コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~
- 日時: 2016/01/16 20:59
- 名前: 逢逶 (ID: I.inwBVK)
- 参照: http://www.uta-net.com/user/poplist.html
おはようございますorこんにちはorこんばんは
逢逶(あい)です。
二作同時進行で参ります。
応援よろしくお願いします!
*First Season EPISODE*
episode0 >>1 episode10 >>11
episode1 >>2 episode11 >>12
episode2 >>3 episode12 >>13
episode3 >>4 episode13 >>14
episode4 >>5 episode14 >>17
episode5 >>6
episode6 >>7
episode7 >>8
episode8 >>9
episode9 >>10
*First Season END* >>18
*Second Season EPISODE*
episode0 >>19
episode1 >>20
episode2 >>21
episode3 >>22
episode4 >>23
episode5 >>24
episode6 >>25
episode7 >>26
episode8 >>27
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.27 )
- 日時: 2016/01/16 20:54
- 名前: 逢逶 (ID: I.inwBVK)
episode8
title 澄んだ瞳
「助けて…!助けて…っ」
私は一種のパニック状態に陥り、それ以上何も言うことができなかった。
「どうした?!」
有明さんが店から出てきて心配そうにかけよってくる。
成瀬さんは私の背中に手を回し、子供をあやすみたいに優しく頭を撫でる。
「織さんが大変だから…とりあえずどっか連れて行こう」
「そうだな。見つかったらやばいし」
私は支えてもらいながら立ち上がる。
そのまま近くのホテルに入った。
頭が痛い。
ずるずると足を引きずり、部屋に入った。
椅子に座らせてもらい、ようやく落ち着いてきた。
「織さん」
成瀬さんが優しく私の名を呼ぶ。
また涙がこぼれそうで。
好きにな人が目の前にいる。
嬉しいはずなのに、嬉しくない。
…私が、既婚者だからだ。
「何があったか話せますか…?」
よく考えれば、誠の話をしたのは成瀬さんだけ。
有明さんもいるし、何よりこれ以上迷惑をかけていいのだろうか?
私の中の様々な迷いが素直に〝助けて欲しい〟と言わせてくれない。
さっきは言えたのにね。
ぶーっ
また、携帯が震えた。
「携帯鳴ってますよ?」
「…出ません」
「さっきの電話と何か関係があるんですか?」
言うまで帰してはくれないだろう。
そう言い訳して、私は二人に何があったか話すことにした。
「思えば私の人生は、十八歳で終わっていました。…高校三年生の時、彼との子供を妊娠しました」
それから全てを話した。
二人の顔を見ることはできなかった。
どんな表情をしているかは安易に想像がついたから。
話し終わって顔を上げると知らぬ間に頬に一雫の涙が伝った。
急いで手で拭うけど、それを境に次々に涙が流れた。
「織さん…」
成瀬さんは優しく強く私を抱きしめた。
そのからだが少しだけ震えていることに気が付いて、成瀬さんにすがるように腕を回した。
「どれだけの想いをあなたは飲み込んできたんですか…?」
成瀬さんはからだを離して私の頬の涙を指で拭った。
「…俺、ちょっと外いってくる」
そんな有明さんの言葉も、もう耳に入らない。
今、私は成瀬さんに支配されている。
全ての感覚が成瀬さんが欲しいと騒いでいる。
「織さん、何度だって言います。好きです」
「…私だって、」
成瀬さんが好きです、ギリギリで飲み込んだその言葉。
伝えたくて何度もためらってきたその言葉。
「ちゃんと言ってくれきゃわかりません」
「好きです。…成瀬さんが好きです」
やっと伝えると、成瀬さんの頬が真っ赤に染まった。
「俺が一生かけて織さんを守ります」
「…私は既婚者ですよ?」
「関係ないです。俺は誠さんの奥さんじゃなくて、織さんが好きなんです」
「成瀬さんにはもっと良い人がいるだろうし、私なんか…」
「この先、織さんより好きになる人はいません」
「誠だって…私とは別れないと思いますよ?」
「織さんを辛い目に合わせる誠さんが織さんと一緒にいて良いわけがない」
私は澄んだ成瀬さんの瞳を見つめて思った。
この人と一緒になりたい
と。
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.28 )
- 日時: 2016/03/22 18:19
- 名前: 逢逶 (ID: siKnm0iV)
episode9
title 告白
成瀬さんの唇が優しく私のものと重なった。
触れるだけのキスだけどじんわり温かくて。
私を包み込んでくれるその腕をぎゅっと握りしめた。
「…成瀬さん。私、不倫はしません」
「…」
「タカのことも誠のこともちゃんと自分で解決します」
「はい。…待ってますから」
ふわりと笑う成瀬さんが愛おしくて、今度は私から口付けた。
「…私は家に帰りますね」
「うん。頑張って」
頑張って、私は大きく頷いた。
タクシーで家に帰ると、誠が真っ青な顔で私に駆け寄った。
そして、私の頬をぶった。
「痛い」
睨みつけると誠は眉尻を下げて、私を抱きしめた。
「…ごめん、全部話して?俺、織のこと助けるよ」
ずるい。誠はずるいよ。こういう時だけ優しくするの。
まるで本当に私を愛しているかのように接するの。
これまでだって何度騙されてきたかわからない。
私は誠を突き飛ばす。
「私を裏切ってきたくせに、今更良いフリしないでよ」
「…織、違うんだ」
「何が違うの?」
「…中入って、ちゃんと話そう?」
私は靴を脱いで家に入った。
誠が床に座ったから、私も床に座る。
「織、好きだ。…好きなんだ」
あまりに切なそうに口にするけど、私は騙されない。もう二度と騙されない。
誠は甘い言葉を囁いて、でも言葉と気持ちはいつも違った。
「…騙されない。私は…、本気で誠が好きだった」
「俺だって好きだよ!愛してる」
「…そう言われてどれだけ虚しくなるかわかる…?誠は私に子供以外を望んだ?私がお義父さんとお義母さんから悪口言われてる時、庇ってくれたことあった?
