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- 陰陽師-紫鶴
- 日時: 2015/11/14 21:22
- 名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)
こんにちは〜、星飯緋奈です。
今回は、平安に手を出しました。前回は姫様中心でしたが、今回は違いますよ〜♪
では、設定です!
夜造 紫鶴【やづくりのしづる】(主人公)
夜造家の末弟。陰陽寮に出仕する。
圧倒的な才を持っていて、そのおかげか人に忌まれる存在となってしまった。現在は、夜造家本邸ではなく、月子の家に住んでいる。
白宮 月子【しらみやのつきこ】
霊力が非常に強い姫。白宮家の次女。彼女の霊力に惹かれてやってくる妖を白宮家の本邸に寄せ付けないように、彼女は別邸に住まい、紫鶴を自分付きの陰陽師として同じ邸に住まわせている。
白宮 雫【しらみやのしずく】
月子の姉。入内しており、何くれと紫鶴を呼びつけて、月子をからかうなど、わかりにくいが月子を気にかける。内裏での名は『梨壺の女御』
藤原 悠次【ふじわらのゆうし】
殿上人藤原義晴の次男。家は長男である志蓮にまかせ、自分は陰陽道の道に進んだ。
紫雲 【しうん】
月子に使える女童(めのわらわ)
紫鶴を兄のように慕っており、兄様と呼んでいる。元は身分が低かったが、月子の意思によって、白宮家の姫として扱われている。
- Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.10 )
- 日時: 2015/11/23 21:44
- 名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)
〜返信〜
てるてる522さんありがとう!続きが楽しみとは…ありがたいです!更新頑張ります!
〜本編〜
雫に会う前に、まずは挨拶をと心に促され、月子は父である長則がいる部屋に入った。
「父上、只今戻り遊ばしました。月子にございます」
「あぁ…月子か。入りなさい」
長則は、帳台に横になっていた。長則は、大納言という位を賜っている殿上人だ。しかし、最近は体調を崩し、出仕することするままならない。紫鶴を連れてきたのは、雫のこともあるけれど、長則のことも良くして貰いたいからであった。
「あのね、父上。紫鶴も来たの。だから、祈祷、して貰いましょう?」
と、月子は言った。長則は一言だけ、すまない、頼むと言った。
「わかりました。あ、月子姫」
「なに?紫鶴」
「月子姫は、中宮様の処へ。お…私は殿の祈祷をしますので」
よそよそしい紫鶴の態度に、月子は一瞬眉を寄せたが、合点がいった様で、分かったわ、と頷いた。
「それでは父上。私は姉様の処へ行きますね」
「あぁ…」
と、長則は微笑んだ。紫鶴は、袖の中で刀印を結び、小さく祓詞を唱えた。
「国津神、大尺新尊(おおさしあらたのみこと)へ。この地の穢れを一掃し、清らかで清廉な空気へ戻したれ」
紫鶴が祓詞を唱え終わると、長則の血色がよくなった様に見えた。側に控えていた鈴蘭が、驚いた様に目を見開いている。
「それでは殿。今より、祈祷を行います。本格的なものは出来ませんが、恐らく、効果はでるかと存じます」
「頼むよ…私は、あの子の帰る場所であらねばならないのだから」
あの子が誰を示しているのか、分からないけれど、紫鶴は深く頷いた。
- Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.11 )
- 日時: 2015/11/27 18:07
- 名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)
「ちゅ…雫様。月子様がお見え遊ばしました。如何致しましょう?」
「分かっているのでしょう、心。是非、お通しなさいな」
御簾越しに聞こえる声は、月子の声と瓜二つだ。しかし、月子の様に、人を惹きつける不思議な魅力がある訳でもなく、弱々しく、けれど澄んだ声だった。
「姉様、大丈夫?容態は、良くないのでしょう?大丈夫、よね?」
「まったく、なんて落ち込んだ声をしているのかしら」
「え?」
御簾の中に入り、帳台の近くに腰を下ろした月子の耳に届いたのは、明らかに冗談を含んだ声音で。戸惑う月子に、雫は更に畳み掛けた。
「わたくしはね、あなたの元気のない声を聞きたい訳ではないの。あなたの、人を惹きつける特徴ある声が聞きたいのよ」
「私の声を…?」
「えぇ。なかなか会えない妹ですもの。あなたが沈んでいたら、わたくしの心も沈んで、治る病も治らなくなるわ」
雫は、心に人払いをさせて月子を帳台の中に招き入れた。
血色は悪いけれども、ちょっと悪戯な笑みを浮かべた雫の様子に、月子はそっと安堵の笑みを浮かべた。
「そうそう、月子。紫鶴殿とは、上手くやっているのかしら?」
「え?どういう事?」
「いつ紫鶴殿との婚儀を挙げるのか、と聞いているのよ」
「ちょ、ちょっと待ってください!姉様、何か誤解をしていませんか!?」
と、月子は慌てた。
- Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.12 )
- 日時: 2015/11/29 14:03
- 名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)
「あら、何をそんなに慌てているのかしら?もしかして…図星?」
「だから何の事なの!?紫鶴は私が雇っている陰陽師なのよ。結婚とか関係ないわ」
ズキっと傷んだ胸の事を片隅に追いやり、ぐいっと身体を雫の方へ乗り出した。
「そう、残念だわ。あ…」
「どうしたの?姉様」
「今度、清涼殿で歌合戦があるの。その時、紫鶴殿にも出て欲しいと咲子が言っていたから、良かったら言っておいてくれないかしら?多分、陰陽寮を通じて伝わるとは思うけれど」
言い終わると同時に、雫は咳き込んだ。紫色の唇から咳が零れ、咄嗟に月子に背を向ける。
「姉様!」
「ごほッ…平気よ…しんぱい、しないでちょうだい…」
肩越しに月子を振り返り、雫は仄かに笑った。
「…っ、心!」
「はい…何でしょうか」
「姉様の咳が止まらなくて…」
「はい。雫様、大丈夫ですか?」
心は、焦燥を顔に滲ませながら雫の背中をさする。
「はぁ…良くなったわ。ありがとうね、月子、心」
「いいえ。大丈夫ですわ」
と、二人は言った。
- Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.13 )
- 日時: 2015/12/13 13:35
- 名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)
滅茶苦茶久しぶりの更新です。
形ばかりの祈祷を終えて、紫鶴は鈴蘭に案内されて、雫の元に向かっていた。
(なにか含んでいる…?なぜだ?)
