紫雲が飛びついてきた。
装束を纏った紫雲からは、いつも月子がおびている香が僅かに香ってきた。部屋の残り香がついたのだろう。腰まで伸びた髪がさらさらと揺れる。
「ただいま、紫雲。主人の代理、お疲れ様」
「勿体無いお言葉、感謝いたします」
にっこりと笑って、紫雲は言った。月子もそれに微笑む。が、紫雲の眼の下にできた隈を見つけると、その目元にすっと険しさを宿らせた。
「紫雲、眠れていないの?」
「え?…あぁ、隈の事ですね。実は…」
そこで、紫雲は口を閉ざした。言っていいかどうか迷っているのだ。
「言いたくない?」
「いえ。…月子様が白宮邸へ向かわれる前にお話ししてくださった笛の音。私にも聴こえたんです。それで、夜中に目が覚めて。典姫さんがついてくれたから、なんとか眠られたのですが、結局寝不足になっちゃって」
てへへ、と笑う紫雲は年相応だ。しかし、月子はそれを微笑ましいとおもうよりも、事の重大さを感じていた。

Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.23 )
日時: 2016/03/31 08:20
名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)

「紫鶴殿!」
「あぁ、悠次殿。どうされました、そんなに慌てて」
「良いから、こちらに」
「え?」
出仕して早々、紫鶴は悠次にによって塗籠に連れて行かれた。
「お前、大納言の白宮長則様となにか関わったか?」
「は?まて、まず状況から説明しろ。出仕して早々のこの騒がしさはなんだ」
二人きりになったところで、紫鶴の口調が荒くなる。若干どころでなくささくれ立った空気は、紛れもなく紫鶴から発されているものだ。
「いいか、まず今日の朝議に今まで体調不良を理由に欠席していた長則様がいらっしゃったんだ」
「ほうほう、それは良かったな。で?」
「んで、不躾にも程があるけど、中納言の藤原明良…俺の叔父にあたるヒトなんだがな、その人が長則様にこう言ったんだ。
『どこぞの陰陽師に祈祷を頼んだのか』と。んで、長則様はこう言ったらしい。
『娘お抱えの陰陽師に頼んだ』とね。長則様の娘は中宮雫と月子姫のみ。で、雫様にも幾人かお抱えの陰陽師がいるからな」
「つまり、大内裏は今、その人たちか俺のどちらかが長則様の祈祷を行ったのか詮索するのを楽しんでる訳か」
「単純に言えばそういう事だ」
「厄介だな…」
紫鶴は、頭を抱えたくなった。紫鶴は、政治に対して淡白だ。だから、紫鶴の仕事は主に『裏』の仕事が多いのだ。
「ま、今後はお前がいう『厄介事』に巻き込まれるかも知れないから、心して起きなよ」

Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.24 )
日時: 2016/05/05 08:11
名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)

「紫鶴殿!」
(いきなりきたか)
内心で溜息を吐きつつ、紫鶴は振り返った。そこには、もう四十路に入ったかというような、中年貴族がいた。纏う衣も上質で、一目で自分と位が相当離れていることが分かる。が、そんな事で愛想良くなどしないのが紫鶴だ。
「なんの御用でしょうか?護符作りの依頼ですか?」
「それは間に合っているよ。先日、頼んだばかりだからね」
「そうですか。では何でしょう。陰陽頭への言伝、とか?」
「そうではない。私は個人的に君に話があるのだよ」
「私に?」
「そうだ」
「また何故。陰陽寮には、私より腕の良い者たちがたくさんおりますが」
あえて、紫鶴は突っぱねた。この中年貴族の機嫌など紫鶴には関係ないからだ。態度から見ても、紫鶴の格上とはいえ、政治を動かす力はないのだろう。
「いや、君でないとダメなんだ…白宮の弱点はなんだ?」
「白宮の…?生憎、私が応えるようなものでは御座いません。私は、白宮家の姫、月子姫に仕えております。ですから、彼女の立場を危うくする情報は漏らさぬようにしていますので。申し訳ありませんが、お引き取りください」
はっきりと、紫鶴は言った。それは、この中年貴族を敵に回したも同じだろう。
拳を握ってわなわなと震える貴族に、紫鶴は刀印を結んだ手をかざした。
「もし、この件で逆恨みをし、月子姫及び白宮家に連なる方々に害を及ぼすのであれば、私は容赦致しません。場合によれば…分かりますよね?」
言外に、【とりあえず俺に関わるな】と告げたのだが、果たして気がついたのか。まぁ、そんな事は別におこう。退散していった貴族を流し目で見て、紫鶴は再び陰陽寮へ足を進めた。


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