」
「…ごめん、でも、好きなんだ。信じてくれよ」
そう言って誠は項垂れた。信じたって報われたことなかったよ?
誠は私を愛してくれてる、って。ずっと、ずっと、信じて裏切られて。
挙げ句の果てには子供、子供、子供…。私だって子供は欲しい。
誠が欲しいのは次期社長。もし女の子が生まれたらあなたは愛すことができる?
怖いよ。愛されない子供なんて可哀想だよ。
「…今まで信じても、応えてくれたことあった?」
「…好きなんだよ。織…、織、ごめん」
あまりにも〝好き〟と口にするから、私の中の何かが音を立てて壊れた。
「好きだって…?こういう時だけ…。仮にそれが本当だとして私はどうやって信じればいいの?!」
「…」
ほらね、何も言えない。
今までの誠の態度は、ずっと長い間私を傷つけてきた。
誠が嫌いなわけないじゃない。
嫌いになれるならそうしたい。
だけど…、一度は愛したあなたをどうやって嫌えばいいの…?
「初恋、なんだ」
静かに呟いた誠の目には涙の膜がはっていた。
「…」
「織と会うまでも恋人は何人かいた。その誰にも恋愛感情を持っていなかった。親の決めた相手で、親に従って。…だけど、織は違う。初めて恋をした人で、始めて自分の意思で付き合った人なんだ」
私が初恋…?
「本当に私が好きなの…?」
頷く誠。
昔なら嬉しかった。
今は、申し訳ない。
だって私の気持ちはもう、誠には無い。
「ごめんなさい。誠を責めて。違うの…。私、理由を探してた。あなたと別れるための理由を」
私は成瀬さんが好きなの。
「…どうして別れたい?」
「他に…、好きな人ができた」
私は誠の顔を見ずに答えた。
きっと、誠は悲しい顔をしている。
「誰だ」
低く怒りのこもった声にはっ、と顔を上げる。
誠は悲しい顔なんてしていなかった。
怒りに満ちた顔をしていた。
「…言えない」
「答えろ」
だって、成瀬さんは誠の会社と契約しているグループで。
契約を切られたら…。
「…」
「はぁ…。織、誰と会ってたかなんて調べればすぐにわかるんだよ」
「…」
「織の口から聞きたい。…できれば、調べるなんてしたくないから」
私は大きく深呼吸して、自分の頬を両手でぱちん、と叩いた。
「Streamの成瀬さんです…」
私の言葉を聞き終わると同時に、誠は項垂れた。
そうだよね…。
聞きたくないよね。
それでも私は、成瀬さんしか見えないの。
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.29 )
- 日時: 2016/03/28 17:24
- 名前: 逢逶 (ID: siKnm0iV)
episode10
title 長い夜
「それがどういうことだかわかってるか…?」
「…はい」
「いや、わかってない」
「…」
「織、契約のこと気にしてるだろ…?」
うん。だって、こんなことになったら切られちゃうでしょ…?
「重要なのは契約じゃない。なぜなら、俺はStreamと契約を切る気はない。streamは重要な契約相手で、俺は会社の社長だ。感情には左右されない」
これが、社長の姿勢なんだ。
プライベートと仕事は別なんだね…。
でも、契約が重要じゃないなら何が重要なの…?