鈴蘭が纏う空気はどこか後ろめたく、どことなく《前に立つ事が怖い》というような気持ちが伝わってくる。
それは、雫がいるのであろう対屋に入った時には一層顕著なものとなっていた。
「あら。鈴蘭じゃない。どうしたの?」
ふと気がつくと、簀子に侍る女房が多くなっていた。その中でも特に部屋に近いところに侍っていた女房が鈴蘭に声をかけたのだ。鈴蘭は、先程の空気をさっと打ち消して、口元に仄かな笑みを浮かべてこたえた。
「殿の祈祷が終わったから、紫鶴様をお連れに。…もしかして、人払いをなされたの?」
「そうよ。まぁ、もう会えないかもしれない妹との水入らずの時間を作らなくてはね。中宮に立后されてからはお疲れになっているみたいだし」
心はそう言って肩をすくめた。立っていてもなんなので、紫鶴は侍る女房達の顔が見えない位置にすっ、と座る。鈴蘭も、近からず遠からずの場所にすっ、と座った。
「…っ、心!」
切迫した月子の声。心は、はいと答えて部屋に入っていった。
「なにが…?」
「梨壺の中宮様、咳が止まらないそうです。倒れたのは咳の所為ではないみたいですけれど、あれの所為で体力が奪われて、治るに治らないでしょう」
鈴蘭は、そうやって呟いた。その白い面を縁取る黒髪は無造作で、彼女が身じろぎするたびに肩にはらりと落ちていく。
ついと視線を動かした紫鶴は、他に侍る女房達の鈴蘭に向けられる瞳が、異様にきつい事に気がついた。
「なにを怒っているのでしょうか?」
「なにも起こってはいませんわ。皆様、中宮様の事が気がかりなのでしょう」
『怒る』を『起こる』と勘違いしたのか、鈴蘭はなにを言っているのか、の言外に告げている。紫鶴は、なんでもないと首を振った。
- Re: 陰陽師-紫鶴 ( No.14 )
- 日時: 2015/12/15 18:11
- 名前: 星飯 緋奈 (ID: uLBjsRTH)
「雫様…紫鶴殿がいらしておりますが…」
「あら、そうなの?なら、部屋に通しておあげなさい。帳(とばり)で仕切れば、顔を見られる事もないでしょう」
「かしこまりました」
心は、そう言ってさっと簀子に下がり、控えていた紫鶴と鈴蘭を呼んだ。鈴蘭を呼んだのは、居づらそうだったからだ。
紫鶴は、張台から遠からず近からずの場所に座り、頭を下げる。
「失礼致します、梨壺の中宮様」
「固いわね」
突飛な発言に紫鶴は咄嗟に頭を上げた。紫鶴は殿上することすらできない、下位の貴族だ。それは、月子が召し抱えている陰陽師であるし、同期には殿上人藤原義晴の息子悠次がいるけれど、それだけだ。
「固い、とは?」
「察しが悪いわね…わたくしには敬語は不要と言う意味よ」
「それは…できません。貴方様は帝の后。私のような下位の貴族は、本当は会話すら許されないのです」
紫鶴は、また頭を下げてそう言う。鈴蘭が、心配気にこちらを見ている事を背中からひしひしと感じつつ、そのまま頭を下げていると、張台から帳を開き、こちらに誰かが向かってきた。
「顔を上げて、紫鶴」
「っ!月子…姫?」
月子。紫鶴を召し抱える姫君だ。しかし、彼女が裳着ノ式を挙げてからは、直接顔をあわせる事をしなくなった。いや、紫鶴自身が避けていたのだ。先程、ちらりと垣間見えた月子の顔は、記憶していたものより格段に美しかった。
「まったく、紫鶴らしくもないわね。世間の体裁を気にする前に、貴方らしさを失わないで頂戴な」
「しかしっ…かしこまりました」
反論しかけたが、大人しく言うとうりにした紫鶴。しかし…
「なら、その他人行儀な喋り方を止めて」
「え…はい、じゃなかった。分かったよ」
慌てて喋り方を変えれば、月子はうん、と頷いた。
「それじゃあ紫鶴、初めてちょうだい」
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