「一番重要なのは織だよ…?the SOUNDsと、Streamにとって織の動きで契約が決まる。社長である夫の契約相手、それも芸能人に好意を持つってことは、それなりの人間と大量の金が動く。…織次第で契約は切れるし、the SOUNDsも、Streamも簡単に無くなる」
息を飲んだ。
まさか、私がそんなに大きな影響をもたらすとは思わなかった。
仕方のないこと、そう割り切って前に進める人間ではない。
誠は考え込むように俯いている。
「誠…、ごめんなさい」
「織、そんな顔するな。俺だってわかってたんだ。織の気持ちは俺にはないってこと」
誠はそう言って、右目から涙を一滴こぼした。
何も言えなかった。
裏切ったのは私だから。
「織…?」
しばらくして、沈黙を破ったのは誠。
「はい」
「今まで苦労かけたよな」
「そんなこと…」
「いいよ。…でも、俺はお前を離さない」
突然、強くなった視線。
誠は私の腕を掴んで立ち上がらせた。
「え…?」
腕を引いて歩いて行く。
誠の表情はわからない。
寝室のドアを開けて、私をベッドに押し倒した。
「誠…?!」
「俺のことだけ見てろよ…。気持ちがないなら、無理やりにでも俺の方を振り向かせる…」
涙が自然と頬を伝った。
誠をこんな風にしてしまったのは私。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
長い夜がゆっくりと明けた。
涙と汗でぐしゃぐしゃに濡れた顔。
私に泣く資格なんてない。
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.30 )
- 日時: 2016/04/02 17:27
- 名前: 逢逶 (ID: siKnm0iV)
episode11
title 暗い部屋
どれくらい経ったのだろう。
確実に朝と夜を繰り返してはいるけれど、それが何回目かなんて覚えていない。
私は毎晩誠のものになる。
涙も枯れた。
割り切っていないと、辛くなる。
いつ部屋を出してもらえるのかな。
食事はいつも誠が持ってくる。
本当は食べなくてもいい。
このまま死んでしまっても。
だけど…、成瀬さんとの約束を果たしたい。
生きなければいけない。
ベッドに寝転がると眠気が襲ってきて目を閉じた。
「愛してるよ…、織」
タカ…?
やめて!近付かないで!
先もわからない暗い部屋の中で、タカが私の方に歩いてくる。
「愛してるよ」
肩に誰かの手が置かれ、振り返ると誠がいた。
誠の顔は笑っているんだけど笑っていない。
怖い。
私は二人から全力で逃げた。
遠くに誰かの影が見える。
助けて!
だけどその影はだんだん遠くなる。
「おいで、織」
誰かもわからないその影を必死に追いかける。
待って!
あれ…?今までしっかりと地面を蹴っていたのに感覚がなくなった。
どこを走っているのだろう?
後ろを振り向いても二人はいない。
前を見てもあの影はない。
ゆっくりと足を止める。
私はここで何をしているのだろう。
真っ暗な空間にふわふわ浮かぶ私の体。
「おいで。楽になっても良いんだよ」
その声に吸い込まれるように全ての力が抜けた。
- Re: T.A.B.O.O ~僕と君は永遠を誓えない~ ( No.31 )
- 日時: 2016/04/04 16:44
- 名前: 逢逶 (ID: siKnm0iV)
episode12
title
誠side
織を閉じ込めてもう二週間になる。
好きだから離せない。
成瀬を好きになったとしても今は俺のものだ。
帰宅し、すぐに寝室に向かった。
なんだか悪い予感がする。
寝室にはベッドで眠る織の姿があった。
なんだ、いつも通りじゃないか。
俺は織の頭を撫でる。
こんなに愛おしいのに手放せる訳ないだろう。
「織、起きろ」
織を揺する。
だけど、なかなか起きてくれない。
いつまでも起きない。
「織!」
どれだけ叫んでも。
織を車に乗せて、病院へ向かった。
どうして…?
お願いだから目を覚ましてくれ。
到着すると、織を抱えて中へ駆け込んだ。
「どうしました?!」
「目を覚まさないんだ…!」
看護師に案内され、医師のいる処置室へ入った。
「すぐにMRIを。旦那さんはここでお待ちください」
「はい…」
俺は祈るように待った。
織を失ったら…。
俺はきっと生きていけなくなる。
しばらくすると医師が戻ってきた。
「うーん…。異常は見受けられませんね。呼吸もしっかりしていますし。…眠り病というものがありまして。…奥様はこれまでもこういうことはありましたか?」
「無いです」
「そうですか…。一応精神科の医師にも連絡しておきます」
精神科…?
どういうことだよ…。
とぼけたふりしても、無駄だった。
心当たりがありすぎて。
もし精神病だったら…、
原因を作った俺が近くにいてはいけない。
だけど、離れたくない。
こんなこと知ったら、両親はすぐに離婚の準備を始めるだろう。
だから、言わない。
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